表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回避とサイコとツトム_第五章 殺戮の終焉  作者: 時田総司(いぶさん)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

第十一節 爆破の左脚

「バースト……‼」


「ボン‼」


「ゾゾォ‼」


ノーマルのゾムビー達を爆発させる爆破。その目に迷いは無い。一方で壁のゾムビーは残り1体のみとなっていた。


「(呼吸を落ち着かせて……今だ‼)グングニル‼」




「カッ‼‼‼」




「ゾォオ‼」


主人公は壁のゾムビーと充分な距離をとっていたため、安全に敵を倒すことができた。


(これで、残りは……)


「ツトム‼」


「!」


思いを巡らせる主人公を、咄嗟に呼ぶ爆破。


「アレを見ろ‼」


爆破が指差した方向には、撤退していくゾムビー達の姿があった。




そして――、


『面白イ』




「!」


「‼」


「⁉」




爆破や主人公達は、頭に直接呼びかけてくるような“音”を感じ取った。その音は、ロケットのコックピット等に居るパイロット達にも聞こえた。


『今回ハ、ココマデデ勘弁シテヤロウ。シカシ、我々ハ諦メンゾ。アノ石ヲ……。モウ7日、一週間後ニマタ戦力ヲ立テ直シテキサマラヲ襲ウ。セイゼイ余命ヲ楽シムンダナ。ハッハッハッハ』


“音”は徐々に消えていった。


「今のが聞こえたか? ツトム、副隊長?」


爆破は二人に問う。


「ハイっ! 聞こえました」


「こちら、コックピット内にも聞こえました、隊長」


主人公、身体はそれぞれ答える。口を開く爆破。


「そうか……。あちらは、今回は撤退する様子だったな……よし、今回、追撃はしない。切り上げよう。ツトムがグングニルを連撃して、体力を消費した様だからな。さて、地上に勝利報告でもしておいてくれ、副隊長」


「ラジャー」


身体は応答した。




「帰るか、地上に」




爆破はあっけらかんとしていた。


「正直に言うと、地上が恋しいです」


主人公が心中を吐露した。


「そうだよな! よし、さっさとロケットに戻り、地上へと帰還しよう‼」


爆破、主人公の二人は、それぞれバーストとリジェクトを放ち、移動していった。




外部ハッチを開く爆破。


「ガチャン」


「ひとまずこれでOKだな、ツトム」


「はい、お疲れ様です」


爆破の言葉に答える主人公。続けて外部ハッチを閉じ、内部ハッチを開く爆破。


「ガチャ……ガチャン」


更に口を開く爆破。


「1.5日ほど宇宙に居たか、感想はどうだ?」


答える主人公。


「ふわふわしてて、不思議な感じでした。あと、地面が無いのが不安ですかね……」


「はは、そうか。しかしそれもあと、一日と数時間で終わるぞ。良かったな、ツトム」


「は、はい……」


とりとめのない会話を交わす爆破と主人公。ロケット内部に入り、内部ハッチを閉じた。


コックピットへ移動する二人。主人公が口を開く。


「スマシさん!」


「何だ?」


「この後は何をすればいいのですか?」




「……そうだな」




暫く考え込む爆破。


「……寝て過ごすか?」




「ガクッ」




ずっこける主人公。


「ホンキですか?」


「ん、そうだが?」


爆破は至って平然としていた。


「……ホントに帰るだけなんですね」


「そうなるな」




「……」




しばらく二人は無言で、コックピットを目指した。






「ウィ――ン」


コックピットへ到着した。


「隊長、良くぞご無事で」


一番に口を開いたのは身体だった。


「ああ。そちらこそ、操縦、ご苦労だった」


返す爆破。


「ツトムぅー! 一時はどうなるかと思ったんだい!」


主人公に話し掛ける逃隠。


「はは、スマシさんが冷静だったから、難を逃れることができたよ」


笑顔で逃隠に答える主人公。


「副隊長、少し……」


「なんでしょうか?」


爆破から身体に話し掛ける。


「操縦の方だが、ここ二晩の間、夜を徹して行っている様だな?」


「はい……」


「私に代われ、睡眠時間を減らし過ぎだ」


「!」


爆破の言葉に、衝撃を受ける身体。


「そんな! 滅相もございません‼」




「いいから代われと――」


「グイ」


「言っているではないか」




操縦席から身体を押しのけて、爆破は言う。


「……分かりました。6時間程、睡眠を……」


「短い、8時間だ」


身体の言葉を遮る様に爆破は言った。


「は……はい。お気遣いありがとうございます。では……」


ミッドデッキに移動する身体。


(久しぶりに叱咤を受けた気がする……俺もまだまだだな)


身体は一人、そっと思った。主人公が爆破に話し掛ける。


「スマシさん! 申し訳ないのですが、僕たちも……」


「だい……」


逃隠も申し訳なさそうに佇んでいた。


「そうか、お前達も睡眠を取っていいぞ。育ち盛りだからな、しっかり寝て次の任務に備えるように!」




「はい!」


「だい!」




爆破の許しを得て、睡眠をとる準備をする主人公と逃隠。


「今日の戦い、勝てて良かったー。よいしょっと」


「流石の俺も、宇宙空間では戦えないんだい。よっこらせっと」


「よし、じゃあお休みー」


「だい」


二人は寝始めた。




一方の爆破――、


コックピットに居る。


(おかしい……事は上手く進んだのに、この胸騒ぎは……)


何か違和感を覚えている様だった。その爆破の左脚は、密かに紫色に変色していた。




8時間後――、


「ふぁああ、良く寝た」


主人公が目覚めた。


「よう。やっとカ、ツトム」


逃隠は既に目覚めて数分経った後の様だった。


「おはよう、サケルは朝が早いんだな」


身体も目を覚ました。


「ふ……副隊長ォオ‼」


逃隠が大いに反応した。


「まぁ、それだけなんだがな……」




「ぐはっ‼」




身体の素っ気ない言葉にダメージを負う逃隠。


「さて、行か……」


身体はコックピットへ向かった。


「僕らはストレッチでもしようか?」


「するんだい!」


主人公と逃隠は、朝のストレッチを行うようだった。身体はコックピットに着いた。


「隊長! 先程目覚めました‼ 操縦を交代致します!!!」


「おお、目覚めたか、副隊長。交代、頼んだ」


身体の言葉に、応じる爆破。


「いやぁそれにしても、この周辺の景色は変わり映えしないな。退屈で退屈で……まぁ、何も起きないに越したことは無いが……」


「心中、お察しします」


爆破の愚痴にも、恭しく対応する身体。


「ふぁああ、じゃあ私は寝るぞ。後は頼んだ」


「ハッ!」


爆破はミッドデッキに移動した。




ミッドデッキにて――、


「おお、皆も起きたんだな」


爆破が主人公と逃隠に声を掛ける。


「はい! スマシさん。ストレッチをしていました」


「もう起きているんだい!」


返す二人。


「そうか、じゃあ朝食を摂った後は筋力トレーニングだな。頑張れよ」


「はい!」


「だい!」


爆破は眠りについた。








――、


「バースト‼」


「グングニル‼」


「ゾムバァ――‼」


「ゾゾォ‼」


倒れ行くゾムビー達。


「やったなツトム、これで全てのゾムビーを倒すことができたな!」


「はい! 大変な道のりでした。でも、スマシさんとだからこの偉業を達成できました」


「おめでとうございます、隊長」


「やったんだい!」


「ありがとう、副隊長、サケル!」


嬉し涙を流す爆破……。






「パチパチ」


目蓋を開く。それは涙で濡れていた。


(夢……か……)


涙をぬぐう爆破。






「ズキン」






「うっ」


左脚がひどく痛んだ。左脚に触れる。すると、そこには見慣れたとある体液、ゾムビー達の体液が付着していた。


「! これが私の末路か……呆気ない人生だった……」








「ズキン」








「うっ」


痛みが徐々に増していく。


「しかし、」




拳を握りしめる。




「仕事は最後までやり遂げないと――、な」


爆破はコックピットに向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ