第二章 わんぱく自警団
長い話になりそうです。
長い目で見てください。
三人の自警団員、トン吉チン平カン太は僕の住むアパートの部屋の前までついてきた。
「ここです」と僕はそういった。
「ふむ、なら鍵を開けろ」
「なぜですか」
「部屋の鍵を見ないと確認できん」
「検査もあるしな」
僕は何の検査だろうと思いながら、ポケットから鍵をだし、その鍵でドアを開けた。
「これでいいでしょう!」
と僕はいった。
「検査がまだだ」
「検査が待っている」
「さあ。検査検査!」
三人は僕の部屋に土足で勝手にあがりこんだ。
「や、やめてください。あなたたちはなんの権利があってひとの部屋に勝手に入るのですか!?」
「俺たちは町内会の人間だ、権利はある」
「アパート人は身分が低いんだ」
「身分の低い者は、高い身分の者に逆らうことはできないのだ」
そんな法律でもあるのか?ここは日本だ。しかも戦後七十年以上たった平成だ。なのになんでこんなことがあるのだ?
僕のそんな気持ちとはうらはらに彼らは僕の部屋の『検査』を始めた。
「なんだこのぼろっちい液晶テレビは。アナログ時代のものだな。こんなものと、ブルーレイレコーダーを繋げてレコーダーを地デジのチューナーとして使っているのか。地デジのテレビなんていま安いのに。こいつ貧乏人だ。おまけに撮っているのは、『妖怪ワッチ』に『名探偵ユナソ』、いつ終わるか分からない番組を延々撮り溜めしてるのか、この間抜け」
「お、ノートパソコンがあるのか…履歴は…なんだよエロサイトばっかりだ、しかもほとんど二次元て変態だな、なに?素人のネット小説投稿サイト『小説でヌこう』くだらん!」
「タブレット端末だけはいいもの持ってるな」
三人は次々と持ち物を『検査する』
トン吉が言う。
「じゃ、このような非道徳的なものは没収する」
「待ってください」僕は言った「人の物を勝手に持っていくんですか!?それではどろぼうですよ。ドロボー!」
「失礼なことを言うなーっ」チン平が僕の顔面を強打した「これは町内会としてアタリマエの権力行使だ!」
「身分の低いものは身分の高いもののいいなりになっていればいいんだ」カン太が言う「これがこの町内会のアタリマエの原則だ」
トン吉が言う「文句も抵抗もできないように痛めつけておこう」
「おう」
「おう」
僕はそれから二時間にわたって執拗な暴力を受けた。
半殺しの目にあった。
トン吉がいった「どうだわかったか弱いものは収奪と暴力にあうのは避けられないのだ。このばか」
「あほ」チン平。
「だら」カン太。
三人はまたくだらない替え歌を歌いながら部屋を出て行った。
「ぼーくたちわんぱく町内会ー
略奪暴力やり放題ー
こーわいものなどあーるもんかー」
僕は彼らが出て行ったあと、内鍵を閉めた。
そして布団に入りなかで丸くなって泣いた。
これは悪い夢だ。きっと夢の中のできごとだ。明日になればきっともとにもどっている。
僕は泣きながら眠った。
つづきます。