王子を助けるのは私の役目だと思って居たが……
乗りで書いたので色々粗いです。
ウォルシナ5歳
「パナシェ王子がっ!パナシェ王子がスライムに捕まりましたっ!!」
「な、なんですって!?直ぐに助けに参りませんと!」
ウォルシナ8歳
「パナシェ王子がっ!パナシェ王子がキングベアーに捕まりましたっ!!」
「な、なんですって!?直ぐに助けに参りませんと!」
ウォルシナ10歳
「パナシェ王子がっ!パナシェ王子がオーガに捕まりましたっ!!」
「な、なんですって!?直ぐに助けに参りませんと!」
ウォルシナ13歳
「パナシェ王子がっ!パナシェ王子がドラゴンに捕まりましたっ!!」
「な、なんですって!?直ぐに助けに参りませんと!」
そして現在、ウォルシナ16歳
「パナシェ王子がっ!パナシェ王子が魔王に捕まりましたっ!!」
「……………へぇ…………そいつぁ大変ですねぇ」
「なっ?いかがなされたのですウォルシナ嬢!?」
「ん?なーにーがぁー?」
「いえ、いつもならば即座に王子をお救いに行かれますのに…………」
「ああ………いーのいーの。もうどうだっていーの」
「ど、どうされたのですかっ!?いつものウォルシナ様に戻って下さいませっ!」
「はぁーーーーい。無理でーーーーす」
だって…………甦っちゃったんですよ。前世の記憶ってやつが。
私は前世では一般人だった上に、モンスターとか居ない平和な世界だったし、なんと言ってもこの世界が私の世界にあった【七色のプリズム】っていう乙女ゲームの世界なんだもん。
そんでもって私の婚約者であるパナシェ王子は、そのゲームのメインヒーローな訳。
で、もちろん私はヒロインでは無い。
理解したでしょ?私が頑張って助けてやっても、結局はどこぞの頭の弱いアバズレ女と結婚すんだよパナシェの野郎は。
そんな薄情な奴を私が命懸けで助けてなんになるのさ?なんも無くね?せいぜい有り難うって言われてはい、終わり!ですよ。
まぁ記憶が甦る前までは、自分の婚約者だから毎回頑張って助けてたけど、そうじゃなくなるってわかったらもうどうでも良いっす!やる気無くなった。
私はポリポリとお菓子を食べながら豪奢な椅子に、だらしなく寝っ転がった。
「ウォ、ウォルシナ様っ!?ドレスの中が丸見えですっ!」
「気にするな」
「気にしますよっ!?って!違う違う!そうじゃないんです!このままですと最悪王子は魔王に何をされるか……………」
「大丈夫だってー。魔王は可愛い男の子が好きなんだよー。手込めにされる以外は問題ないよー。王子の後方の初めては喪われるかもだけど、命までは喪わないからー」
「それでは安心ですね……………って、そんな訳が御座いませんよ!?」
「気にするな」
「気にしますよっ!?」
うるさい奴ですね。王子の事はほっといても大丈夫ですよ。王子は16歳の時に出会うんだよ、あのアバズレビッチの主人公ミサキ(デフォルト名)と。んで、ミサキに助けてもらってパナシェは一目惚れすんの。
で、それまで婚約者だった私は、お役御免で婚約破棄されんだよ。
「………っていうかさ、そもそもおかしくない?捕まったりするのは女の役目でしょう?何で毎回男のパナシェが囚われるの?趣味なの?」
「それは王子の魔力が強大過ぎて、それをモンスターに狙われてしまうという悲しき宿命が………」
「だからーそもそもそこが変だって言ってるの!強大な魔力があるなら自分で何とかせいっちゅーんじゃ!何で私が助けなきゃならないのよ?そこら辺兵士で事足りるやろ?それに私だって侯爵令嬢なんですけど?」
「な、何を今さらおっしゃっていらっしゃるのですか?パナシェ王子は攻撃魔法を使えませんし、貴女は王城の兵士よりもお強いでしょう?」
「うわ、パナシェと兵士使えねぇ…………」
「……………ウォルシナ様、本当にどうされたのですか?一体貴女様に何があったというのですか?」
「ふっ…………現実を思い知ったのだよ」
毎回毎回私を呼びに来るこの兵士とはもう顔馴染みだ。しかし今回が始めてでは無いだろうか、こんなに無駄話をしたのは。
「王子を助けて下さい」「お断りだ」と兵士と言い争って居ると、侯爵家の大きな窓ガラス越しに見える王城内から突然七色の光が瞬き始めた。
あー。来ちゃった。これ、確実にあのビッチが召喚された合図だわー。
不味い……大体今までの流れから、まだパナシェを拐った相手って城に居るんだよな。
早よ根城にパナシェを連れ帰ってしまえば良いのに、なぜかこっちが助けに来るのを待ってる節さえあんだよなー。モンスターも暇なのかね?それともそおいう設定かね?
「うわぁ………な、なんですか?あの光は?」
「ふっ………ありゃあ終幕の光だよ」
「しゅ、終幕の光ですか!?」
「ああそうだ。王子に何かあったのかもな。確認しに戻った方が良いのではないか?」
「そ、それもそうですね。光の正体が判明したらお知らせに参ります!」
そう言うと兵士は急ぎ足で出ていった。
そう、あれは私の人生の終幕の光だ。
あの光の中から現れたミサキが、パナシェを助けて2人は恋に落ちるってベタな設定だったと思う。
で、こっちはどこから仕入れたか定かじゃない情報を元に、王子を助けて一躍時の人となったミサキに、私の父上であるカーウィッツ侯爵も失脚させられんだよ。
ミサキの奴は婚約破棄だけでは飽きたらず、私の父上も罠に嵌めて陥れるんだよ。性悪だね。
今の内に婚約破棄の証書を作っておき、なおかつ私の方のサインは書いて置いとこ。後はパナシェがサインして受理されればオーケーだ。
これならば私が居なくても婚約破棄は成立するでしょ。
後は早急にトンズラするのみだ。
幸い私はドラゴンも屠る事が可能なのだから、他国でハンターとして生きて行けると思うんだ。
そうと決まれば実行するのみ。
父上と母上は………言ってもどうせ信じてはくれんだろうから、置いて行こう。
兄上は攻略キャラだし、あのビッチに父上を失脚されても変わらず骨抜きのままだからほっとこう。
使用人たちはしっかりしてるから、直ぐに新しい働き口が見付かるでしょ。
そして使用人に丈夫な革製の鞄と、旅人用のリュックを買って来てもらうと、早速トンズラの準備に取り掛かった。
革製の鞄に金目の物をぎっしり詰め込み、旅人用のリュックには服やコップ、歯ブラシなどの日用品を可能な限り収納した。
実行は婚約破棄の証書が出来上がる4日後だ。
4日ならばまだ一目惚れの余韻でパナシェは、ボケーっとしているはずだ。
今回私が助けに行かなかった事は、どうとでも誤魔化せる………いや、誤魔化してみせる。
***
《4日後》
はあっ。案の定パナシェの奴は光から出てきたミサキに一目惚れしたらしく、私が話し掛けてもボンヤリ宙を見詰めたまま、時々思いだし笑いをしてやがった。それが心底キモかった………。
だがこの分なら私が向かわなかった事については言及されなそうでひと安心だ。
婚約破棄の証書も、つい先ほど仕上がった。後はここに私のサインを書けば出来上がりだ。
羽ペンを持ちさっそく書こうとした正にその時、部屋の扉が唐突に開かれた。
瞬時に机の中に証書を仕舞う。それは思春期男子がちょっとエッチな本を隠す行動に酷似していたと、明記して置こう。
「ウォルシナ様っ!分かりましたよ!あの光の正体がっ!終幕の光じゃ無かったです!」
扉をノックもせずに開いたのはあの兵士であった。
「何しに来た?」
「あっ?ええっと……。光の正体が判明しましたので、ご報告に参りました!」
あー………確かに去り際にそんな事を言っていた様な……………。
「ではご報告致します。あの光は悪い物ではありませんでした。何と伝説の【虹の聖女】様の召喚に成功されたのです!」
ああー………やっぱりな。確定しちゃったな、こりぁ。
「そしてその聖女様は捕らわれた王子を見事お救いになられたのです!」
「そうですかー。良かったですねー」
「王子はいたく感動されておりまして、
聖女様の後を付いて回るようになりました」
うわっ………うぜぇ。
「聖女様も満更では無いご様子………このままですと、ウォルシナ様のお立場的には不味くなるのでは無いでしょうか?」
ははっ……この兵士、一丁前に私の心配とかしてんのか。
去り際に少しだけ嬉かったよ。だがこいつのお陰で決まった。即座にトンズラせねばならんことが。
「兵士よ。貴重な情報ありがとな!達者で暮らせよ?」
「はっ?へっ?」
「報告は終わりでしょ?じゃあ城に戻らなければ駄目!」
私はそう言うと兵士を部屋から閉め出して、婚約破棄の証書にサインを書きなぐった。
これで長かった王子の重りから解放されると思うと、両肩が軽くなった気がするよ。
私はそのまま1回も振り返らずに、隣国のメイシェンへと逃走したのであった。
***
数年後
メイシェン王国に凄腕の女ハンターが誕生する。
その名はシーナ。
彼女は凄腕ハンター数十人で討伐に行くドラゴンをも1人で屠り、その賞金を狙った盗賊共も1人で蹴散らし、ギルド随一の武勇を誇ったのであった。
その後の簡単なオマケ
ウォルシナ→最後に書いたので割愛。強さに惹かれたメイシェンの大貴族のアスラと結婚する。どうやら頼りない坊っちゃん育ちに好かれてしまう様子。
最初は結婚する気は全く無かったのだが、アスラに自分の周りを何年もうろつかれて執念の纏わり勝ちをされた。
アスラ→本編には出てこなかったが、実は昔からウォルシナに恋をしていた。
始めて会ったのは隣国の王城で開催された舞踏会の会場で、ウォルシナの隣には常にパナシェ王子が纏わり付いていて、それが果てしなく羨ましかった。
メイシェンに来たウォルシナには直ぐに気付いたのは、実は動向を探るため間者をウォルシナに張り付けていたため。(重度のストーカー?)
パナシェ王子→確かに聖女にうつつを抜かしていたが、自分の立場は一応理解していた。
そのため、自分の将来の結婚相手はウォルシナだと考えて居たのだが、逃げられた。
結果的にはウォルシナに捨てられた。しかし自身が聖女に対して好意を持ったのも事実であったため、ウォルシナを責める事はしなかった。
虹の聖女ことミサキ→ゲームの設定通りの子。パナシェ王子を筆頭に他の攻略キャラ全員を垂らし込むスーパービッチ。
攻略キャラ以外の彼女に対する評価は地に墜ちるどころか、地中にめり込んで行く。
複数攻略が問題ないのって二次元だからですから。
兵士→ウォルシナが逃亡したのは、自分のせいだと自責の念に駆られる。しかし別にこいつのせいでは無い。
ウォルシナの家族→特に失脚はしなかった。失脚させるの大きな理由のウォルシナがトンズラしたから、捨て置かれた。
突然居なくなったウォルシナの行方を心配はしていたが、数年後に隣国で噂される凄腕のハンターシーナの噂を聞き、直ぐにウォルシナだと判明する。
魔王→1度はミサキの持つ虹色の魔力で退けられるも、虎視眈々とパナシェを付け狙う変態。




