其の二:人命救助と凡ミス
今俺は絶対に失敗を許されない極限状態置かれている。
この問題次第で俺のこれからの人生は大きな影響をうけるだろう。
決して大袈裟じゃないぞ?
どうも、開始早々割と切羽詰まっているレイシャルト・ガウディノルです。
レイってよんでんねっ☆
・・・・・・冗談はさて置き。
何故俺がこんな局面に立たされているのか、それは昨日の帰り道の途中での会話が切っ掛けだった。
~・~・~・~・~・~・~・~
「名前?」
トカゲ(仮)を拾った帰り、俺の頭の上――何故かここが落ち着くらしい――のトカゲ(仮)を指差しながら言ったクレノの言葉に問い返した。
「そう、名前。いつまでもトカゲトカゲ呼ぶ訳にもいかないだろ?」
トカゲじゃ無くて、トカゲ(仮)だがな。
しかし、確かにそうだ。
今まで考えもしていなかった。何故思い付かなかったのだろう。
「でも、何が良いのかね?」
クレノとトカゲ(仮)に訊いてみる。
「お前が面倒見るんだから自分で考えろよな」
少し位手伝ってくれても良いじゃないか。
で、トカゲ(仮)の方は――
「ピュイ?」
可愛らしく小首を傾げられた。
話自体良く分かってないらしい。
「名前だよ、名前。お前の呼び名、付けて欲しいか?」
それを聞いた途端、俺の頭の上で翼をパタパタさせて目をキラキラさせている。
・・・そんなに楽しみか。
「ピュ~イ♪」
「あらま~、こりゃ責任重大だな。頑張れよ、レイ」
丸投げかよ!
くそう、コイツ俺に懐き過ぎてて出会ってからまだそんなんに経ってないのにもう何でも俺の言うこと聞くもんな。
そんな奴にテキトーな名前は付けられん!ってゆうか、コイツだったら「ポチ」とか付けても大喜びして受け入れそうだ。
そんな事、罪悪感で俺が死ぬ。
「・・・善処するさ」
・・・ 何て厄介なんだ。
「そんじゃ、俺の部屋こっちだから。じゃあな~」
薄情者のクレノは寮の自室へ引っ込んでしまう。
俺も隣の棟にある自室へ向かうべく歩き出す。
頭の上では終始トカゲ(仮)がゴキゲンに翼をパタパタさせている。
ああ、くそ。取り敢えず覚えてろよ、クレノ。
~・~・~・~・~・~・~・~
と、いう訳です。ハイ。
正直、案の一つも出て来ない。
本当なら昨日の内に決めてしまいたかったのだが、疲れたのかトカゲ(仮)は直ぐに部屋のソファ――そんなに大きくない二人掛け用――で丸くなって寝てしまった。
――まあ、仕方ないだろうな。
しかし、だからと言って己の問題がどうにかなる筈も無く、ベッドの上で胡座をかき、目の前で同じくベッドにちょこんと座ってキラキラと視線を放ちながら期待一杯に俺を見上げるトカゲ(仮)を見て軽いパニックを起こす程度には俺は切羽詰まっていた。
・・・・・・・・・・・・。
ええぃ!埒があかん!
よし、こうなったらコイツの行動をヒントにしよう。
何か思い付くかも知れん。
コイツもそろそろ飽きて来たのか部屋の中をキョロキョロと見回しているし、丁度良いだろう。
「部屋を自由に見て回っても良いんだぞ?」
それを聞いたトカゲ(仮)は小さく「ピイッ」と鳴いてからパタパタと飛び立った。
天井近くをくるくると回り、上にあがったり下にさがったり、飾りの花――世話が面倒なので造花だが――のそばに降りて興味深そうに眺めたりと随分楽しそうだ。
さて、何かヒントは――
・・・・・・・・・ダメだっ!「パタ」とか「ピイ」とかしか思い付かない!
絶望的な己のネーミングセンスに愕然とする。
鬱になりそうだZE!
楽しそうなトカゲ(仮)を見ながら静かに涙を流す俺――。
済まんな、こんな奴で。
そんな俺の様子に気付く事無く――本当に良かった――窓枠に留まり外を眺めるトカゲ(仮)。
太陽の光を浴びてキラキラと輝く銀の鱗を見ていると何とも言えない感覚に襲われる。
まるで完成された美術品を見ている――そんな感じだ。
・・・「輝く」か――、よし。
「おーい!」
トカゲ(仮)に声を掛けると直ぐにまた俺の目の前に座り直した。
「キミの名前が決まりました。では、発表します」
ピシッと背筋を伸ばすトカゲ(仮)。
ホント賢いよな、コイツ。
緊張した面持ちの中で隠しきれない期待感に瞳を輝かせている。
何かこっちも緊張してくるな・・・。
「お前の名前は――『グリーティア』だ」
その瞬間、グリーティアの身体が強く輝き始めた。
余りの光に目が開けられない。一体何が起きた!?
暫く続いた光の嵐が収まったのを感じ、恐る恐る目を開ける。
しっかりと目を閉じていたにもかかわらず視界がチカチカして焦点が定まらない。
〔――素敵な名を有り難う御座います、父上〕
・・・・・・うん?何だ、今の。
声の主を探すべく辺りを見回す。幻聴か?この部屋には俺とグリーティアしか――
〔こちらです、父上〕
今度こそ、聞き違えられない程ハッキリとグリーティアの方から声が聞こえた。
「・・・グリーティア、か?」
〔ええ、そうです。改めて、素敵な名を有り難う御座います、父上〕
「――うっ、ぇえ!?」
思わず情け無い声が出た。
だって仕方無いだろ?ツっこむ所が多すぎる!
喋れんの!?さっき光ったのって何!?ってゆうか父上って俺!?
人生最大級のパニックに見舞われ、思考どころか動作まで完全停止した。
〔落ち着いて下さい、父上。確かめたい事がおありなのでしょう?〕
――ああ、そうだ。確かめないといけない事が幾つかある。そのためには先ず、落ち着かないと――
「――すまん。それで、お前は本当にグリーティアだよな?」
〔勿論です、父上〕
取り敢えずは、良かったと思う。
正直、グリーティアが本当のグリーティアじゃ無くなって違うグリーティア――何言ってるか分んなくなってきた。
兎に角、グリーティアには違いない様だ。
「・・・良かった」
〔驚かせてしまいましたか?父上〕
少し心配そうに首を傾げるグリーティア。
何だかさっきよりも表情というか、感情というかが豊かになっている気がする。
「てゆうかお前、喋れたんだな。何で今まで喋んなかったんだ?」
今までは「ピイッ」とか「ピュ~イ」とか、言葉とは程遠い鳴き声しか発せられなかった筈だ。
〔発声器官は無いので「声」では無く「念話」ですが。
話す事が出来なかったのは、先程までは魔力が不足していたのです。死にかけいた所を父上に助けて戴いて最低限の魔力は確保出来ていたのですが流出した量が多過ぎてあの様な事になっていたのです。
しかし父上に名を戴いたお陰で私と父上の間に回路が出来、魔力がある程度こちらへ流れて来た為に何とか言葉は取り戻せました〕
「回路って、俺と契約したって事か?名付けが条件の契約なんてあったか?」
だとするとあの光は契約の証(?)みたいなものだろうか。
〔いえ、契約ではありません。あの光も一度に多くの魔力が流れた為の余剰反応です。特に意味はありません〕
――飽くまで関係性が、もしくは関連性が出来ただけ、とグリーティアは続ける。
そうだったのか、確かに魔力は一度に流すと光を発する。
これを「魔法光」と呼ぶのだが、さっきにもそれの一種だろう。
「そういえば、言葉は――と言ったけど他にも何かあるのか?」
〔ええ、私の本来の姿はもっと大きいです。今は魔力の絶対量が少ないのでこのサイズですが、一応ドラゴンですし。
完全に元に戻るにはあと数年掛かるでしょう、一時的になら戻れないでも無いですが。
あ、人の姿にだったらなれますよ?それなら魔力も殆ど使いませんし〕
・・・今サラッと凄い事幾つか言ったよな。
ドラゴンかよ、お前。
「でもグリーティアの様な色のドラゴンは今まで見たことも無いんだけど・・・」
〔そうでしょうね、私古代龍ですし〕
「こっ・・・!?」
古代龍!?何百年も前に滅びたって云われていて伝承の中にしか出て来ないあの!?
「本当、なのか?」
〔信じられないのは仕方ありませんが本当です。私としては信じて貰うしか無いのですけど・・・〕
此処で嘘を吐く利点はグリーティアには無い、と思う。
まあ、だとしても俺には信じる事しか出来無いのだが。
「信じるよ。それで、最後の質問だけど――何で俺が父上?」
正直、これが一番分からない。
ドラゴンと言うのは人になれると聞いた時点で薄っすらそんな予感はしていた――人になれる魔獣は殆どいない、いたとしてもそれは神獣の中でも上位クラスだけだからな。
それでも古代龍と言うのは驚いたが。
しかし、何故父上?
〔それは私達古代龍の生態とも言えます〕
「生態?」
〔ええ、そうです。古代龍には産みの親というものはありません。雌雄の違いはありますがそれは子をなす為ではなく、その違いがある事が世界に歪みを与えないからです――〕
曰く、古代龍は自然の魔力が集まり、それに「形」と「意味」が与えられた存在――他のドラゴンはちゃんと卵から産まれる――であり、親というものは無い。
しかし、親という概念はある。
如何に強大な力を持つ古代龍も幼い間は保護を必要とするからだそうだ。
そこで古代龍は自らに名を付けた存在を「親」とし、その親に総てを委ねるらしい。
「だとしたら、グリーティアにも親がいたんじゃないのか?何と無くだが長生きしてるんだろう」
これは単なる勘だったが何故だか俺には確信が持てた。
〔確かに私は生まれてから随分と生きました。もうどれ程生きているのかも分からない程に――。
しかし、一度も親がいた事はありません。大変珍しくはありますが、私の様な例は確かに存在します。それに古代龍に寿命と言うものはありません。生き続ける意志と環境さえあれば文字通り永遠に生き続ける事が出来ます。老いる事もありません。
ですから私達は何時迄生きようと、どれだけ生きようと、名与えて下さった相手を親と呼ぶのです〕
――しかも命の恩人ですしね。と言うグリーティア。
言いたい事も、言ってる事も理解出来る。
でもそれを納得して受け入れられるか、と言われれば答えは必ずしも「YES」ではない。
寧ろ「今まで」の俺ならそんな義理は無いと突っぱねていたと思う。
命を助けたのもそれが出来るのにやらなかったという事実を作らない為だ、と。
しかし「今」の俺は少し具合が違った。
頭で何と考えても心がグリーティアの言った事、言いたい事を受け入れてしまっている。
これも開いた回路の影響だろうか――
「グリーティアは、それで良いのか?」
これも単なる言葉でしか無い。
自分を納得させる為の最後のダメ押しと言っても良いかもしれない。
〔私がそうしたいのです。――よろしいのですか?父上〕
グリーティアは飽くまでも関連性が出来ただけ、と言った。
でも俺にはこれがたったそれだけの事には思えなかった。
俺が名を与え、グリーティアがそれを受け入れた瞬間から俺は何か決定的な部分が著しく変質してしまった様だ。
幾多の戦場を渡り歩き、数多くの修羅場を潜り抜け、信じるよりも疑う事によって自らの命を守り続けてきたのだ、俺は。
そんな俺があの一瞬でグリーティアの全てを受け入れ、信じ、ある種の絆の様なものまで感じている。
そして同じく、グリーティアもそうである事が何故か俺には理解出来る。
契約なんてモンじゃ無い、これはもうある意味呪いだ。全くもって異常だと思う。
でも俺はそんな違和感すらも今は受け入れ、寧ろ掛け替えの無いものに感じてしまっている。
心地良くすら感じる。
だから俺にはグリーティアの申し出を断るなんて事は、例え上辺だけでも――出来はしないのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
〔改めまして、宜しくお願い致します父上〕
そう言って頭を下げるグリーティア。
それにしても――
「その父上っての、もう少しどうにか何ないかなぁ?」
別に親と呼ぶのが悪いのでは無い。そんな意識は俺の中には既に一片も存在していない。
ただ、少し堅過ぎやし無いか?
古代龍にとって親とは絶対的な存在らしいのだが俺は古代龍じゃない。
何とゆうか、もっとこう――フランク?な感じでいきたいです。
〔とは言われましても、父上を父上以外何と・・・〕
心底困った様子のグリーティア。
「いや、何てゆうかね。確かに俺はグリーティアが俺の「子」になって「親」と呼ぶ事を受け入れたさ、でもそれは絶対的な上下の関係性じゃ無くて、飽くまでも対等な関係で在りたいんだ。だから父上とか畏まった敬語とか、そんな堅苦しい関係は嫌なんだよなぁ」
これは偽らざる本音だ。
グリーティアを受け入れはしたが此処だけは譲りたく無い。
〔父上がそう仰るなら敬語の方は何とか致しましょう。しかし、父上以外何とお呼びすれば・・・〕
うんうんと唸るグリーティア。
俺の言う事には極力賛成したいが俺の呼び方を砕けさせるのは己の精神というか心というかが赦さないのだろう。
暫く唸ってからバッ、と俯けていた顔を上げる。
〔分かりました、では「お父様」どうでしょう?〕
・・・いや、あんま変わって無いよね?
それでもこれが最大限の譲歩なのだろう。
父上より角張った感が取れたと思い込む事にして俺は納得する事にした。
「――分かった、それでいこう」
うん、色々苦労しそうだな・・・。
そういえば――
「グリーティアって人の姿になれるんだよな?」
〔ええ、なれますよ?論より証拠ですね、実際になってみましょう〕
少し離れてて下さい、と言われたので部屋の中で比較的広いスペースに移動する。
グリーティアも俺の向かい側、少し離れた所で滞空している。
〔では、いきます〕
すると、グリーティアの身体が淡い光に包まれる。
それと同時にクルリと宙返りをすると光が強くなった。
しかし不思議と眩しくは無く、その場に留まる様に浮いていたグリーティアだった光の球は徐々にその形を変えてゆき、人の形になったと分かる所迄きた時、光を弱めながらゆっくりと床に足をつけた。
光の中から出てきたのは女の子だった。
見た目には10歳程度、肩まである銀色の髪に紫色の瞳、身体には白いシンプルなワンピースを纏っている。
背はそれ程高く無く、大体150センチ程。それでも同年代の女の子と比べれば恐らく頭一つ大きいだろう。
顔立ちは恐ろしく整っていてそれこそ美術品かの様だった。
此処で俺は遅蒔きながら自身の重大なミスに気が付いた。
そしてグリーティアが女の子であったことに心の底から安堵した。
俺は今の今迄グリーティアの性別を知らなかったのだ。
性別も知らずに名前を付ける、何というギャンブルっ!!
グリーティアと付けたから良かった様なものの、もっとゴツイ名前をこの超絶美少女に付けていたらと考えると今更ながら全身に嫌な汗が伝う。
仮にそんな事になっていたとしたら俺は罪悪感から今この場で己の火属性最大魔法でこの身を消し炭にしていたにちがいない。
「どうかしたんです?」
人になったせいか、先程とは違いハッキリとした「声」が聞こえた。
鈴の音の様な高く、澄んだ綺麗な声だ。
「いや、大丈夫だ、問題ない」
――うん、この事は一人で墓まで持って行こう。
目の前で可愛らしく首を傾げるグリーティアには絶対に言えない。
「そうだ、これから何かと人の姿になる事もあるだろうから必要な物を買いに行こう!」
あからさまな話題転換ではあったが、これも重要な事には違いなかった。
元の姿で外をうろつけば何時かグリーティアの正体に気が付く輩が現れないとも限ら無い。古代龍なんて力の強い存在が大っぴらになって厄介事が起きない筈が無いだろう。
「そうですね、元の姿で外を歩くのはあんまり良くないです」
グリーティアも俺の考えには同意らしい。
さっきの話題転換に触れられず、ホッと胸を撫で下ろす――心の中でだが――俺。
よし、そうと決まれば早速行こう。
こういう事は早いに越した事は無い。
その旨をグリーティアに告げると――
「じゃあ、そうしましょう」
と、ニッコリ微笑み俺の手を取って歩き始めた。
・・・いや、えーっと、うん。まあ・・・その・・・、いや――、何でもないです。
俺が繋がれた手を何とも言えない顔で見つめているとグリーティアが振り返ってまた、微笑んだ。
・・・ヤバイな、これは。
何がヤバイかは言わないけれど――。
◇◆◇◆◇◆◇
さて、相変わらず物凄い人の市場通りに買い物に来て約3時間。
女の子の買い物嘗めてました。
ランクA魔術師の依頼で使うアテも無いのに相当稼いでいたので、何でも買っていいんだぜ的な事を言ったのが間違いだった。
金額に関して言えば痛くも痒くも無いが量がハンパない。
服やその他諸々の日用品でこんなにも量が出るものかと思うと、俺は唖然とするばかりだ。
勿論、荷物持ちは俺。
グリーティアは俺がプレゼントした――瞳の色そっくりな――紫水晶のピアスを早速耳に装備して嬉しそうに周囲に見せびらかしていた。
その様子を見ていると荷物持ちの一つや二つ、何て気にもなるがいかんせん量と時間が結構なものでかなり疲れた。
と、言うわけで今は通りのオープンカフェで休憩中だった。
それにしても人が多い。
パッと見昨日の倍近くいる様に見える。
本来ならこのメインストリートの他にある二本のサブストリートにも人が分散するからこんなにごった返す事は無い筈だ。サブストリートのどちらか、もしくは両方が通行止めにでもならない限りこんな事にはならない。
――あぁ、な~んかまた嫌な予感がすんなぁ。
見た所往来の人々はこの異常な人間の数に一切気付いていないらしい。
まるで何かしらの要因によって意識を逸らされているような――。
「・・・グリーティア、ちょっと此処で待っててくれ」
「どうしたんです?お父様」
「いや、何でもないんだ。すぐ戻る」
俺はグリーティアの返事を聞かずに席を立った。
カフェから出て暫く歩き、周囲を見回す。
やはり人の流れがおかしい、何かを態々避けて歩いているようだ。
よく見ると西の通りに繋がる道からは人が出てくるのに、東の道からは一切人が出てこない。そして、そんな異常に誰も気付かない。
俺もハッキリ言ってすぐには気付けなかった。
その事実がより一層の違和感を与える。
俺は迷わずその道へ向かった。
踏み込んだ瞬間急に周囲から人の気配が消え、猛烈に来た道を引き返したくなった。
俺はその感覚を無視し、一切の気配を殺して慎重に進む。
果たして、そこには二人の人間がいた。
片方は黒一色の装いの女の子で、手には細剣を持っている。
もう片方は逆に白一色の大柄な男、その両手には大きな洋剣が握られており、白黒の二人は互いに睨み合っている。
おいおい、穏やかじゃないな。
この通りの人払いをしたのは二人のどちらかに違いない。
どちらも殺る気満々だがさて、俺はどうしたもんか。
気配を悟られ無い様に潜んでいると黒の女の子が細剣を腰溜めに構え、猛然と突進した。踏み込みからかなりの腕と推察される。
しかし、白の男はその突進をものともせず洋剣を横に薙ぎ払い、女の子を弾き飛ばした。
その場から2~3メートルも飛ばされ、倒れているがうまく起き上がれない。
どうやら随分と怪我を負っていたようだ。
今度は男が女の子に斬りかかる、あれではガードが間に合わない――!
そう思った時には俺は地面を蹴っていた。
走り出してからしまった、と思ったが後には引けない。
全速力で突っ込み、勢いをそのまま女の子を突き飛ばし男の前に躍り出る。
突き飛ばした方向からガシャァァァン!と物凄い音がしたが死にはして無いだろう。多分。
突然の闖入者に僅かに動きが止まったが、男は対象を俺に変え、再度斬りかかった。
俺もそれを向かえ打つべく、念の為にさしておいた腰の剣に手をかける。
このタイミングなら俺の剣が先に届く――!
抜き打ちの一発を叩き込もうと一歩踏み出した時、突然踏み出した足の下に空になった丸い瓶が――
「――――っ!?」
どうやらさっきのガシャァァァン!の正体はゴミ箱だったらしい。
そしてこの瓶はそのゴミ箱から此処まで態々俺の足の下を選んで転がって来て下さった様だ。
――って、ぅぉぉおおぃ!?
このままじゃ転けるっ!
咄嗟に足を引こうとしたが傾けた重心がそう簡単に戻る筈も無く、俺は思いっ切り瓶を踏みつけた。
失われたバランスに、迫り来る刃。
もうどうやっても間に合わない。
人間、死を前にすると走馬灯を見るというが実際は全てがスローモーションの様になり、何も考えられなかった――。
ただ一つ、ああ、しくじったなあ、こんなんで終わりかよ。と漠然と思った。
永遠の一瞬の後、遂に刃が俺の身体を捉えた。
左肩に触れたソレは何の抵抗も無く一息に俺を斜めに分断した。
痛みは全く無く、ただ余りにも生々しい己の断面を見つめる。
急速に意識が遠のく感覚に襲われ、俺はもうそれに抗う事も出来なかった。
延々と引き延ばされた一瞬の中でふと、グリーティアの事が頭を過った。
「――――お父様!!」
彼方で響いたその声を最期に俺は意識を手離した。
丁度良い文章量が上手く摑めずに苦労してます・・・
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