第四章 紅色のケース
琥珀が見つけた不思議なケース。
拾おうとしたが、悠に取られてしまった。
その時、一瞬見えた、「白雪臨」の名前、
花壇の裏で気付いた、悠がそのケースに似たものを持っていたこと。
このケースもあの事に繋がっていく...
-琥珀-
トイレの掃除が終わり、教室へ戻ろうとしたら、廊下に紅色のケースが落ちていた。
不思議に思って拾おうと近付こうとしたら、一足先に夜鷹悠がそのケースを拾った。
その時一瞬ケースに「白雪臨」という文字が見えたので、私は急いで駆け寄った。
「悠!それ、私に貸して!臨さんの物でしょう?」
「いや、違う。俺が拾ったから、俺の物だ。」
悠は冷たく言うとさっとその場から消えた。
『えっ!嘘でしょう。悠が消えた!?』
私はショックで固まってしまった。のも束の間、チャイムが鳴ったので急いで教室へ戻った。
教室に悠は居なかった。また、白雪臨も居なかった。
先生は、白雪臨は家の事情で帰ったが、悠は知らない。と言った。
では、悠はどこに居るんだろう。五時間目が終わった後、私は教室を飛び出した。
悠が今どこで何をしているか突き止めるのだ。
彼方此方探して見つからないうちにチャイムは鳴ったが、私は気にせず走った。
ついに悠を見つけた。裏庭の花壇の裏で、何かごそごそやっている。
何をやっているのかと覗こうとしたら、
「琥珀、こんな所でなにやってるんだ。」
冷たい声で名前を呼ばれた私はビクっとしながら答えた。
「なにって、悠ことなにやってるのよ。わざわざ探しに来たっていうのに。」
言いながら、花壇の裏を覗いてみた。
一見、細かい字が書かれた紙がたくさん散らばっているだけに見えた。
悠が、さっとケースのなかにしまってしまったからよく分からなかったが。
そういえば、悠のポケットには、真っ黒なケースが入っている。
それは、紅色のケースによく似ていた。
一体、このケースは何なのだろうか。
このケースに何か秘密が隠されているのは間違いなかった。