第四話
「小田くーん、掃除しなきゃーだめよー?」
昇降口で、掃除をサボって下校しようとする小田を呼び止める。
うちの学校は掃除が終わったら自由下校なので、先生に気付かれなけりゃ問題無いんだけど。
同じ班だからさー。
「俺達、今週の掃除担当はココなんだよねー。と、いうわけで、はいコレ」
箒を手渡す。
小田は箒を受け取り、何をするでもなく、ただ突っ立っていた。
まぁ、今まで掃除をしていなかったんだから、ちょっとした進歩だよねー。
■ ■ ■
掃除が終わって皆帰ったのに、小田はぽつんと立ったまま。
「どーしたの?」
聞いたら、ずい、と箒を目の前に突き出された。
「これ、どこ?」
「ああ、掃除用具入れね。これこっち」
今年に入ってから、掃除用具入れの場所が変更になったんだよねー。
ちょっと陰に入ってて、見つけにくい。
「ここねー」
教えたら、ちゃんと箒を掛けてくれた。
「うんうん、やればできる子だねー」
「・・・殴られてぇのか、てめー」
「んー?褒めてるつもりなんだけどなー」
不機嫌な顔。
また、あの真っ赤な顔、見たいなー。
手を伸ばしたら、察知されて避けられた。
から、腕を掴んで引き寄せる。
やわらかい髪を撫でると、すぐに真っ赤になった。
「ねーねー、なんで赤くなるの?怒ってるんじゃないよね?怒ってるなら、いっつも真っ赤なはずだもんねー?あ、照れてるんだ?」
「・・・うるせー」
あー、やっぱり可愛い。
抱きついたら、思いっきり突き飛ばされて尻餅ついた。
「いててて」
小田が隣を走り去って行ったのが見えた。
あー、怒らせちゃった。
■ ■ ■
「はーい、ストーップ」
「!」
今日も昇降口で立ちふさぐ。
「駄目だよー、掃除してから帰ろうねー」
ココ掃除の時だけでも一緒に。
掃除を口実にするのは、俺の狡さ。