終わりの後に戻ってきた平穏な日
コンコンと王太子の執務室の扉を叩く音が聞こえる。
「どうぞー」
王太子が返事をすると
「失礼いたします」
と筆頭侍従が報告書を手に静かに部屋へ入ってくる。
早速受け取った報告書を見ながら筆頭侍従へ問う。
「処分は?」
王太子は顔を上げることなく報告書をペラペラと眺める。
「滞りなく毒杯をあおいでいただきました」
筆頭侍従の言葉に、表情を変えることもなく
「そっかぁ 苦しまないようにはしてあげたんだよね?」
と顔を上げる。
「はい。 眠るように逝かれたと聞いております」
「うん、苦痛なく逝かせてあげてくれたならそれでいいんだ。 彼女はとても僕の役に立ってくれたんだからね!」
ニコリと筆頭侍従相手に王太子は微笑む、それを見てさすがに苦笑いしながら王太子へ問いかけた。
「殿下はいつの時点からこの計画をたてていらしたのですか?」
キョトンと不思議そうな顔をしていた王太子は何かに思い至ったのか真顔で答えた
「あー…。 最初はね、あの女性が廊下で僕にぶつかってきた時かなぁ… 彼女後宮に入るって言ってたからね。 彼女の両親はとても素晴らしいよ!ちゃんと自分の娘を後宮に入れるために教育しようとしてたんだから。『いらない知恵をもった小賢しいものは後宮では排除される』ってキチンと教えようとしてたのに、あの女性はそれを後宮に入っても理解できなかったんだからしょうがないよね」
肩をすくめながら王太子は続ける。
「それでもね、その時点ではまだどっちでも良かったんだ。 あの女性が後宮の在り方に合わせられるなら変な問題起こさないだろうし、それはそれで良しって思ってたし。 逆に悪目立ちが過ぎるようなら割と邪魔な敵対してる高位貴族のアレが、無理やりねじ込んで後宮に送り込んできた令嬢の帰宅に協力してもらおうって思ったんだ! 」
フフフっと思いますように王太子は笑っていたが、ふいにその表情を曇らせる。
「でもあの女性のご両親には悪いことしちゃったな…彼女に対しての一切の干渉を禁じて、後宮に上がる時にあの最新の薬学の本持たせるようにお願いしたとき本気で泣いてたもの…たぶん彼女が後宮でどういう立場になるか気が付いてたんだろうね…最後まで両親に心配してもらえるなんてちょっぴりうらやましいな…」
そう言いながらうつむく王太子を見て、筆頭侍従はなんと声をかけていいものか悩み言いよどむ。
その様子を見た王太子は
「なんてね!びっくりした?」
とイタズラが成功した子供のように喜んだ。
「まったく…イタズラはよしてくださいませ」
と騙されたかと半ば飽きれ、半ば安心しつつ筆頭侍従は苦笑する。
それをみた王太子はニコニコと
「ゴメンゴメン! 僕の事を一番に考えて心配してくれる人が沢山いるってちゃんとわかってるよ。 ただ僕が一番心を砕かなくてはいけないのは、この国を守ることに対してだからなんにもお返しできないのがちょっとだけ心苦しいけどね…」
と肩をすくめて見せる、それに対し筆頭侍従は
「この王国の国民の1人として、いつも殿下には感謝申し上げております」
と深々と王太子に礼を取った。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。




