6.Cold morning
皆が皆簡単に、何が起こるか分からないと言うけれど、現実は小説より奇なりと言うけれど、そんなの誰だって……いや、少なくとも僕は信じなかった。ただそれだけだった。
本当にそれだけだったんだ。
「広人! 起きなさい! 学校に遅れるわよ!」
甲高い母親の声が響く。二児の親とは考えられない声だ。
それにしても、だ。
そう、それにしても、なのだ。
正直、母が甲高い声でも、ガラガラなオッサンみたいな声でも、なんでもいい。
ただ僕は不満だった。
もう起きなきゃいけないのかよ……という事に。
僕の中では一瞬しか寝てない気がするんだけどな……まったく。人間は便利なのか不便なのか分かりやしない……
そんな不満を頭の中で言っていると、僕の頭はなんと、『二度寝』という悪魔じみた考えが湧かしてきやがった。
ふん、なかなかやるじゃないか、僕の頭め。と思った。思ったが、思ったのは刹那だった。
なぜなら、悪魔の『二度寝』が誰に対して悪魔かと言えば、勿論僕に対してなのだから……
「はい。今、下に行きます」そう母親に返事をした僕は、急いで制服に着替え始めた。そんなに急ぐ必要はないのだけど、どうも寒いと急ぎたくなるのだ。
クローゼットを開けて、まずはワイシャツを取り出す。そして僕は今着ている寝巻きを脱いだ。
まさにその時だった。いきなりドアが開く。現れた人物は我が妹だった……のだが、
「兄さん、おは……」
「…………」
バタン!
「…………」
僕の着替えてる姿をみて赤面し、急いでドアを閉めたのだった。
家族なのだから、あんなに照れなくてもいいのに、などと思っていると、
「すいません! すいません! すいません!」
妹はドア越しにすいません、をお経のごとく読み上げ始めた。
「ち、ちょっとちょっと! そ、そんなに謝らなくていいって」
「すいません! すいません! すいません! すいません!」
「いや、だから「すいません! すいません! すいません! すいません! すいません!」
「ねえ、だか「すいません! すいません! すいません! すいません! すいません! 吸いません!」
「…………」
どんだけパニクるんだよ……この娘は。
しかもそれだけならまだしも、最後のすいませんの変換が違ってて、なんかいやらしいし……
ん? 考えすぎ?
そんな意見は聞こえません。
しょうがない、と僕は決心すると、ゴホンッと咳払いをし、
「僕の話を聞けええええええええ!」
と、怒鳴り声をあげた。
すると、妹はまるで僕と呼応するかのように、へ?と素っ頓狂な声をあげた。
そして、パニクり世界から無事に脱した妹が発した第二声は
「マクロス?」
「…………」
アニメに詳しい妹だった……
いかがでしたか?
物語の進行の方もあり、わかりにくく感じるかと思いますが、どうぞ最後まで読んでやってください。
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