7.Breakfast theory
香ばしい匂いがするベーコン。黄金色に輝く卵焼き。大地の生気を感じさせるパン。そして、パールを思い出させるかのような牛乳。
そんな献立を想像してダイニングルームに向かってきた僕は衝撃を受ける。
僕の目の前には、鮭の塩焼き。納豆。ご飯。漬物。味噌汁。
「わ、わ、わ、和食!?」
僕は倒れそうになった。
だってそうだろ? 朝から和食だぜ?
「何をそんなに驚いてるんです?」
妹は僕の顔を怪訝そうな顔で見る。
だから僕は答えてやる。
「いやいやいや。驚くも何もないよ」
「なんだ、良かった。何もないんですか。なら良かっ「んな訳あるかい! 大有りだよ!」
僕の人差し指はビシッと純和食を指した。
「朝から和食って何故? 僕に対しての虐めか? それとも新たな拷問か?」
「違います! 違います!」
「じゃあ何だってんだよ!」
「……蹂躙?」
僕はズサァと昭和風のリアクションをとってしまった……
な、なんで蹂躙なんだ?
というか、何故妹は微笑んでるんだ?
「ほら兄さん。早く食べましょう」
僕のことなど目に入ってないかのように、妹は席に着く。
「…………」
「どうしたんです? ご飯が冷めてしまいますよ?」
「…………ない」
「え? すいません。よく聞こえないです」
「食べたくなぁあぁぁああぁい!」
そうさ、食べれるもんか。朝から和食? ざけんなよ!
僕は、僕は! 僕は洋食を愛しているんだよ!
だから浮気なんてできるか! 安心しな洋食さん。君には僕がいるんだから。
意を決した僕は妹にキッと睨みつける。
すると、
「す、す、す、すいません! そうでした。兄さんは和食嫌いなんですよね。本当にすいません!」
「え……」
あっさり謝られた僕は言葉に詰まる。
「兄さん、今から作り直してきます」
「え? え?」
「少し時間かかりますけど、待っててください」
妹は僕の朝食を作りにキッチンに行った。
「なんてことだ……僕はなんて最悪な兄貴なんだ……」
朝食を作らせておいて……なんて仕打ちを……
ごめんよ、我が妹。でも、和食だけは……和食だけは駄目なんだよ!
だから、この償いは朝食を食べた後受けようじゃないか。
時間経つこと20分…………
「遅いなぁ……学校に間に合わなくなるぞ……」
僕はあれから椅子に座って新聞を読んでいた。
スポーツ欄を熟読しているのだが、キッチンから妹が出てくる気配がまったく感じられない。
「…………」
どうしたんだろう? パンを焼いたりするのはそんなに時間がかかるもんなのか?
朝食を再度作らせておいてなんだが、遅すぎる。
遅すぎて、少し心配になってきた……
心配するようなことじゃないはずなのにな……
「…………」
僕が作らせてるわけだし、進行具合を見に行っても差し支えないだろ……
「別に過保護とか、そういうんじゃないからな……様子を見に行くだけなんだから」
……ツンデレかよ、僕は……まぁいいや。
僕は、自らを正当化して席を立つ。
「おーい。そろそろでき……た、?」
あれ?
いない……いないぞ? 何で?
あれ?
「どこにいるんだ?」
僕はキッチンにいるはずの妹を探そうとしてキョロキョロと目を舞わす。
しかし、見当たらない。
どうやらキッチンにはいないようだった。
ここで僕は妹が二階にいるんだろうと読んで、階段を上ろうとした……その時、僕の視界に白い紙が入った。
僕の脳から発せられた電気信号が脊髄を駆け巡る。戦慄というやつだろうか……
僕は急いで駆け寄る……
場所は玄関。
僕は嫌な予感がした……
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