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超短編2

はじめは声だった。

作者: しおん



はじめは声だった。



おはよう。


そんな一言が言えなくなって、喉の奥で言葉が渦を巻く。

原因はわからなかった。ただ、自分の音で思いを伝えることができなくなった。

それだけだった。


そして僕は口の動かし方を忘れた。




次に音だった。



鳥の声も風の音もしない、静かな朝だった。

ベッドから起き上がって、あれ?と思ったのは、いつもする音がしないから。


僕を生かすために鳴り響く機会音。そして、僕が動くたびに生まれる生活音。


何時の間にかそばにいた見知った顔に、僕は眉を寄せる。話している事はわかるのに、金魚のように口を動かしているだけにしか見えなかったから。


音もなく動く唇は、まるで僕を責めているようだった。




それから色がなくなって、空は黒か灰色になった。



白黒のりんごは味が薄く感じた。お見舞いに持ってくる花束も、僕にとってはお葬式のように思えた。


唯一変わらない壁と天井の白さだけが、僕の救いだった。




最後に世界が消えた。



壁も天井も、真っ黒だった。


光も影もない世界。まるで夢を見ているようだった。悪い夢ならさめればいい。そう思って必死に目を開けた。


それでも夢はさめなかった。




そして僕の人生は闇の中、幕を閉じていったんだ。


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