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竜障害  作者: 敷知遠江守
第二章 離合 地一級編

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第13話 処分と対立

「今年中止が検討されていた『呉越グランプリ』は、これを正式に中止とする事にいたしました。代わって、ライン共和国連邦の『バーデン大障害』をグランプリとして開催していただく事になりました」


 三月になり、突然国際竜障害連盟が会見を開き、モハメド・ビン・ジェザイルリ会長が報道に向けてそう発言した。


 会長から告げられた内容は非常に衝撃的であった。

 まだ収賄事件の全体像の把握は終わってはいない。わかっている範囲でいうと、前身の大金竜障害協会時代に国際竜障害連盟に加入した事が、そもそも賄賂と美人計によるものであった。本来なら規約に照らし合わせば除名が順当。だが大金国とは違う協会であるという主張を汲み、今回の件だけで鑑みて、向こう十年、呉越国の参加資格を剥奪するという裁定となった。


 その後会長はグランプリの制度の変更を示唆した。

 今年のライングランプリはあくまで急場の代行にすぎない。現在連盟では、設計そのものを変えてしまおうという事で話し合いが行われている。以前から計画だけは練られており、ある程度の内容はもう決定している。だが、調整、その他、細々とした事が定まっておらず、正式に発表できるまで、まだ半年程度かかってしまうだろうという事であった。


 その会見の翌日、呉越国は国際竜障害連盟へ異議申し立てを行った。


「なぜ我々だけが問題視されねばならないのか? 我々は瑞穂から違法な竜を買わされた立場であり、被害者である。追放処分は適当では無く、むしろ瑞穂が追放されるべきである」


 だが虚しくも、その訴えは国際竜障害連盟に無視される事になった。呉越国は周辺諸国に賛同を呼びかけて、瑞穂皇国へ抗議。


「呉越国への誹謗を行う事で国際的な地位を得ようとするなど、瑞穂はまるで溝鼠のような汚らわしい国だ。少しでも恥じる心があるのなら、明日にでも国際竜障害連盟を脱退せよ!」


 その抗議に瑞穂の一部の報道が賛同するも、瑞穂皇国の木曾総理大臣は無視。国会で野党の議員からこの件を議題に出されても、「他国から内政干渉を受けるいわれは無い」と一蹴した。逆に質問した野党議員が身辺調査を受け、呉越国から違法な献金を受け取っていた事が発覚。議員辞職させられるという事態に。


 それからも呉越国は連日、何だかんだと口汚く瑞穂を罵ってきた。だが逆に、パルサ、ペヨーテ、ブリタニスといった竜障害協会から「まずは自分のやった事を顧みて反省すべき」「竜障害を口実に瑞穂批判を政府が行うのはいかがなものかと思う」「批判をするにしてもあまりに口汚く聞くに堪えない」と、散々な声明を出されてしまった。



 それで事は収まるかに見えた。

 ジェザイルリ会長の会見から三週間後、国際竜障害連盟の会合を緊急で開く事になった。いくつかの国の協会は事前打ち合わせがあるという事で一日前の呼び出しとなっている。瑞穂もそのうちの一国であった。会場はペヨーテ。なので当然、担当者は飛行機で向かう事になった。飛行機には旅行客も大勢乗っている。その旅客機が太平洋のど真ん中で消息不明となってしまったのだった。


 途中、瑞穂の管制空域までは通信が取れていた。途中からペヨーテの管制空域に入るのだが、まるでその切り替わりを狙っていたかのような地点で消息が途絶えてしまった。


 瑞穂から報告を受けたペヨーテの海軍は、捜索のために小型船団と航空母艦を含む艦隊を派遣。瑞穂海軍と合同で捜索を開始。その日のうちに、ミッドウェー島の西の海域で破片の一部を発見。

 瑞穂では登場名簿が徹底的に調べられ、一部の乗客が偽名、及び偽造旅券で搭乗した事が判明。


 さらに数日間に及ぶ捜索により飛行記録器が発見され、航空母艦の設備で解析される事になった。これにより、旅客機は一部の乗客から乗っ取りを受けていた事が判明。さらにペヨーテの捜査により、乗っ取り犯は呉越国の工作員である事が判明。


 瑞穂、ペヨーテ両国の報告により、国際竜障害連盟は、呉越国の追放を十年から三十年に延長。さらに破壊工作対応のため、グランプリ開催期間中は呉越国籍の人物の競竜場への立ち入りを正式に排除すると発表。ただし、これはまだ事故発生から一月の途中報告による処分にすぎず、今後の調査の結果次第では最終的な処分はどうなるかわからないと付け加えた。


 ◇◇◇


 二月に入り、岡山競竜場ではますます雪の日が増えている。諏訪厩舎にとって非常に好運な事に、二月の四戦のうち三戦が雪。唯一の曇りは八着と敗戦してしまったが、残りの三戦は五着、六着、四着。準特初参戦にしては上々の成績だっただろう。


 『山陽賞』の成績を見て、会派から電話がかかってきた。「では失礼します」と言って受話器を置いた諏訪は「勝手な事を言いやがって」と電話に向かって悪態をついた。このまま準特に出続けてみてはどうか、もしくは特三に挑戦しながら準特に出てはどうだろうかと言われたのだそうだ。


「雪で競争の流れが遅いから、辛うじて勝負になっているだけだってのに。何を舞い上がってやがるんだか」

「本人を前にこんな事言うのもなんですけど、今のうちの厩舎の成績は雑賀君の力がかなり大きいですからね。今、調子に乗って格上の重賞に出たって、雑賀君が無理する事になるだけですよ」

「全くだ。それでもし雑賀が怪我でもしてみろ。うちの厩舎はまた足踏みだ。なんでそんな簡単な事が会派の奴らはわからないかねえ」


 諏訪と高遠が二人で雑賀の前でそう言い合った。


「じゃあ先生、来月は残って『姫路特別』ですか?」


 そうたずねた雑賀を、諏訪と高遠が同時に見る。その後、諏訪は執務机の横に貼ってある開催予定表に視線を移した。


「今節良かったからな。確かに次節も準特に出ても良い気はするけど、二節の準特は南国だけだからなあ。それよりは、ここで平特に出て、三節で鈴鹿の『東海賞』が良いかな」


 それを聞き、高遠は「そんなところでしょう」と返答していたが、雑賀は全く違う事を考えていた。これでまた暫く春香と頻繁に会えると。

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