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第十四節 喪失

主人公が居た場所で、水しぶきが上がった。


「ツトム‼ (まずい、直撃してしまった)」


主人公の身を案ずる身体。水しぶきが収まった。




「‼」




そこには無傷の主人公が居た。


「そうか! リジェクトを放っていたのか」


リジェクトにより、バーストは相殺され、水辺にその衝撃が加わっただけの様だった。


「副隊長!」


主人公が叫ぶ。


「頭に直接、スマシさんの声が聞こえるのですが!」


身体は首を横に振る。


「ツトム、お前にだけ聞こえる様だ。何と仰っているのか?」


「説明している暇は……」




「バースト」




主人公の言葉を遮る様に爆破がバーストを放ってくる。


「痛ツっ」


直撃は免れた。しかし、主人公の左脚がバーストによって爆破され、服はボロボロになり、火傷を負ったかたちとなった。左脚を押さえる主人公。すると、


『どうした? よそ見をして……私を止めるのではなかったのか?』


「! まただ! この声は……?」


動揺する主人公。


「『今度は本気で行くぞ……』……バースト」


「! リジェク……」


「ドッカァ‼‼‼」


それは今までで一番威力のあるバーストだった。リジェクトで相殺しようにも、7割ほどしか効果が無かった。主人公がかざしていた両手。その両手に付けていた手袋も爆発によって吹き飛ばされ、手の甲にある星だけが残った。


「あ……」


爆破と共に特訓していた日々が蘇る。




(回想)


「何だ、いいしるしがあるじゃないか、ここだ」


「?」


爆破は主人公の手袋の手の甲にある、星を指差した。


「ここに意識を集中させて、力を発動させるんだ。手を合わせてみろ」


(回想終了)




(あの時、一緒に……特訓してた時のマークが……)




「ギュッ」




どこかへ飛んで行きそうな星のマークを、主人公は握りしめた。


(スマシさん……本当に今までのスマシさんではなくなってしまったのですか……?)


冷静さを失いつつある主人公。そんな主人公にお構いなしに爆破は言葉を投げ掛けてくる。


『死にたいのかツトム、私はもう、人間ではない。私とお前とは敵同士だ』


苦悶の表情を浮かべる主人公。




『戦え』




(嫌だ)




『殺せ』




(できない)




刹那、爆破との会話が脳裏を過ぎった。




(回想)


主人公の両肩に手をやり、爆破は言う。


「ツトム、お前にだけは言っておきたい事があってな、月並みの言葉で済まないが、聞いてくれ。人は失敗や過ちを犯す生き物だ。しかも、何度でも、何回も。しかしその度に反省してまた前を向いて生きていけるんだ。だからこそ人間は正しくて清い、それだからこそ人生はおもしろい。私からの最後の……いや、最期の言葉だ。そして、私と戦ってく……ゾム」


(回想終了)




「バースト……」


「‼ はっ‼」


またしても終始、バーストとリジェクトの撃ち合いになる。主人公の脳裏には爆破との想い出が蘇る。




(回想)


「危なかったなぁ、少年。」


「ツカ……ツカ……ツカ」


何者かが足音を立てながら近づいてくる。


「しかしもう安心だ。私は爆破スマシ。政府公認部隊・狩人の隊長だ!」


(回想終了)




「くっ!」




(回想)


「少年、まだ名前を聞いていなかったな。名は何と言うのだ?」


問う爆破。答える主人公。


「ツトム。主人公ツトムです」


「うん、いい名前だ。ツトム、来てほしいところがあるんだ」


(回想終了)




「はぁぁあああああ‼」




(回想)


「ツトム、スポーツでも何でも、上達するときは反復して行っていく中、少しずつ上手くなるのではない。コツを掴んだとき急成長するものだ! 今の感覚を忘れるなよ」


(回想終了)




「くそぉっ‼」




(回想)


「…………」




「…………」


「…………」




爆破の、数分の沈黙が二人を襲う。暫くして爆破は口を開いた。


「……ダメだ、書き直し」




「NOOOOOOOOOOOO‼」




(回想終了)




「ハァ……ハァ……」




(回想)


「いや、ギリギリのところだった。無理をしたせいで、もうクタクタだ。ふわぁ――あ」


大きな欠伸をする爆破。顔を机に伏せる。


「……もっと……強くならないと、な…………すー……すー……」


寝始めてしまう爆破。


(……超能力を使うのって体力がいるからなぁ。スマシさんですら、疲れちゃうコトだってあるんだよな)


優しく見守る主人公。


「爆破隊長ー!」


「吞みましょオ――!」


抜刀と逃隠が元気に言う。


「しー」


主人公は、二人に向かって人差し指を立てる。


「ん?」


「ア……!」


二人は爆破の様子に気付く。


「寝てらぁ」


「隊長っテ、こうして見ると結構可愛いんだナ」


「店を出る時までは、寝かしておいてあげよう」


三人は暫く爆破の寝顔を見てから、かにを満喫した。


(回想終了)




「畜生! 畜生‼」




爆破との想い出を思い起こしながら、主人公は戦った。目には涙を浮かべて、その涙は今にも零れ落ちそうだった。




「! !」


「ドッカァ‼」




リジェクトが爆破の脚に当たった。よろめく爆破。


(! そうだ! 動きを鈍らす程度にリジェクトで攻撃して、隙を作ってからグングニルを放てば……!)




「ツトム! くれぐれも隊長のお体には‼」




「分かってます‼」


身体の言葉を遮って言う主人公。


「絶対に殺しはしない! 元のスマシさんに戻す為に……ごめんなさい、スマシさん」




「ジリ……」




間合いを取る主人公と爆破。






「! リジェクトォ‼」






主人公はリジェクトを爆破の脚に当てた。


「ドガッ‼」


足にダメージを負い、ふらつく爆破。




「バースト……」


「ボッ‼」




負けじと爆破も攻撃してくる。




「リジェクト‼」


「ドガアッ‼」




バーストとリジェクトは相殺した。


(次だ! 見たところ、バーストの命中精度は落ちている。恐らく両足にリジェクトを喰らっているから、足元が安定しないんだ。次にバーストを打ちこまれる前に、ケリを付ける‼)


主人公は両手を掲げた。そして、








「グングニル‼‼‼」








主人公の体は虹色に輝き始める。主人公の手のひらから光りの矢の様なモノが出始めた。そして、爆破スマシへと、その、光りの矢は進んでいった。






「!」






爆破の体は光り輝いていった。








(想いよ……届け……!)








「シュイィ――ン」


爆破の体は、みるみるうちに溶け出すかのように小さくなっていった。


「そっ、そんな⁉ スマシさん‼」


主人公は叫ぶ。




「……」




爆破は身体が消えゆく中で何か呟いた様に主人公には見て取れた。






「そんな! 待って‼」






取り乱す主人公。




「隊長ゥ――‼」


「隊長‼‼‼」




逃隠、身体も消えゆく爆破を目の当たりにして、口々に叫ぶ。








「シュイィ――ン」








しかし、爆破の身体は消滅していった。


「バシャッ‼」


海に体を投げ爆破に近付いていく主人公。






「スマシさん! ねぇ! スマシさん‼」






身体は事の結末を察知し、爆破から目を背けた。


「だい……」


逃隠もその現実を受け入れられずにいた。




「バシャッバシャッ‼」




出来る限り爆破に近付こうとする主人公。






「シュイィ――ン」






消滅し始めた爆破の身体は、人間の形をしておらず、ドロドロに溶けていった。そして、




「シュイン」




爆破スマシの身体は完全に消滅した。




「そんな……どうして……?」






第五章 殺戮の終焉 完



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