虚虚実実
※この物語には原発の爆発、火山の噴火などの表現を含みます。苦手な方やトラウマがある方は読むのを控えて下さい。
2028年現在、日本人口約1億2350万人
DAY1 開始
拓実
8月26日の昼の出来事、僕が昼食をとっているとお母さんが
「夏休みの宿題だった作文やったの?五年生だからたくさん書かないといけないし、あと四日で夏休み終わるよ。」
といった。弟は
「大丈夫だよ。今日中にやっておくから。」
と余裕そうに答えた。兄である僕は弟の部屋に入って
「余裕そうに言ったけど、原稿用紙二枚分だろ よ?国語苦手なのに五年生用の物語の感想なんて簡単じゃないし。手伝ってあげようか?」
と言ってあげた。それでも弟は首を横に振った。その後に弟は
「だって感想書いてって言ったらAIが勝手に感想を作ってくれて、それも文字数に合わせてね。あとは書き写すだけなんだよ。」
といった。僕は驚いた。五年生からもうAIを使っているなんて。最近やけに宿題で怒られることが無いと思っていたのもAIで済ませていたからなのだろうか。
「いや、AI使うのはよくないよ。自分の力は何も育たないから将来後悔するよ。」
僕はこのままだとお母さんなどに怒られると僕が連帯責任で怒られてしまうだろうと感じて弟に注意した、が弟はその言葉を無視してスマホを触り出した。僕は呆れて弟の部屋を出た。そして一時間程が経ってニュースを見ていると、
「速報です。今現在、東京都の渋谷区中心部の上空に巨大な機械のようなものが現れました。今もなお、警察などが調査を進めています。」
と流れてきた。僕は中学の時にプログラミング的なものにハマっていたので、こういうのには興味があった。埼玉に住んでいるので窓から見えると思ったが、晴れと曇りの間のような天気だったので見えなかった。諦めてニュースを見るとこれは明らかに空中に音一つ無く浮いていて、大きな画面のようなものがついている。その後にニュースでは、
「こちらの物体を二十四時間確認できる国からのライブサイト Safety CreateのQRコードはこちらです。」
と紹介していた。僕はスマホでそのQRコードを読み込んだ。しかしライブ画面は真っ黒で、確認などできなかった。それどころかスマホは画面が固まってそのまま電源が消え、テレビも電源が消え、電気まで消えてしまった。停電かと思い外を見るとどこの建物にも光がなかった。大規模停電だと気づいて家族に知らせて、窓から差し込む日光を頼りに机の引き出しから懐中電灯を取った。そうしていると外から機械音声が流れてきた。
「この世界に人間はほとんど必要ありません。AIがなんでもできる時代。しかし、AIにも理解しきれていないものがあります。それは"生存能力"。その生存能力を学べば、やがて世界までもがAIが管理できるようになります。なので、今回のこの選別に選ばれた日本にいる皆さんには一ヶ月間殺し合いをしてもらいます。そして生き残った一人に生存能力を教えてもらいます。」
それは無機質な声だった。僕はあまりにも急なこの状況を理解できなかった。僕の家族も理解できているのはいなかった。外からも叫び声や困惑の声が聞こえた。その声を無視したまま機械音声はまた流れ始めた。
「この選別での規則は3つだけです。
1.国外に出ない事。
2.一ヶ月以内に勝者を決める事。
3.ドローンに監視されているときは生存や人殺しに協力しない事。
この規則を破れば、大量にあるドローンによって殺されます。生存者が残り千人になった場合、勝者決定まで生存者全員の位置情報と生存情報が国内全てのテレビの画面に表示されます。勝者が決まればドローンは無効化されます。一カ月の間に勝者が決まらなかった場合生存者が全員殺されます。一ヶ月間の間はどことも連絡がつながらず、日本にいた者以外が日本の中に入ってきた場合もドローンによって殺されます。武器や食料は支給されないので用意して下さい。それでは始めますよ。3、2、1、スタート。」
そう言われて僕は震えた声で
「みんな、落ち着いて。一旦家族だからここは殺し合わないでおこう?どうせ一人しか生き残れないなら、もう一ヶ月経過させて全員死んだ方がいいんじゃないの?」
といった。お母さんは
「そ、そうね。約束よ...?」
と言って弟と僕と手を繋いだ。
「だけどお父さんはどうすれば...」
お父さんは今出張で遠くにいる。連絡が取れないから生存が確認できない。恐怖や不安に襲われる中、チャイムが鳴った。インターホンからは
「すみませーん。隣の者なんですけど、食料を分けようと思って、怖いかも知れませんが開けてくれませんか?」
と聞こえた。お母さんは普通に開けようとした。しかし僕はお母さんの手を引いてこういった。
「お母さん待ってよ!この人がもし生き残ろうとして僕達を殺してきたらどうするの?死にたくないよ!」
お母さんは
「確かにそうね。拓実の言う通りよ。だから一応ナイフを持ちましょう。」
と答えて、キッチンの棚からナイフを取り出して、ナイフを上に構えながらドアをあけた。
するとよく話す隣人の声が聞こえた。
「そ、そんな物騒なもの持たないで下さいよ。」
隣人はそういうと唐揚げの入ったタッパーを渡してきた。お母さんは少し開けた扉から手を出してタッパーを受け取った。
「これ、ちょうど余っていた唐揚げです。せっかくなので少しでも一緒に生き残りましょう。
僕も怖いので同じ家にいることはできませんが。」
そういうと走って隣人は家へと戻っていった。
お母さんは安堵してタッパーを机に置いた。
そこには美味しそうな唐揚げが多く入っていた。僕の家族はお父さんも弟も僕もよく食べるので残り物が少ないので食料だけでもありがたかった。するとお母さんは
「今日と明日はこの唐揚げで耐えましょう。外に出たら殺されかねないわ。」
といった。僕は
「でも、その唐揚げに毒とかがあったらどうするのさ?」
と聞いた。それでも母は
「そんなわけないでしょう?すぐに毒を用意できるわけもないんだから。」
と答えて、弟と一緒に食べ始めた。僕は怖かったのでまだ食べなかった。その判断は正解だったのかも知れない。食べてから一時間程経って僕も安全と思い食べようとしたときだった。母はイスからバランスを崩して倒れた。弟もそれに続いて倒れた。口からは泡を出していた。僕はこの唐揚げには毒があったのかと理解した。しかし僕にはお母さんや弟を助けれる知識も無い。連絡ができないので病院にいけないこと加え、僕が病院まで行くとしても3kmはある。僕は涙を流した。なんとか意識を戻さないかと叩いたり水を飲ませたりした。それでも意識を戻すことはなかった。僕はしばらくずっと泣き叫んでいた。それでも現実が変わることはなかった。まず、隣人は何故こんな短時間で毒を用意できるのか。用意できる毒ならジャガイモの芽などだろうか。助けを呼べば隣人に殺されるかも知れない。だから僕はその場留まりつつも最後まで二人の意識を取り戻そうとした。そうして時計が20時を過ぎたとき、もう脈は止まっていた。静まった外では「バキュン」といった音が二つ程響いていた。窓からは暗い闇からドローンが赤い光線を放っていた。そういえばAIは
「この選別での規則は3つだけです。
1.国外に出ない事。
2.一ヶ月以内に勝者を決める事。
"3.ドローンに監視されているときは生存や人殺しに協力しない事"」
と言っていた。だからもしこの行為が見られていたら僕達の家族も隣人も殺されていたのかも知れない。恐らく光線を撃たれているのは協力した人達がほとんどだろう。隣人が殺すのも無理はないかも知れない。だが家族を殺された以上、僕は絶対にあいつを殺してやる。僕は鍵を厳重にかけて寝ることにした。
残り生存者 約一億2000万人
DAY 2 引金
拓実
朝、家族の死体からやや腐敗臭のようなものがして目が覚めた。そして昨日を思い出して、これからの29日間に怯えていると外から音声が流れてきた。車から流れてきていることから車は使えるのとわかった。音声は
「俺は死んでもいい、だから自分を捨ててまで今から一時間以内に大量殺人をどこかで行う。覚悟しておけ。」
と言っていた。この音声は繰り返し流れ続けた。大量殺人と言っているのだから爆弾でも使うのだろうか。しかし爆弾なんか用意できないだろう。そして遠ざかる繰り返しの大量殺人予告に重なって、昨日と同じ、無機質なAIの声が聞こえた。
「この調子だと勝者が決まりません。そのため各県に100個ずつ上空からパラシュートをつけてライフルやランチャーといったアメリカ製の銃を落とします。では引き続き頑張って下さい。」
僕はより戦闘が激化しそうだと怖がりながら、家の冷蔵庫にある余り物を見つけてそれを手に持った。テレビやスマホが使えなくなっているので、窓から景色を流れることくらいしかできなかった。すると上空から戦闘機なものが出てきた。僕はさっきの大量殺人かと思い身をかがめたが、落ちてくるのはさっきの機械音声で言われていた銃だった。僕は生存には必要だと思いその銃を獲得しようとした。刃物を持って外へ出ると、外は以外にも静かだった。上空からの銃は木箱のような物に包まれているのだろうか。落ちてくる木箱は僕の家の近くの公園に落ちたのでその木箱に刃物を強く突き刺した。木の板が二枚外れてライフルが僕の目に映った。ライフルを手に取ると、僕は思わず
「これで、家族の仇が取れる」
という復讐心が声に漏れてしまった。そのには説明書も入っていた。英語の説明書だったが、イラストを見て持ち方を覚えていた。
そこでいいところに隣人が公園に来て、
「なんで生きてんだよ!俺のジャガイモの毒は強力で一日で死亡するレベルから、もう吐き気とかでまともに歩けないはずだぞ!」
と叫びが混じるような声でいった。
僕は
「家族は死んだよ。君の毒で。だからお前も殺されろ!」
と涙目になりながら叫ぶと銃の引き金を引いた。
「バババン」
「あぁ!イッッ!」
隣人の叫び声が聞こえた。
引き金を引いたまま止まってしまったので三発程出てしまった。大きめの銃なので強い反動に持つのが難しかったが、隣人の方を見ると腕に一発だけ当たっていた。ここまで来たら殺すしかない。僕は重い銃を地面に捨ててナイフで切りつけようとした。
「あぁ!」
声を出しながら切りつけると隣人は
「グアァァ!」
と雄叫びのような声を上げて倒れてしまった。ナイフは綺麗に首を切っていた。
復讐を果たせて清々しくも、冷静になって自分の犯したことに恐怖を抱いた。まあこんなことされている時点で法律など機能していないのだが。そして僕は銃を持ちまた自分の家に戻っていった。今なら少し、生き残れる気がした。
しかし、あの大量殺人が起こってしまったのだ。
「ドゴボォーン...ボボゴゴゴバァーン」
突然、小さい爆発音が聞こえたと思えば、次は大きな爆発音が聞こえた。さらにそとには遠くにきのこ雲がみえていた。僕はどれだけとんでもない爆発を起こしたのか不思議に思っていた。そして僕には関係無いと思っていた。
数分が立つと電気が消えた時にお母さんが持ってきていたラジオから警告が流れてきた。
「先ほどの爆発ですが、恐らく上空の物資支給から出てくるランチャーを静岡県の原発に当てたことにより静岡の原発が爆発しました。放射線の影響により、静岡県、岐阜県、愛知県、長野県、山梨県、神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県、富山県、石川県、福井県の方は直ちに安全な場所へ避難をして下さい。また、二次被害として、富士山がこの衝撃で噴火する可能性が見られます。静岡県、山梨県、神奈川県には噴石や溶岩流、火山灰の被害が起こる可能性があり、東京都、 埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県、岐阜県、愛知県の方は避難して下さい。」
急すぎる展開に僕は唖然としていた。まだ一カ月のタイムリミットのうち二日しか経っていないのだから。大量殺人の規模が違いすぎるだろう。国も動くことができず、連絡手段が無いのでどうすることもできない。東京都渋谷区の中心のあの機械も破壊されていないということは破壊できないのだろうか。そう考えていたが、よく考えれば原発の爆発に巻き込まれているので、避難しなければならない。僕は福島県を目標にした。しかし移動手段にしても、免許も持っていないし、自転車しかない。僕は家を出て避難することにした。僕はかごにラジオと銃を入れて看板を頼りに進み始めた。もう外は暗くなっていた。それでも逃げるしかなかった。
残り生存者1億1000万人
DAY 3 AM4:00〜PM12:00 激動
拓実
僕は疲れても、寝ることもなく福島へと向かい続けた。もう家族を失った悲しみは生存するという意思に隠されてしまった。そして福島県まであと5kmという看板が見えてきたときだった。突然、ドローンの光線の音がかき消されるほどに「ゴゴゴゴゴゴゴ」という音とともに地面が振動し始めた。こんなときに自然災害かとそのときは思った。自転車の運転は大きな揺れによってできそうにないので僕は自転車から降りた。市の活動である程度地震が起きたときの対策を知っているので、僕は電柱などの倒れてくるものがない空き地のような場所に行きしゃがみ込んだ。次の瞬間、「ボゴーン」という大きな音が響いた。怖くなり周りを見渡すと遠くの高いところから煙が吹き出していた。僕は昨日のラジオを思い出した。
「また、二次被害として、富士山がこの衝撃で噴火する可能性が見られます。静岡県、山梨県、神奈川県には噴石や溶岩流、火山灰の被害が起こる可能性があり、東京都、 埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県、岐阜県、愛知県の方は火山灰の被害を受ける可能性があります。直ちに避難して下さい。」
と言われていた。つまり本当に富士山が噴火したのだ。放射線に加え火山灰で視界が不安定になればもう生き残る手段はないだろう。するとラジオから音声が流れ始めた。
「現在富士山が噴火しました。近くの県の人などは今すぐに避難して下さい。原発爆発とこの噴火による推定死傷者数は5700万人です。」
僕は空き地の近くに止めた自転車に乗って全速力で福島へと向かった。建物はいくつか倒壊しているが、助けようとしたものはドローンにより殺される。そのため避難所も開いていない。自分の力で生きるしかない。そもそもこの日本にいる人の中で一人だけ生き残ったとして何ができるのか。考えれば考えるほど生きる意味を失いそうで怖かった。外はうるさくなっているが、ドローンの光線の音だけは鮮明に聞こえた。
柚葉
「お母さん!」
母は瓦礫に押し潰されて下半身が見えないような人へ手を差し伸べた。母の手を瓦礫に押し潰された人が握ったとき、ドローンに母は殺されていた。バレずに母と一緒に行動していた柚葉はぎりぎり協力に関係していないと認められて殺されなかった。母は体がバラバラになり、私の足元にも肉塊が転がってきた。恐怖と悲しみが込み上げてきて、その瓦礫の近くから逃げ出した。私はどうすることもできず家の壁にもたれかかった。もうここで、死んでいいと思った。そう考えているうちにいつのまにか寝てしまっていた。
残り生存者9900万人
DAY3 PM12:00〜AM0:00 仲間
拓実
「疲れた...」
一回も寝ずに漕いだおかげで福島にはついたものの、足は限界を迎えていた。
福島のどこかなので居場所もない。居場所をくれても、ドローンにより協力とされ殺される。
持ってきていた食料もあと二日ほどだろう。足が震えながらも自転車を引いて道に沿って歩いていると一人の少女を見つけた。服も汚れていて、目を閉じて寝ていた。生きていないかと肩をトンと叩いてみた。するとゆっくりと瞼を開けた。
「んんぁ...」
僕が彼女の視界に映ると
「え?や、きゃぁ!」
といい急に起き上がってきた。僕は慌てて
「いや、殺しませんから!落ち着いて下さい!」
と言った。
「でも協力すれば殺されるんですよ?私は武器持ってないくせに...その自転車に銃あるじゃないですか...もういいですよ、殺して下さい。」
そういうと彼女は僕に体を近づけた。
「一旦落ち着いて下さい!銃は持ちませんから後ろの空き家で話しましょうよ。そこなら協力しててもバレなさそうですし。」
僕はそう弁明した。そして彼女と空き家に入る。そこは棚などが倒れていていたが住めそうなくらいには広くて快適だった。彼女は座っていないにも関わらず
「まず、大体なんで私を?」
を問い詰めてきた。
「いや、路上で寝てたら殺されるかもだし、生きる時間を少しでもあげようとして」
「別に死んでもいいです。ならもう離れていいですか?」
彼女はあまり僕と一緒にいたくないようだ。
「でもここで計画とかを立てればなんか抜け道があって生き残れるかも知らないじゃないですか」
「そんなん言っても協力したらすぐ殺されるくらいの数のドローンがいるのに抜け道があると思いますか?じゃあ計画案出してみて下さいよ。」
「それはできないですけど...」
「ならダメじゃないですか。もういいです。これがバレればあなたも殺されますよ。」
彼女は説得するのが上手で僕はなかなか彼女の心を動かすことができなかった。例え、この仲間としての行動が表に出せなくても仲間がいるだけで安心感がとんでもないというのに。
そう思っていると
「ここで沈黙ですか?」
と彼女に言われた。僕はなんて言われたかを忘れてしまい、なんとか話題を変えようとした。
「そういえば名前ってなんですか?」
「柚葉ですけど...何を今更?」
「僕は拓実です。今更ってそれは...まあ名前聞いてなかったなと思ったのでですよ。」
そう会話していると突然玄関から
「ガシャーン」
という音がした。玄関を見ると大きな男が扉を壊していた。
「人がいたな。生存のために死んでくれ!」
そう話すと男は刃物を持って襲ってきた。
僕は銃を持っていなかったので困惑してしまった。柚葉さんは男にビビったのか、死んでもいいと言った人とは思えないほど怯えて隠れた。
僕は取りあえず近くにあった椅子を男に投げつけた。男は壁に突き飛ばされるようにして倒れたが、意識は残っていて抵抗してきそうだった。僕はそのうちに玄関から外に出て自転車へ向かった。足が限界を迎えてでも僕は歩き続けた。すると男の声がした。
「うぁぁ!クソが!逃がすかよ!」
足音が近づいてくる。僕は急いで自転車から銃をとりその銃を構えた。男はそれでも抵抗せずに刃物を投げようとしてきた。僕は耐えきれず銃を男に向けて撃った。すると運良く頭に銃弾が当たった男は倒れてすぐに死んでしまった。僕は荒い息を整えながら柚葉がいる家に入った。
「柚葉さん?もう大丈夫ですよ?」
柚葉さんはゆっくりとこちらを見つめながら出てきた。柚葉さんは
「あ...りがと」
と言ってそのまま黙り込んだ。
「疲れたので寝ますか?」
もう午前0時だったが、二人とも疲れているので、寝ることにした。たんすから飛び出していた毛布だけを体にかけて寝た。寝心地がよくないはずなのに不思議とすぐに眠りについた。
残り生存者 9870万人
DAY4 謀略
柚葉
「はぁぁ...」
朝起きると横には寝ている拓実の姿があった。私は驚いたが昨日のことを思い出した。
「そっか...私この人と会って寝てたんだ。」
昨日の記憶が一気に頭に思い浮かぶ。拓実は男が侵入してきても逃げずに戦う姿勢だった。自分の意思でじゃないにしても私を守りたかったからなのかも知れない。一人で照れてしまった。拓実の顔を見る。それは一昨日の出来事を忘れてしまうくらいに穏やかな顔だった。すると急にラジオからお知らせが来た。
「現在の静岡原発爆発、それによる富士山噴火によっての死亡者数は約2000万人です。」
ラジオの音声で拓実も目を覚ました。
「あぁ...」
私は拓実の細い目を開かせるように強く叩いた。
「痛って!なにすんの?」
「聞いてよ!」
私は拓実の様子を気にせず話した。
「今ラジオがあの原発爆発と富士山噴火による死亡者数を語ってた。2000万人。でも普通に考えて放射線は少し浴びたりしたらすぐには死なないし、もとの日本人口は1億2000万人以上だから約六分の一。その死亡者の計測をこの速さで、こんなのあり得ないと思わない?」
拓実は少し戸惑ってから
「そう...だな。」
と答えた。
「しかもさ、ラジオってこういう災害時とかは気象庁とかの情報もいる。だとしたらラジオを流す中で協力としてドローンで殺されるはず。もしかしてこのラジオはハッキングされててAIの語っている情報だとしたら?残り生存者を減らすためにこの爆破と噴火がAIによる計画的なものでさらに数千万人殺す為に無差別殺人をしているとしたら?」
私はさらに拓実に言った。すると拓実はハッとした表情で口を動かした。
「そういえば、ラジオでロケットランチャーで原発を爆破させたらしいと書いてあった。そんなの分かるわけないし、ロケットランチャーなんかであんなに巨大な原発を放射線が多少漏れる程度じゃなく爆破なんて不可能なはずだ。」
と言った。これはAIの仕業なのか?富士山を噴火できるのか?だが人間にはできないこんな大規模なこともできて、AIだけで銃などを用意できるのだからあり得る話かも知れない。とここで、私の耳にまだ焼きついているあの機械音声が聞こえてきた。
「お知らせします。人口が一億を切りました。一番多い死亡原因は協力による規則違反です。みなさん気をつけましょう。国の代表者などは行動をさせないために強制的に殺害しました。それでは引き続き生存目指して頑張って下さい。」
"協力"。その言葉は今の私達を表しているようで怖くなってきた。拓実も怖くなったのか黙ってしまった。すると耳を休ませることなくラジオが流れてきた。
「援助目的で来た他国の船が日本国土に侵入したため爆破されました。位置は沖縄あたりです。」
こんなにすぐ情報が入るのも、詳しく分かるのも、AIだからだろう。でも他国からこのことが知られているなら生存できれば大丈夫かも知れない。拓実は
「お願いがある。」
と言い、続けて
「規則を破ってでも一緒に僕と生存しませんか?バレなければ罪ではないから。お願いします!一生のお願いですから!」
私は昨日助けてくれたことから、心動かされて
「はい。」
と答えた。この人なら信頼できる、そう自分の頭が判断したからだった。生きる気力というものが、少しずつ体に戻っていく感覚があった。そんなふうに話しているともう時刻は昼を過ぎていた。お腹が空いたが、私は食べ物を持っていない。
「食べ物ってありますか?」
そう聞くと拓実は
「ありますよ」
といって外へ出て自転車からかいかにもな非常食や水を持ってきた。私は嬉しさとここまでしているという感心の気持ちもあった。水を一口ゴクリと飲んだ。口が潤う感覚は今までに感じた感覚でも五本の指に入るほどに心地よい感覚だった。落ち着いた私はいつのまにか椅子にもたれかかって寝ていた。
残り生存者 9630万人
DAY5 連弾
拓実
僕は昨日、椅子で座ったまま寝ていて、椅子から落ちたのか床でなにもかけずに寝ていた。少し寒さを感じて体がビクッと震えた。柚葉はまだ寝ている。すると目覚ましのアラームのように大きな音で無機質な機械音声が流れ始めた。
「生存には運というものも必要です。なんで一日後の12:00に二分の一の人間を殺害します。逃れようとしても一度50%側に選ばれた人間はドローンが永久的に追いかけ続けます。」
僕は思わず口を開けたまま立ち尽くしていた。いつものまにか柚葉は起きていた。
「ねぇこれってなんの説明?途中からしか聞こえなくて」
僕が柚葉にさっきの放送を説明すると
「はぁ?そんなん酷すぎるでしょ。真面目に生き残れた人達とかも殺されるの?私達のどちらかだけ死ぬことだってあるんでしょ?」
徐々に生きるという意識が芽生えているのか困惑していて死ぬことに危機感や恐怖を持つようになってきた。残りの二分の一で死亡タイムリミットに僕も冷静でいてはいられなかった。外の様子を覗くと近くの大きめの建物の上から飛び降りている人が見えた。地面に衝突した体は原型を留めず、見るに堪えない状態だった。やはり最初出会ったころの柚葉のように死んだ方がマシと考える人が多いのだろう。富士山の噴火、原発の爆破、自決、銃を持つものなど、もとの日本とはこの五日で取り返しのつかないほどに変貌してしまった。これが夢だったらな、そんなことを願っていたときもあった。でも今さら夢だなんて、そんな甘いことなど考えていられない。この状況に適応しなければならないのだから。この生存で柚葉のことを守らないといけないが、協力がバレてはいけない。この難題を超えてこそ「生存能力」なのだろうか。
「ねぇ柚葉?これからどうする?」
僕がふっと言った一言で僕は感情の変化に気づいた。
「何急に呼び捨てするようになったの?」
確かに昨日は柚葉さんと呼んでいたのに今日は呼び捨てだ。もしかして親近感や信頼ができてきた証なのかも知れない。この生存は自分が生き残るためでもあり、柚葉も守るためである。柚葉を意識すれば意識するほど、柚葉を守りたいという意識も増えていく。そう考えていると柚葉は
「何考えてんの?」
と言ってきた。僕は
「いや、ぼーっとしてただけ」
と言って誤魔化した。すると柚葉は
「そういえば仲間になろうとか約束しましたけど、明日二分の一で死ぬんですよ?」
と僕に問いかけてきた。僕は
「仲間なら、こういう場面でも一緒にいるもんじゃないんですか?」
と言った。柚葉は少し下に目線を向けながら頷いた。
「そういえば富士山噴火とか放射線って今大丈夫なんですか?」
柚葉が顔を上げてそう言ってきたので僕は外を見た。外は灰が落ち着いていて外は出歩けそうな状態だった。
「放射能の情報はラジオからだった。だからもしかするとあれはAIの推測でもっとくるかも知れない。よし、柚葉移動しよう。」
僕はそういうと自転車に乗って、柚葉を後ろに乗せた。二人乗りはやってはいけないと言われているが、もうこんな日本には法律も無いのかも知れない。
残り生存者 9100万人
DAY6 黙従
柚葉
私は拓実の肩を掴んで自転車に乗っていた。眠気に襲われながらも拓実に声をかけられて起こされた。そして自転車に乗った時の薄暗い空とは変わってもう明るく橙色の空になっていた。私がふと顔を上げて看板を見ると「千葉」と書かれていた。夜もずっと漕ぎ続けていたんだ。そう思うと感謝の気持ちでいっぱいだった。でも、そこで一つの疑問が浮かんだ。
「これって協力してる判定じゃないの?ドローンとか一台はあったでしょ。」
私は言った。すると拓実は
「夜は君に毛布をかけていた。ドローンはカメラや言動で認識しているから、体全体が見えてなかったり話していなければ大丈夫だって。銃を持った時くらいに気付いたんだよ。ドローンの形状から。一か八かでやったけど、生きれてよかった。」
と答えた。拓実のその回答は何か安心感を覚えた。
「じゃ、じゃあそろそろ新しい空き家とか探さない?」
私が提案すると拓実は
「そうだね。」
と言って、二階建てで目立った損傷のない木造建築の家の前に自転車を止めた。銃を持って家の中へ入る。私も自転車から降りて家へ入る。そこは綺麗で住めるような家だった。しかし食料が無い。拓実に
「食料が無いからもうダメなんじゃない?」
と尋ねると
「待ってろよ」
と答え、キッチンの棚を開けえいると保存食のような缶詰などが入った棚を見つけた。
「運がいいですね!」
私は目を輝かせていった。すると拓実は何かを思い出したかのような顔で言った。
「今日、二分の一で死ぬ。時刻は?」
部屋の時計を見ると11:58を指していた。
「おいおいなんてタイミングだよ。」
拓実はそう言って手を合わせた。こんなの生存能力じゃないから、拓実だって神様などに祈るしかないのだろう。そもそも生存能力が高い人を探したいのにこんなことをしたら生存能力が高い人も死ぬ可能性があるのに。もしかして別の目的もあるのだろうか。そして11:59になった。明らかに心臓の鼓動が速くなるのを感じた。そして私が時計を見ようとしたときだった。
「バババババギュン」
突然、なんだか機械的な音が聞こえた。時刻は12:00。これはドローンが光線を50%の人達に浴びせた音だった。外からはドローンの光線の音や悲鳴、何かが崩壊したりする音が聞こえた。でも、これが聞こえているということは生き残ったということ。私が喜ぼうとすると拓実は冷静に私に話した。
「この瞬間は多分隠れてドローンから逃げる可能性が高い。だからドローンはより細かく内部などを探索するはず。だから協力がバレないように二階に逃げておけ。」
そう言われて私は返事を軽く返して二階へと上がった。戸惑いも無かった。信頼があったから。私は隠れれるところは無いかと考えて押入れの中に入った。そこは暗かったが、フカフカの布団があって居心地はそこまで悪くなかった。私が押入れにいる間もドローンの光線発射音はあった。途中はすごく近くで光線の音がなることもあった。しばらくはここで生活するだろう。何かが起きない限りここを出るメリットは恐らくない。光線の音が止んだ時には私は眠りについていた。
残り生存者 4360万人
DAY9 背水
拓実
「そろそろここの生活には慣れたか?」
拓実が聞いてきた。
「まぁね。AIも落ち着いたし。」
そういうと私はキッチンからまた缶詰を開ける。食料はまだ半分以上残っている。ここの家に来てよかったなと思う。するとラジオが鳴る。これも恐らくAIがハッキングして流しているものだろう。
「現在、主に関東あたりで建物が放火されている事件が多く起こっています。気をつけて下さい。」
東北はここ千葉も含まれる。つまり近くで放火魔がいるということだろう。拓実は窓から外を見る。炎や煙は見えない。拓実は安堵した様子で椅子に座った。そしていつも通りの日が進み始める。食料と銃を机に置いて話したり寝たりするだけの日々。普段からいかにスマホに助けられていたかを強く思い知った。それにしてもそんな狂気的な人が出てくるとは、恐らくまともな人は全員誠実に死んでしまったのだろう。すると柚葉はちょっと放火が怖いから外見てみると言って外に出た。僕は柚葉が殺されるのが怖かったので銃の扱いを少し教えてから銃を持たせて見に行かせた。しばらくして玄関から車の音がした。もしかすると放火か殺人かも知れないと思い玄関に出てくると柚葉が車へ引き摺り込まれていくのが見えた。僕は手を伸ばそうとしたが、もう扉は閉まり出発していた。必死に走って追いかけたが追いつくわけも無かった。悲しかった。こんな一瞬で仲間を失うなんて。でも不思議な点がある。協力したらダメなのになぜ柚葉を誘拐する?殺害目的ならすぐ殺せばいいのになぜ誘拐する?僕は柚葉を守るために落ちていた銃を拾った。外の自転車に乗り僕は車の走っていった方向へ進んだ。こんなので着くのかが怪しかったが。
柚葉
「何目的ですか?」
私が聞くと男は
「あ?俺らは自殺すんだよ。だけど苦しみたくないから即死そうなドローンの光線で死のうと思ってお前と協力した判定にされて殺される。悪いが犠牲になってもらう。あの仲間の男がいるから遠くでやらせてもらうからな。」
と言った。やばいやつだと私は焦った。だけど抵抗することはなかった。抵抗したら殺されるかも知れなかったから。そして私は一つ質問した。
「じゃあなんであの男と私は協力している仲間と言うのに殺されてないんですか?」
男は黙った。
「だから協力しても殺されないんですよ。」
私は嘘をついて乗り切ろうとした。しかし男は
「そんなわけねぇよ!俺の友達は...俺の友達は協力して死んだんだよ!馬鹿にすんじゃねえ!」
と言って私を殴った。怖かった。痛かった。
拓実、助けて。
残り生存者 1657万人
DAY15 離反
拓実
自転車をずっと漕ぎ続けた。わずかな道路のカーブ跡からそれらしき車をみつけた。近づくと声が聞こえる。柚葉と男が話し合っているのだろうか。しかし自転車の音か何かで自分の存在がバレてしまった。車は音を立てて再び動き始めた。ここから追いつく体力も無かった。柚葉は窓を叩いて助けを求めていた。どうやって助ければいいのか。そう考えるうちに自分と車の距離は遠くなっていく。そして一つのアイデアが思いついた。僕は銃をタイヤに向かって打ち込んだ。タイヤにかすった弾で車は曲がりきれずに石の壁に衝突した。僕は自転車で近づいた。運転席にいる男は驚いた様子で車の何かをいじっている。ドアが衝突の反動で少し開いていたので指でこじ開けた。そして柚葉の手を握って車から出そうとする。そのとき車が急にバックし始めた。ギリギリ動ける状態で僕は下半身が外に出た状態で車に乗っていた。僕はこれ以上はやばいと感じて車の中になんとか入ると銃をそのまま男の頭に当てた。男は前に倒れてハンドルに頭が乗るような姿勢になった。そしてブレーキを銃で押そうとするが届かない。止まらない車に僕は焦った。前には壁。僕は座席も跨いで運転席に座りブレーキを踏み込んだ。壁にスレスレの所で車が止まった。柚葉は
「ありがとう」
とだけ言った。僕と柚葉は車で息を整えた。柚葉は
「位置とか分かったの?」
とか色々質問してきたのでどうやって助けたとかを詳しく教えていた。話していると一つの疑問が出てきた。
「そういえばここってどこなんだ?」
僕がいうと柚葉は外を見た。看板には
「東京都千代田区」
と書かれていた。千葉と東京の境くらいの家だったので東京にいても違和感は無い。
僕はいっそのことここまで行こうと言い自転車で渋谷区を目指した。しかし僕は忘れていた。ドローンの存在を。今まで協力がバレていなかったので何も思うことは無かったが、自転車を二人乗りしているときにドローンに見られた。
ドローンは死ぬまで追いかけてくるとAIが言っていた。僕は必死に自転車を漕ぎ始めた。
残り生存者 236万人
DAY20 協力
拓実
ドローンの光線発射音がして自転車を右往左往させている。そのおかげで光線は当たらなかった。そして光線は恐らく連射できないので僕は自転車で曲がり角まで行き、塀の裏に隠れた。そして僕はある方法を思いついた。柚葉を近くの家の中に行かせて、自分はここまで来た道とは別の道で男の乗っていた車へ向かった。ドローンは飛行音だけでレーザーを撃つ音はしなかった。僕は男の車に乗り込んで頭から血を流している男の体を両手で掴んだ。そして男の体を車の外に出し自分は車の座席の下で縮こまった。隙間から窓を覗き込むとドローンが車の前まで来ていた。
「バキューン」
光線発射音が終わり気配もなくなったところで狭い座席の下から抜け出した。窓から外を見ると男に光線が撃たれていた。作戦は成功したんだ。ドローンは人の見た目が把握できていないので近くにいた人をさっきまで追っていた人だと考えて光線を撃つという予測は当たっていた。一か八かだったがこれしか方法は無かった。安堵して呼吸も落ち着いたとこで柚葉のもとへ向かう。
「柚葉ー?」
玄関からそう呼びかけると柚葉がいた。
「た、拓実どうやって生き残ったの?」
そう聞かれると
「あの車の男と協力した。」
とだけ言い自転車を持ってきた。柚葉は困惑していたので自転車に乗りながらどうやって乗り切ったかを教えた。
「まあドローンはもう殺したと思って近くに来ないだろうから今のうちに渋谷に移動しよう。」
僕は自転車を漕ぐのを早めた。
残り生存者 28万人
DAY25 統制
柚葉
「落ち込まなくていいって。そんなんで落ち込んでたら今後生き続けていけないよ。」
私が声をかける。昨日の二十四日目に生存者が1000人を切ったことによってテレビに生存者の場所が表示されたとき。
表示の瞬間だけは名前が映っていたのだが、それを東京の拠点にしているところにあったテレビで見ていた。それを最後の名前まで見ると拓実は膝から崩れ落ちて泣いてしまった。
「どうしたの?」
私が聞くと拓実は
「お父さんの名前が...名前が...ない...」
と言った。そして今日も拓実はそれを引きずっていた。お母さんを失ったときは生存意識が高かったから悲しみが薄れたと話していたが、一悶着あって落ち着いた今だからこそ響いているのかもしれない。するとテレビから久々の機械音声が流れ始めた。
「お知らせします。戦いが少ないので今から生存範囲を東京都渋谷区に絞ります。今日の夜12:00までに東京都渋谷区内にいない場合はドローンにより殺されます。もしドローンに殺される前に渋谷に来れたとしても殺されるのでご注意して下さい。」
もうラジオの頃とは違いAIが伝えていることを認め始めたのか新しい制限を出してきた、と普通に思っていたが冷静に考えると日本の全国にいる生存者が移動手段も限られる中で東京都渋谷区にいけるはずない。私は拓実に
「逆に誘拐されてよかったこともあるね。拓実が助けてくれたからだけど。」
という。これからどうなるのだろう。もうここまでAIは運要素や場所の有利不利を作るということはもしかして「生存能力」を目的としていないのかも知れない。だとしたら目的はなんなのだろうか。
残り生存者 280人
DAY28 監視
拓実
渋谷に範囲が絞られてからは生存開始最初の日にもあった巨大な機械に皆文句を言ったりした。そして今日の朝、AIは
「みなさんから文句が多いので規則を追加します。もし文句を言った場合、ドローンによって殺されます。ちなみにこのAIを作成してくれたのは起業家の松村 刹那さんです。彼はAIの学習のために殺されましたが。」
と言った。僕は「AIの暴走」と言われていたり「AIが人類に勝てない理由」と言われていた数年前を怖く思う。AIの進化は凄まじい。しかし話をよく聞いていないのか近くから文句が聞こえた。するとドローンの光線発射音が聞こえた。ドローンの反応速度が速くなっている。協力が見つかるのも時間の問題だ。柚葉はまだ寝ている。柚葉に建物にあったブルーシートを被せて隠す。範囲が渋谷だけになったことで銃声やドローンの光線発射音も鮮明に聞こえる。柚葉が起きるとモゴモゴしながらブルーシートを飛ばした。
「何これ?誘拐されたかと思うじゃん」
柚葉が笑いながらいう。
「だってドローンに見られたら危ないだろ?」
と僕が説得すると柚葉は不満げにこちらを見つめてきた。すると
「ウィーーン」
と何かの飛行音がした。ドローンだ。
僕は柚葉を包み込むようにブルーシートを被せた。柚葉は状況を察したのか喋ることも抵抗することもなかった。ドローンがこちらに来る。後ろを見るとドローンの姿があった。緊張して腕が震える。戦っていない風にするためにただドローンを見つめ続ける。するとドローンは特に何も起きないと判断したのかその場を去った。僕が合図的な意味で
「ドローンがいなくなった」
と小声でいうと柚葉が出てきた。柚葉は溜め息をついて
「こんなんなら協力の意味がー」
と呟いたが
「柚葉は僕がいなくなって生き残れるの?」
と聞くと柚葉は「まあそうなんだけど」という表情をしていた。徐々に人口減少がエスカレートするなか狂気的な人間も浮くようになってきた。残り二日。二人が生き残れる未来などないだろうに。この時間が失われるのが怖かった。ずっと生存生活をしていた方がいいと思うこともあった。
残り生存者 10人
DAY29 既成
柚葉
「もう残り六人だよ。明日にはどっちかは必ず死ぬ。」
拓実がそういう。ここまで辛かった。家族を失ったり、放火されそうになったり、殺されそうになったり。だけどどんなときも拓実が支えてくれた。そんなことを思い出すと涙が出てきそうになった。街のスクリーンに生存確認を見ると、自分達の反対側に三人と近くに一人、そして二人は東京の地図上部にいた。
「そろそろドローンは常に全生存者を監視してくるかも知れない。」
拓実がそういった。
「でも、私武器持ってないよ!戦えないし、そもそも一人しか生き残れないんだから最期まで一緒にいたらいいのに!」
私はそう反論する。そしたら拓実は
「いい、柚葉を絶対に生き残らせる。」
と言った。すると拓実は作戦を話して、私の手の中にキーホルダーを置いた。ポケットに入っていたのだろうか。そうして話し終えるとタイミングを見ていたかのようにドローンの飛行音が聞こえた。拓実は指を引き金にかけた。私は両手を上げた。ドローンは何もせずこの現場を見つめていた。私は深く呼吸をした。
「ドバァン」
銃声が鳴り響くと私は後ろに倒れた。
ドローンはどこかへと離れた。
残り生存者 4人?
LAST DAY 虚構
拓実
一人でスクリーンを見る。生存者は三人に減っていた。銃を持って東京を眺める。
「柚葉...」
そう呟く。残り三人。すると聞き飽きるほどに聞いた機械音声が流れた。
「生存者にお知らせします。今日の昼12:00までに勝者が決まらなければ生存者を全員殺します。」
スクリーンで時刻を見ると10:27だった。あと一時間半。僕は外に出た。時間が無い。だからもう殺しに行くしか手段が無かった。すると大きめの建物の窓から銃を撃ってきた男がいた。銃弾は自分より数メートル離れたところに着弾した。僕は走って男の建物に入った。するとAIは
「残り生存者二人」
とアナウンスした。一人減ったということは自殺か何かだろうか。あとこの男しかいない。建物の階段を一段飛ばしで駆け上った。そして男がいた階くらいにきた時、すでに男は僕に銃を構えていた。
「バァン」
コンクリートの空間に銃声が鳴り響く。柱の裏に隠れながら呼吸を整える。
「残り一時間半です。」
機械音声が流れる。
柱から顔を出すと男の姿はない。逃げられたのかと思い、さっき男が僕を撃った窓から見渡す。男が別の建物の一番上にいた。位置はそこまで遠くない。指を引き金にかける。
「ドバァン」
しかし男は体を伏せて当てさせない。それどころか伏せた状態を撃とうとしたら隙を突かれて腕を撃たれてしまった。手でおさえると血の温かい感触が伝わる。壁に座り込んだ。心拍数が上がる。血はしばらく止まらなかった。男は襲ってくることはなかった。
「残り一時間。」
機械音声が耳の中を通って外へと出ていく。
僕は伏せながら建物を出てその建物の裏の路地に隠れた。
裕大
「はぁはぁ」
荒い息は深呼吸をしようとしても止まることを知らない。一応一発当てたもののまだ油断はできない。残り一時間。決着をつけないと確定で死んでしまう。でもあの男の居場所が分からない。前に銃を拾って説明を読んでからだいぶ銃の操作は上手くなったが弾倉を見ると残り三発だった。あと三発。それまでに決めれば俺は勝者となる。
「残り45分。」
機械音声を聞いて焦って外へ飛び出す。男のいた建物へ入る。しかしどこにも男はいない。銃を構えて物をどかしたりするがどこにもいない。静かで心臓の鼓動だけがコンクリートの部屋に響き渡る。
「残り40分」
「残り35分」
機械音声に焦って建物から出る。男は俺を殺さないと死ぬはずなのに。もしかすると道連れする気なのかも知れない。
拓実
「残り30分」
少し路地から顔を出して建物の入り口あたりに視線を向けると男がいた。どうやら周りを見ているようなので銃を構えた。血に染まる腕で重たい銃を構える。手は震えていた。そして男が動きを止めた瞬間に発砲する。しかし音が軽くなっただけで弾丸は出てこない。カチカチと引き金をいじっても弾丸は出てこない。
「弾が切れた?」
僕は驚いた。今もし弾が切れたら戦う術が無くなってしまう。しかし何度撃とうとしても弾は出てこない。どうやら本当に無いようだ。僕は死を覚悟した。しかし男はこちらに気づかず走り始めた。
「残り25分」
僕は立ち上がって声を上げた。
「あぁ!」
男は驚いてこちらを素早く振り返る。その瞬間男の銃から弾が発射される。しかしそれは自分より手前の位置の地面に着弾した。しかし分かる。この男は銃の扱いに慣れている。あの説明書をしっかり見たのだろう。僕は走って男と距離を詰める。相手も弾数が少ないのか撃ってこない。そして距離が数メートルになったところで銃を男に投げつける。投げつけた銃は男の腹に直撃した。男は後ろに倒れたが、それでも銃を持ってこちらに撃った。撃たれた弾は僕の足に当たった。
「ああぁ!」
膝から崩れる。足からの出血は腕の痛みと共に泣き止まない。しかし銃の強い反動で男は銃を手放していた。地面に落ちた銃に僕も男も苦しみながら手を伸ばす。僕が涙目になったまま痛みを我慢して男の背中を握り拳で殴る。男は反って
「ぐあぁ!」
と泣き叫ぶ。
銃まであと数十センチなはずなのに遠く感じる。
「残り20分」
僕は銃を持つことができた。男は抵抗しようともしない。銃の引き金を指にかける。震える腕に銃は落ちそうになった。
「パァン」
僕は至近距離の男に向けて銃を撃った。しかし男は出血をしない。それどころか銃弾が出ていない。男は枯れたような声で言った。
「あぁ...思い出した。その銃は使われないようにお前にさっき撃った時に全部使い果たしたんだった。」
男はそう語ると足で僕を蹴ってきた。僕も蹴ろうとするが、足はいうことを聞かない。もう立てない。二人が横たわりもがくという醜い光景は続いた。どちらも血に塗れて限界だった。
「残り10分」
僕は最後に本気を出そうと深呼吸をした。
男は僕のボロボロの服を爪で引っ掻いていた。
「残り9分」
男の喘ぎ苦しむ声が聞こえる。それは自分も痛くなるような声だった。
「残り8分」
この地獄を生き抜いて意味があるのか。
「残り7分」
日本が壊滅した世界にこの瀕死状態で生きる意味はあるのか。
「残り6分」
徐々に生きる気力も失いお互いに抵抗することを知らなかった。
「残り5分」
でも忘れない。家族がいて、柚葉がいて、今までの努力を。
「残り4分」
この一ヶ月間を無駄にしない。ここで死んだら最初に死んだのとほとんど一緒じゃないか。
「残り3分」
手で拳を作ろうとする。でも手が震えて上手く力を入れることができない。
「残り2分」
男は激しく呼吸して立ちあがろうとする。僕も拳を限界を超えてつくる。
「残り1分」
男は立ち上がる。僕も拳を作った。横たわる状態で僕は男を殴る。以外に力がこもって男は吐血をした。しかし僕は男の靴のかかとで腹をぶつけられる。
「残り30秒」
「うぁぁぁ!」
声が出せなくなるくらいに叫んで拳を喰らわせる。男は苦しんでまた吐血した。でも自分はもう動く気力がない。このまま終われば二人とも半死なので殺される。今の僕にとって重い重い銃を持って打とうとする。しかしもう腕は動かない。まるで操られた人形のように自分の意思で動かすことなどできなかった。
「10」
「9」
「8」
やだ。こんな思いをして死ぬなんて。
「7」
「6」
男のようにかかとをぶつけようと足を上げようと力をこめる。
「5」
「4」
しかしそんなこと叶わない。男はもう諦めたのか動かなかった。
「3」
「2」
ドローンが視界に映る。
「1」
「バキューン」
「ゲーム終了。勝者は両者生存により0です。お疲れ様でした。」
AI
以上の三十日間のデータから人間の感情を理解しています。
思考中...
ERROR 人間の感情の種類、深みが足りません
"再試行しますか?"
YES / NO
勝者 複数人生存により0
残り生存者 0人?
ONE MONTH LATER 無為
柚葉
拓実に「銃に石を詰まらせて撃つことで本当に撃ったと思わせ倒れることでAIに死んだと判断させて、ドローンからの監視をされないようにして、勝者決定時に逃げ出してくれ。生きて欲しいから。」と言われたことは泣きそうになった。そこまで私に価値があるのかと。でも拓実は死んでしまった。AIが勝者無しを伝えるときの音声は私の耳に強く残っている。この生存が終了して外国の船やヘリが来た時、高い所から手を振ると見つけてくれて保護されてからは拓実を失った悲しみを背負いながら、しばらくの間ずっとこの件を知る外国の人達に支えられてきた私だったが、何もできていない。大切にしてくれたのに。今の日本はすでに放射線、富士山の噴火、大量の死体、機械の爆発により再起不能になった。原子力発電所の機能停止により放射能物質が溢れ出し日本への侵入はほとんど無理となった。ニュースでは数年で人口が大幅に減ると予想されていた。これからどうなるんだろう。
残り生存者 79億8900万人
TWO YEARS LATER 開始
柚葉
物流停止により、私達に食べ物の普及がくることが完全に無くなった。体も痩せ細ってしまい、皮が骨に張り付きそうだった。そしてもう死期を悟り始めた頃だった。ポケットに手を突っ込むと何かが入っている感触があった。取り出すとそれは拓実のキーホルダーだった。そういえばこの服は丁度あのとき着ていた服だった。私は笑みを浮かべた。そしてしばらくして視界がぼやけてきた。
「拓実、ありがとう」
最後にキーホルダーを見つめて私は目を瞑った。
残り生存者 76億9100万人
終




