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彼女との出会い

・お読みいただきありがとうございます。 


短編の予定でしたが少し長くなったので区切りました。

「さて、今日はどこにいこうかなぁ」

 ポカポカした陽気の城の中を楽しそうに歩くのはこの国の王太子様。


 ニコニコと楽しそうに歩くその姿を、すれ違う城の者たちが微笑ましく陰でそっと見守っている。


 そんな中、王宮図書館へ向かう廊下の曲がり角から勢いよくぶつかってきた何か。



「きゃあっ!?」


「え? うわあああ」



 衝撃と同時にドサドサという音がして、大量の本が廊下に散らばる。

 どうやら持ち運んだ大量の本で前を塞がれ、王太子がみえなかったらしい。


 相手は眼鏡をかけた女性で、恰好から見て城勤めというわけでもなさそうだ。

 だが衝撃のせいか眼鏡のレンズがかなりひび割れてしまっている。

 イタタタ…と腰をさすりながら、ぶつかった勢いで尻もちもついてしまった王太子が相手に声をかける。



「ちょっと気を付けてよ! 危ないよ!」



「ご…ごめんなさい。本で前がみえなくて…」

 慌てたようにちらばった本を集めながら女性が謝る。


その様子を見ながら王太子は疑問を抱く。

「君、なんでそんな大量に本を持って歩こうとしてるのさ? 確かにこの城の図書館の閲覧スペースは少し離れてるけど、そこまで誰かに本を運んでもらえばいいんじゃないの?」


その疑問に、慌てたように女性が答える。

「わ…わたくしが本を読んでいるのを知られると、両親にあまり良い顔されないから誰かに頼みにくくて…」

しょんぼりと女性がうなだれる。



「ん? 普通本読んでるくらいでそんなこと言われないよね、変な本でもよんでいるの?」

 王太子は首をかしげる。


「まさか!? 今読んでるのはただの薬学の本ですっ!」

 慌てて女性は首を振っている。


「ふーん。 君、薬学がすきなの?」


「いえ、特にこれといって好きな分野はありません、幅広く色々な知識を勉強するのが趣味なんです」

とはにかみながら女性が答えた。


「へー! じゃあ君、博識なんだねぇ すごいや!」

 ニッコリと王太子は女性に笑いかける。


 褒められて、恥ずかしそうに俯きながら女性は顔を赤らめ


「そ…そんなことありません…。 実はもうすぐ後宮へ上がることが決まったのですが、そうなるともうこの王宮図書館へ出入りできなくなるのです。

なのでそれまでに、少しでも多くの知識を吸収したかったのですが、お父様やお母さまは『後宮に上がるのに余計な知識は必要ない。黙って淑女教育だけ受けていろ』と私が勉強することに反対していて、中々この王宮図書館へ来ることができなくて、やっと今日両親が出かけて行ったので巡ってきたチャンスに焦ってしまって、できる限り沢山読みたくてついこんな事に…」

 女性は寂しそうにポツリとこぼした。


「そうなんだぁ、もうすぐ後宮へ入っちゃうんじゃ仕方ないよね

 ……うん、分かった。 僕、君を応援することにしたよ!」

 王太子は満面の笑みで女性を見る。


「えっ?どういう意味ですか?」

 困惑しながら女性は聞き返す。



「大丈夫!君のご両親は僕がちゃんと説得してあげるから、心置きなくいくらでも本を読みなよ!」


「え? どういう…いえ、それよりも貴方は一体…」


「ふふ。 今はナイショ! そんなことより楽しみにしててね」

 そう言い残すと女性を1人とり残し、軽い足取りで王太子は執務室へと帰っていった。



 その場に放置された女性はポカンと口を開けたまましばらく茫然としていたが、やがてハッと気を取り直して散らばった本の回収を再開した。





 そして颯爽と執務室に戻った王太子様は、早速侍従を呼ぶのであった…。









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