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竜障害  作者: 敷知遠江守
第二章 離合 地一級編

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第2話 遊ぼう!

「大丈夫、ちょっと厠に行くだけだから」

「……いやや」

「困ったなあ。じゃあ厠の前まで一緒に行こう。で、外で待っててよ」


 そう言って二人で公衆の厠へ行き、春香には外で待っててもらって中に入った。

 小便をしながら雑賀は、思った以上に春香の酒癖が悪い事に驚いていた。もう二度と酒を呑ますのは止めようなんて考えていた。


 厠から出ると春香がいない。焦って春香の携帯電話に電話を入れると、女性用の厠から着信音が聞こえる。ほっと一安心し外で待っていると、肩掛け鞄を手にとぼとぼという感じで春香が厠から出てきた。顔はまだ酔って赤いまま。目は少し虚ろ。


「そろそろ遅くなっちゃったから帰ろうか」

「なんで? なんでそんな事言うん? 私と一緒にいるの嫌なん?」

「いや、そういう事じゃなくてね」

「そしたら、どっか遊びに行こうよ」


 ニカッと笑う春奈の無垢な顔に思わずドキリとしてしまう。だが、雑賀は一瞬で冷静になった。


「ねえ、春香ちゃん。さっきさ、お酒呑まないって言ってたけど、もしかして誰かに呑むなって言われた?」

「うんとね、最初はお母さん。お父さんにも言われたし、大学入って友達にも言われたんよ。それがどうしたん?」

「その時、なんでダメなのかって言われた?」

「ん……わからへん」


 絶対みんな理由を言ったはず。だとすると、酒が抜けたら記憶も抜けていく感じなのだろう。それにしても、まさかこんなに酒癖が悪いだなんて。


「ねえ、どこ行く? そうや! うち来て遊ぼうよ。新しい遊技機買うたんよ! 一緒に遊ぼっ!」


 これまで雑賀は、なるべく春香の家の事を聞かないようにしていた。出会いが出会いだったので、なるべく性行為を想定させるような事は避けていた。春香の方もどこかあの時の事が心の傷になっているらしく、住んでいるところの話はしなかった。


 どうやら、酒が入った事で、そのあたりの事がどうでも良くなってしまっているらしい。ただ、このまま一人で帰れと言っても、絶対に駄々をこねるだろうし、出会った時のように変な奴らに絡まれてでもしたら、それこそ一大事。

 雑賀は観念して、春香を家に送って行く事になった。



 岡山駅から一駅行った岡山総合運動場駅、そこで降りて運動公園の方に向かい、何本か通りを外れた所、そこで春香は立ち止まった。そこはおよそ一般の大学生が住むような場所ではない、非常に家賃の高そうな高層の建築物。少なくとも雑賀がここに立っている事は場違い感しか感じない。

 早く早くと雑賀の手を引く春香。先ほどまでの千鳥足ではなく、背筋の伸びたいつもの美しい歩様に戻っている。だが雑賀の足取りは非常に重かった。


 何やら操作盤で操作をしないと、そもそも建物そのものに入れないという厳重な防犯体制。受付の窓口にすら人がいない競竜場の寮とは大違い。自動昇降機で上の階へ向かい、その中の一室に到着。表札は無い。恐らく女性が一人で住んでいるという事を知られないようにという防犯意識なのだろう。ただ、それはそれで、本当にここが春香の部屋なのかどうか訝しんでしまう。

 ……もしかして、両親と一緒に住んでいる? だとすると、予期せぬ事態に陥る可能性が大。急に帰りたいという思いが強く湧き上がってくる。


「そんなとこで何しとんの? はよ入って」


 雑賀の腕をぐいっと引き寄せ、春香は玄関の扉を閉めた。


 パチパチと次々に部屋に電気を灯していく春香。真っ暗だった部屋が徐々にその全貌を明らかにしていく。最初に抱いた感想は『滅茶苦茶高そうな部屋』であった。そんな高そうな部屋なのに驚くほど物が無い。玄関の先は両脇に扉がある。恐らくは厠と風呂。その先に台所。その先が寝室兼居間。そのどこからも春香の香りが漂ってくる。

 台所は非常に綺麗にしてあり、それなりに自炊している雰囲気もある。


「ねえ、重さん、何しとんの? あんま台所をじろじろ見んといてよ。恥ずかしいやん」

「あ、ごめ……んっっっ!」


 ふと春香の方見ると、上着を脱いでしまっており、何故か服まで脱いでしまっており、上半身下着姿であった。


「ちょっ! 何してんだよ。服を着ろよ」

「えぇぇ。だって、暖房入れたから暑いんやもん」

「良いから着なさい! 酒が入ってるから暑いだけで、冷めたら風邪ひくぞ」


 口を尖らせて渋々という感じで服を着る春香。よく見るとスカートのジッパーが下げられて下着が見えてしまっている。その状態で遊技機で遊ぼうと言ってごそごそと準備をするものだから、非常に目のやり場に困ってしまう。


 その後も、一緒に遊技機で遊ぶのだが、徐々にお酒が体内で消化されてきたようで、春香は頻繁に厠に行った。しかも帰ってくる都度、服が乱れている。

 雑賀だって聖人君子というわけではない。体が勝手に反応してしまう。ベタベタと体をくっつけてくる春香に、雑賀も徐々に肩を抱いたり、抱きしめたりするように。


 そして、気が付いたら遊技機などそっちのけで、唇を触れさせてしまっていた。

 そこからはもう、お互い何か拘束でも解くかのように服を脱ぎ、布団に入り……


 ……気が付いたら朝を迎えてしまっていた。


 いつも朝が早いせいで、先に目が覚めたのは雑賀の方であった。

 その雑賀に抱き付いて、幸せそうな顔で寝息を立てる春香。息が胸にかかって、くすぐったい。さらに髪も胸に触れて、それもくすぐったい。そして腕は長時間枕にされていたせいで痺れている。


 ……本当にこれで良かったのだろうか?


 春香の顔を見ながら雑賀は極めて冷静にそんな事を思っていた。

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