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かくしごと、してますね?

 カーン、カーン、カーン

 村の中心の教会から鐘が十一回鳴った。アンドリューは教会の一室で伸びをしながら隣を見た。


「どうした?」


 ずっと視線を向けられて気づいたのだろう少年は読んでいた本から顔を上げた。

 先程まで十数人の子供と教会の牧師がいたこの部屋には、今アンドリューとその友人、ケネスだけが残っていた。


「なんでもな……やっぱり嘘。ねぇねぇ、書庫ってギルバート先生に言ったら使っていいの?」

「良いですよ、使って」


 背後からいきなり答が返ってきた。二人は勢いよく振り返った。


「わぁっ!ギルバート先生!」

「ヒーリス先生ですよ」


 ギルバートはアンドリューの「Mr」の使い方を指摘した。

 アンドリューは勉強はできる方だが、変な癖は付くし直りにくい。この癖も、四歳の頃からで九年も経っているのになぜか()()()()()()()


「お前他の人に対しては正しい使い方なのにな」

「えへへ」


 アンドリューの反応を見てケネスはアンドリューの将来が心配になった。


「えへへ、じゃないですよ。なぜ私だけファーストネームなんですか」

「癖?ですね。ミスター、ヒーリス」


 よろしい、と言うようにギルバートは頷いた。だが、それでも明日にはギルバート先生に戻っているだろう。そんなことはよくあることでギルバート自身もほぼ諦めていた。それでもカタチだけは教えていようとしている。


「それで、使わないのですか?」

「あ!ほんとだ。ケネスも来る?っていつも来てるか」

「うん」


 そう言ってケネスは読んでいた本を持ち部屋を出ていった。


「待ってよケネス。――それでは、有難うございました。ギ……ヒーリス先生」


 アンドリューは言い直してケネスの後を追った。



 狭い部屋にぎっしりと並べられた本にアンドリューはあんぐりとした。ケネスは慣れたようにすいすいと進んで行き、ある棚の前で止まった。持っていた本を棚に戻す。


「あ、アンディだー。珍しいねぇ」


 本棚と本棚の間に一人の少女が座っていた。

 本が焼けないように太陽の光が直接届かない薄暗い空間なので気づかなかった。


「イザベラ!僕だって書庫に来ることくらいあるんだよ」

「ケネスならわかるけど」


 そう言ってイザベラは近くにある絵本を読み始めた。アンドリューは不貞腐れた。

 アンドリューは四歳から教会で読み書きと計算を習いに来ているが書庫を利用することは年に五回くらいだ。そんなアンドリューが書庫に来た理由は数時間前に出会った狼少年について知るためである。


 ただ――どこから調べたら良いのかわかんない!


「ケネス何から調べたら良いのかわかんない。どうしよう」

「俺だってお前が何を知りたいのか知らないよ」


 確かに、とアンドリューは納得した。

 アンドリューは、本を読み始めたイザベラの邪魔にならないように一つ一つの棚を見て回った。


「あ」


 棚の一番下にある本を手に取った。

 本の題名は「Fairy(妖精) and() Spirit(精霊の)Picture bo(図鑑)ok−Residents of the f(森の住人達)orest−」。妖精か精霊かはわからないがそれに関連するだろうと思ったのだろう。

 アンドリューは目次を開き関連しそうなページを探す。特になかったので一ページずつめくって探していく。


「変、身。人や動物や物が普通の姿から、他の姿に変わること」


 それは妖精の章の最初のページだった。解説には「変身」と小見出しがありアンドリューはそこの説明を読んだ。

 アンドリューはこう考えた。妖精や魔女、魔法使いは変身能力を持つものがいる。だから狼少年のアルフレッドも同じだろう。もしくは、魔女や魔法使いの魔法で狼少年になったのだろうか。


「アンディ、何読んでるの?妖精さん、と精霊さん?」

「うん。妖精と精霊図鑑」

「アンディ妖精さんと精霊さん好きなの?私ね六歳の頃まではそれっぽい子達と会って遊んでたんだよー」


 イザベラは読み終えた本を持ちアンドリューの方へきた。

 イザベラは基本ふわふわしているがアンドリューとケネスより一歳上だ。勉強も家事もできるしっかりものだ。


「妖精に会ったの?どんな感じだった?変身した?」

「結構前のことだからわかんないなぁ。アンディは会ったの?」

「え?」


 アルフレッドは狼少年であって妖精や精霊ではないとがそれに近い何かだと思う。ここでそれに近い何か、つまり狼少年に会ったと答えたらイザベラはきっと会いたいと言うだろう。ただ、アルフレッドが話すなと言っていたから話してはいけない。


「うーん、会ったことないなぁ」


 間が空いたが大丈夫だろう。


「僕畑のお手伝いがあるからもう帰るね、また明日。ばいばい」


 早口で言ってアンドリューは図鑑を棚に戻し書庫から出ていった。焦っているのか扉の溝に躓きそうになっていた。

 イザベラも絵本を棚に戻しケネスに近づいた。正面にいるケネスにじっと視線を向ける。


「ねぇねぇ。ねぇねぇ、ケネス。話し聞いてた?」

「あぁ」

「聞いてたんだ」

「聞こえたんだよ」


 ケネスは読んでいた本を床に置いた。


「アンディ怪しいと思わない?書庫に来ることは別にいいけど。あの反応、怪しい」

「だから何だ」


 チッチッチッ、とイザベラは勿体ぶらせた。ケネスの眉間に皺ができる。


「ビコウをしましょう!」


今回新しい子達がきました。後々活動報告の方で紹介します。

私のお気に入りはケネスくんです。

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