1-6.
才華とは所持者の体内に宿る“鬼”の力である。
1-6.
「鬼…?」
「そうだ。物語などに出てくるあの鬼だ」
鬼と呼ばれる存在が実際にいるとわかったのはおよそ500年年前。もちろん、500年前にいると書物に初めて記されただけで実際には何百、何千年前から存在していた。鬼というのは人間や犬、猫などが母の腹から生まれるわけでもなく、鳥や魚のように卵から生まれるわけでもない。鬼とは死んだ人間の魂である。要するに、幽霊だ。だがただの幽霊ではなく、もっと生きたいと強く願う者の魂だ。だれかの顔が見たいから、あの場所に行きたいから、そういった“未練”ではなく生きる事への強い執着。それが姿形を変え、百数年の後実体化し鬼となる。鬼の寿命は長くて三年。その後成仏する鬼もいればしない鬼もいる。それが才華の所持者…つまり仮面になる。どうやって人間の体に宿るのかという事はまだわかっておらず、研究中だそうだ。
「てことは…俺の中に鬼が存在しなければここには所属できないって事か…」
「あたし達と一緒のとこには、ね。才華を持たないでもネオスに入る方法はいくらでもあるよぉ」
「才華を持つ人間ってのはそう簡単にいないからな。体内に鬼を飼ってても目覚めさせる事無く一生を終えるって人も結構いるし」
どうやって鬼が体内に存在するのか調べるのかと問うとここに来るときに乗ってきたエレベーターがあるだろ、と美影が答える。あのエレベーターには特殊な加工がしてあり体内に鬼を飼っている者が乗るとその者に対して何かしらの反応を示す構造らしい。
名智はそのエレベーターに乗った時何か不思議な感じがしたのを思い出す。「へえ、優秀じゃねぇの」和泉が名智に言ったその言葉から察するに恐らく名智は体内に鬼を飼っているというなんだと理解し、その事を美影に告げる。
「伊野尾さんが連れて来て、和泉先輩がそういう反応をしたなら間違いなく鬼がお前の体内にいるって事だろう」
「どうやって才華を目覚めさせるんだ?」
才華の力を開花させるのに一番メジャーな方法は夢の中で対話する事。ネオスの幹部で霧雨隊の隊長、更にネオス一の科学者である霧雨廣美は潜在能力を引き出しやすい特殊な薬を開発し、それの薬を飲んで眠る。すると高確率で自分の体内に宿る鬼が夢に現れ対話できるようになる。どうやったら才華を使えるようになるかはその鬼次第だが、基本的に無償で力を貸してくれる。
まれに条件をつける鬼もいるがその条件というのが無理難題だったというケースはまだ一度も報告されていないた比較的簡単なものばかりだろう。
「…で? どーする?まだ薬残ってたし今すぐ薬飲ませるか?」
「ああ、と言いたい所だが…決めるのは理央さんだ。俺達が勝手に決めるわけにはいかない」
「それもそうだねぇ、じゃあとりあえず理央が来るまで待とっか」