第三話
どーしよー。
明日のLHRは席替えです。
折角小田と近いのに、これじゃー離れちゃうー。
どうしようか考えて、そうだと思い立つ。
クラスの奴らにメール送って回してもらった。
人徳あると、良いねー。
■ ■ ■
「いやー、小田と隣になれて嬉しいなー。後ろの席だしー」
自分で裏で手を回しておきながら、しゃーしゃーと言える俺の口。
小田はうんざりした顔で、ずっと黙ってる。
「小田さー、背大きいよねー?いくらあるん?」
無視。
「俺より10センチは高いよねー?180?俺まだ成長期だからすぐ追いつくよー」
「・・・うるっせー」
わお、低音ボイス。
不機嫌真っ盛り。
小田は毒づいて、机に突っ伏してしまった。
まー、いいさ。
次の席替えまで時間あるもんね。
■ ■ ■
「かがやんさー、どうしたの?」
屋上で弁当を食いながら、吉田が尋ねる。
毎週火曜は、俺と吉田、松本、林田の4人で昼食を取るようになっていた。
「どうしたの、って何がー?」
「小田にめっちゃ話しかけてんじゃん?」
「そーそー。小田、かなり不機嫌なのになあ」
「小田って、あの小田?」
一人だけ別のクラスの林田が確認する。
「そう。あの小田」
「かがやんさー、皆に根回しして、態々隣の席になったんだぜ」
「へぇ。加賀って結構皆に好かれるのに、やっぱり小田には好かれないか」
「てか、加賀がウザいんだよ。しつっこいのなんのって」
「え、うそー。俺ウザかった?」
「ウザい」
二人に断定されて、ちょっとショック。
そっかー、ウザかったかー。
だってさー、小田と会話したいから。
「どうしてそんなに会話したいわけ?」
「それはーーー・・・」
林田の問いに答えかけて、止まる。
「それは?」
「ん、なんでもない。なんとなく」
んだよー、とか言われる。
でも言えない。
小田の真っ赤な顔が可愛かった、なんて。