表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

第六節 発射

主人公達が乗ったロケットが、今まさに宇宙へと飛び立とうとしていた――。






『発射5秒前……スリー、ツー、ワン……』






「ボッ……ドゴゴゴゴゴゴ‼」






(ホントに宇宙へ行ってしまうなんて……どうしてこんなことに……)


頭を抱える主人公。






およそ30分前――、




(回想)


(皆、宇宙服に着替えて、準備ができたようだな……)


爆破が周りを見渡していた。




「トントン」




「!」


爆破の肩を叩く者が。振り返る爆破、するとその男は話し掛けてきた。


『日本の部隊の責任者さんか? 俺はhunter.N州支部のエース、名前はコードネームで呼んでくれ。fireって言うんだ、ヨロシク』


握手を求めてくるfire。


『……宜しく』


何か考えながらだが、握手に答える爆破。fireは話を続ける。


『俺は、N州はおろか、アメリカ全土の出動依頼に応えてゾムビー達と戦い、死体の山を築き上げてきた』


(何かと思えば、自慢話か……自尊心の高いヤツだな……)


『だから、今回も俺は活躍できると思うぜ? 何かあったら、俺に頼りな』


去って行くfire。


「…………」


何か考え事をしている爆破。少し不満そうだった。




「スマシさん!」




また誰かが爆破に話し掛けた。振り返る爆破。主人公だった。


「あのー、どうしてこうなったかは百歩譲って聞かないにしても、これから、どんな準備が必要かは聞きたいのですが……」


「だい!」


逃隠も横から出て来た。


「……そうだな」


口を開く爆破。


「ロケットが打ち上げられると、コックピット内ではエンジンや機体からの大きな音が響き、激しい振動が生じる」




「なるほど!」


「だい!」




主人公と逃隠は話に集中している様子だった。


「また、私達は瞬間的に1.6Gの重力で椅子に押し付けられる。これは旅客機の離陸時で感じる時の重力のおよそ5倍になる」




「ご、……5倍……⁉」


「だい……」




絶句する主人公と逃隠。


「まぁそれは防ぎようの無い事だ。だから、それに備えての心の準備が必要になる、といった感じかな?」


「わ、分かりました」


「だい……」


「それと、……そうだな、機体が安定するまでは危険だから、宇宙服とヘルメットはしっかりと着用する事だなそれと、ロケットの内部の構造について、基礎知識を少々頭に入れてもらう。まずは……」


(回想終了)




「ドゴゴゴゴゴゴ‼」


(大きな音がするって聞いたけどこんなにも大きいのか……。飛行機とは大違いだ)


爆音の中、主人公は考える。


そして――、


「グググググググ」


乗組員に重力が掛かり始めた。


「クッ」


「だ……だい……」


「うわっ」


爆破、逃隠、そして主人公達に重力が襲い掛かって来る。


「グググ」


「おっ押しつぶされそうだ……!」


弱音を吐く主人公。そこで、


「耐えろツトム。8分後には無重力状態になるからそれにも対応するように!」


爆破が主人公に声を掛ける。


(重力が数倍になった後に、無重力……そんな、殺生なぁー)


困惑する主人公。更に爆破は言う。


「皆、言い忘れていたが、重力は増え続けて、打ち上げられた時のおよそ2倍の、最大3.0Gになるからな……」






「ご――ん」






主人公を、衝撃が襲った。


(今更、そんな情報を……知ってれば気持ちの整理ができたのに……)


「だい……」


逃隠も堪えた様子だった。




数分後――、


「ググググググ」


「はぁ……はぁ……」




更に数分後――、


「ググググ」


「ゼェ……ゼェ……」




更に更に数分後――、


「グググ」


「……」


主人公は精魂尽きた様子だった。








そして――、


「ふわっ」


「⁉」


遂に機内は無重力状態になった。


「ホントに浮いてる……重力が、無い」


主人公は不思議な感覚に陥った。


「ハハ、普通の中学生が体験しえない事を体験しているんだぞ、ツトム。私は過去に1回だけ、副隊長とフライトした事があるから少しだけ馴れているがな」


爆破は笑顔で話していたが、主人公にとってはそれが恐ろしかった。


(英会話もできて、宇宙飛行士の経験もあるなんて……ホント何でもやる人だー‼)


「さて、打ち上げが無事成功した事だし、ミッドデッキに移動するぞ」




ミッドデッキとは、居間や寝室、トイレ、キッチン、倉庫などがあり、乗組員が睡眠や食事、運動などの日常生活を行う空間のことである!




「ふわー」


狩人の数名は浮かびながらミッドデッキを目指した。


「! スマシさん、これは?」


ミッドデッキに辿り着いてすぐに主人公は口を開いた。そこには幾つもの白いボックスがあったからだ。


「これは荷物搭載用ロッカーと言って、生活に必要なものが入っている。食料や飲料水等、様々なモノを収納しているのだ!」


爆破はさらりと答えた。


「た、隊長ォ……身体副隊長のお姿が見えないんだい……」


逃隠も爆破に問う。


「ああ、副隊長なら……」






「サケル、こっちだ」


爆破が答えようとした矢先に、真上から身体が声を発した。


「俺はフライトデッキに居る」




フライトデッキとは機体の操縦を行う場所である。地上との通信や地球観測もここで行われる。




「副隊長ォ! どうしてそこへ⁉」


逃隠が身体に問う。


「俺は機体の操縦をする」








「!」








「以前、フライトした経験や、操縦の演習を行ったことがあったからな」






「! ! ! !」






身体からの答えに驚愕する逃隠。そして身体に称賛の言葉を口にする。


「さっ流石でありまス! 副隊長‼」


(副隊長は副隊長でロケットの操縦もできるとは……狩人の隊長と副隊長……やっぱり弱点なし、か……)


二人のスペックの高さに言葉も出ない主人公だった。ひと段落して爆破が話を切り出す。


「さて、ツトム、サケル。そこにキャンバス地の輪っかがあるだろう?」


見渡す二人。輪に気付く。


「そこに足を入れると、体を安定させる事ができる」


爆破は近くにある輪に足を入れて見せた。


「二人もやってみろ」




「はい!」


「うス!」




主人公と逃隠は返事をした後に、足を輪に入れる。




「ホントだ。当たり前だけど、体が固定されて飛んで行く心配がない」


主人公は呟いた。すると爆破は口を開いた。


「何故体を固定したか、だが……」


「ゴクリ」


息を呑む主人公と逃隠。






「またまた、爆破スマシの、人生のイロハ教室、始まり始まりー」






ずっこけそうになる二人。


「腰が抜けましたよ‼」


「だい!」


カンカンな様子の二人。


「まぁまぁ、このままずっと時間が過ぎるのを待つよりは良いだろう? このままだと何もせずに4日間、只々待つだけになるぞ」


「それは……」


「……」


爆破になだめられる主人公と逃隠。


「人生全てが勉強だ!」




「!」


「⁉」




「こういう気概で始めようと思う」


どうやら爆破の人生のイロハ教室なるものが始まったらしい。


(今回も為になる話が聞けるかも知れない……!)


(この話、長いんだよナァー)


主人公と逃隠の意見は割れていた。


「これは、誰かが話していた事の受け売りだが、聞いてくれ。犯罪者は何故居るのか? それは悪の証明になるからだ。悪人、犯罪者が居ることを伝え、教えかけてきているのだ。物事には全てに意味がある。それが良いか悪いかは別として――な。ところで、死んでいい人間は居ると思うか?」




「‼」


「⁉」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ