第四章 毒の水がどうした
なにも言いません。
僕はmm病院に行った。
受付で手続きをとった。
待合室は意外と人が多かった。ストレス社会なのだなあ、と思った。
カジュアルな上着にジーパン姿の若い女性職員が来て僕の予診を取った。
病院に来た理由。経済的事情。職業。経歴。きのう有ったこと。毒の水のこと・・・。
四十分ぐらいたって僕の番号が呼ばれた。この病院では患者のプライバシーに配慮して患者を番号で呼ぶのだ。
僕は言われたとおり、2番診察室に入った。
僕の主治医は太り気味で、白髪で眼鏡で神経質そうな眼をした初老の男だった。
僕は「お願いします」と言った。そういうしかないだろう。
「ふむ・・・」医師はパソコンの画面を見ながら言った「君はよそから越して来たのかね」
「はい・・・」
「昨夜大変なめに遭ったのだね・・・」
「はい。しかし僕には事実とは思えないのです。三つ子の自警団なんて。それに暴力や強奪をおこなうなんてありえませんよ」
医師はイスを四分の一回転させて僕の顔を見た。
「私はそれよりも君が無職で生活保護を受けていることが気になるのだが」
僕は答えた「体調が悪くて働けないのです。もちろん体調が治ったら働く意志はあります」
医師の眼つきがけわしくなった。
「別に無理しなくてもいいよ」
「はい・・・」
「ところで、君は何が原因で体調が悪いのだね?なにが原因だと思う?」
「毒の水のせいです」
医師は射るような眼をして僕に言った。
「毒の水とは何かね?私はすごく気になる」
「津波が来て、原子力発電所が壊れて毒の水が襲ってきたのです。それで、僕も僕の家族も毒の水を浴びたのです。僕の家族はそのために死にました。僕だけ助かりました。」
「それでここに越して来たのだね」
「そうです」
医師はなぜか憎しみの表情で僕に言う。
「体調不良とはどんな症状だね?!」
「すぐに疲れてしまうのです。それにときどき鼻血が出ます。毒の水のせいです」
医師は僕を指さして叫んだ。
「妄想!」
そして診察室の天井に指をむけた。
「入院!」
どうやら僕は言ってはいけないことを言ってしまったようだ。
こうして僕はmm病院の二階の閉鎖病棟に入院させられた。
ここで僕はながいながい夢を視るのだ
(未完)
作者より。
本当はこのお話はまだまだ続ける予定でしたが、諸方面に配慮して、ここでやめます。
ご了承ください。
読んでくださってありがとうございました。




