9.Dream
僕が通ってる高校は最寄駅から二駅離れたところにある、いたって普通の公立高校で、鱧橋高校というところだった。
特に、何という物もない。なぜなら、繰り返すことになるけど、普通の高校だからだ。単純明快。ただそれだけ。
クラスに入ると当然ながらHRは始まっていたわけで、
担任は僕の姿を見つけたのか、「遅いぞ! 遅刻の理由はなんだ?」といらない探りを入れてくる。
僕は不良じゃないから、答えるしかない。シカトする勇気もないからね。
「家族の帰りを待ってました」
……嘘じゃない。
僕がそう言うと、先生は何を思ったのか知らないが、すんなりと席に着かせてくれた。普段は無駄な説教や嫌味をネチネチ言われるのだけど。
どうやら、HRは終盤だったようで(当然か……)、僕は先生の話をあまり聞かなくてすんだ。
HRが終わると直ぐに、
「随分とたいそうな言い訳をかましてたな」
「あぁ、まったくだよ」
友人の藤屋と鈴木は僕に話しかけて、勝手に笑ったきた。身勝手な奴等め。
「うるさいなぁ」
僕はそう言いながらも、こいつ等が好きだった。
騒がしい事も多いけど、それも僕の性格を察してくれてるが故の行動という事を僕は知っていた。
「いや、嘘じゃないんだぜ? まぎれもなく本当だよ」
「信じらんねぇよな、鈴木」
「あぁ、信じらんない。つか、信じられる方がどうかしてるだろ」
まぁそれもそうか、と思った僕は、別に隠す必要は全くと言ってないので、僕と妹の珍行動を二人に言葉という媒介を通して晒したのだった。
僕は面白おかしく言ったつもりだったのだが、
「なぁんだ、お前ん家の親が離婚したわけじゃねぇのか」
「少し期待はずれだな」
と寂しい反応をしてくれたお陰で僕の芸人を目指そうかな、という考えはここで断ち切られた。
まったく、夢がどんどんなくなっていく気がするな。
まぁ芸人になるという夢が僕の全体の夢のなかでどれほど重要か? と聞かれたら、夢の中で芸人になりたいという夢は占めていた率は1%を下るだろう。と答える。
だが、夢は夢。一応僕の夢に含まれていた。
そりゃ、夢なんて物は人に扱えるような代物じゃない事はわかってる。けど、どうしても持ってしまうし、持たされてしまう物だ。
人が夢を持つから儚くなる。そんなことになるなら、持たないほうがマシ。
そんな言葉をよく聞く。
だけど、きっとそう思えるのは、夢を持った人の夢が潰えたときのみのはず。だから勿論、僕は知らない。心の奥底では、なんだかんだで叶う物という位置づけになっていることだろう。
ただ、人はそれすら確証を知りえる事は無いのだけれど。
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