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空を血の色で染めてやる  作者: いわせみつか
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第一章 不審者はいかにして造られるか

 連載のつもりですが、どこまで持つか。

 作者は自信ないです。


 春宵一刻値千金なり。

 僕の住む地方は三月になっても、肌寒いのだ。しかし四月のはじめ頃になると夜になっても暖かい。

 こうなるとつい嬉しくなって夜に散歩したくなる。

 これがいけなかった。

 僕はアパートから外に出た。この辺は昔からある町であって表通りは商店がたちならび、裏通りはアパートが林立している。

 表のほうに出てから、しまった、と思った。実はこの町一帯は、最近連続放火事件が起こっているのだ。

 すぐに家人たちが気づいてすぐに消火したり早く通報しているのでボヤ程度で済んでいるのだが、まだ犯人は捕まっていないのだ。春の陽気でついうかれて外に出たのだが、下手をすると犯人と思われてしまうかもしれない。

 僕はそのことを意識してしまい、ついきょどうきょどうしてしまった。

 いきなり僕の顔に強い光が当たった。

 大型の懐中電灯の光を浴びたのだ。光のむこうには、三人の人影が見えた。

 三人は三人とも青い野球帽をかぶり、黒い厚手のジャンパーを着ていた。

 「あやしいやつだな」

 「あまりみかけんぞ」

 「おいなにをしている」

 三人は次々にそういった。

 僕は三人を目を凝らして見た。三人は三人とも、同じ顔をしていて、ほぼ同じ背格好をしていた。着衣もほとんど同じだった。三人とも三〇代なかばぐらいで、みな小太りだ。

 「なんだその眼は、俺たちを珍しそうに見やがって」

 「俺たちは三つ子なんだ」

 「俺たちは三つ子の自警団だ」

 「自警団ですか三つ子の」と僕は言ってしまった。

 「そうだ三つ子のな。俺はトン吉」

 「チン平」

 「カン太だ」

 「ぼ、僕になんの御用ですか…」

 「知ってるだろうこの辺で放火魔がうろついていることを」

 「だから俺たちが夜回りして警戒しているんだ」

 「おまえどこのもんだ」

 「近所のアパートに住んでます」

 「なんだ~あ?アパートだとぉ~!?」

 「アパート人か」

 「まともなやつではないな。アパート人!」

 僕は三人の言ってることが理解できなかった。

 「アパート人って何ですか」

 「どこの誰だかわからん他所もんだということだ」

 「この町の正式な住民は町内会員とその家族だ」

 「よその町内は知らんが、この町ではそうなっている。アパートの住人なんて信用できんよ」

 「よし!」とトン吉が言った「検査しよう」

 「身元の確認のためにおまえの住んでるアパートまで案内しろ」とチン平。

 「素直にしろ」カン太が言う「お前の身の安全のためだ」

 なんでこんな目にあうんだろうか。僕はただ夜に外に散歩に出ただけなのに…。

 僕は三人の先導になり、アパート『やまゆり荘』まで彼らを連れて行くことになった。

 三人はくだらない替え歌を歌いながら僕のあとを歩く。

 「ぼーくたち三つ子の自警団

  意地悪するのが大好きだ

  不審者なんていーじめーちゃーえー」

 

 続きます。


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