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7話【どうして何も出来ないの?】




「さーてと、おっさんがこの子見といてよ。あとなんか臭うから多分オムツも変えないとだね、よろしく」



タケちゃんにローズマリーを手渡してアルフォンスさんにポイとまかせると、やっぱりオムツが気持ち悪いのかローズマリーは大泣きし始めた。



「よ、よろしくて!?どないしたら……」


「ねぇ、ほんとに本気で言ってんの?さっきから思ってたけどあんた何でそんなになんも出来ないの?」


「あ、当たり前やろ!!男がこないなことする必要あれへ……」


「ぶぶ!!ばっぶ!!」




•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♬




ローズマリーがアルフォンスさんに加勢するように声を上げた途端、またすかさずフォミマの入店音が何処からか鳴り響いた。



「え?またフォミマが聞こえるよ?」


「よーわからんけど、多分チートでアタシ達が無敵だからこの国にコンビニでもあんのかもね」


「タケちゃん何それ、何の話?」


「やろう系は無料だからね。いやー有り得ねぇ話ばっかだなとは思ってたけど読んでたのも無駄じゃないわ。これなら順応できる」


「ねえ、だからそれは何の話なの?」



タケちゃんの訳の分からない話を聞いて呆れていると、抱き心地が悪いのか怯えるように泣き出したローズマリーをアルフォンスさんはオロオロとみっともなくあかんあかんと必死に説得している。


バカね……赤ちゃんにお願いしたところで泣き止むわけないのに。


口をへの字に曲げて泣くのを我慢し始めるその姿を見たら、赤ちゃんは泣くのが仕事なのにと可哀想になってきちゃった。


もしここがベルハナと同じ世界観なのだとしたら多分王妃様やオスカールは王族や貴族で、このアルフォンスさんですらここの世界ではまあまあ偉い立ち位置なんだと思う。


それならアルフォンスさんが赤ちゃんの世話をしたことがないのも当然だけど、だからといってタケちゃんにこの道理は通らないしなぁ……。


それによく考えたら文字は全然読めなかったけれど、話す言葉は幸いにも何故か同じ日本語。


言葉は通じるし会話に困ることもない、それにこのアルフォンスさんだって私達の父親に比べたらそこまで悪い人でもなさそうに見える。


何よりせっかくあの父親から離れられたのだから、束の間の休息と思ってここの世界を楽しむのも悪くないのかもしれない。


結局私もタケちゃんと同じく割と簡単に順応していて、自分自身に少し笑ってしまった。



「使えないおっさんだなほんと……とりあえずあんたは地下の冷蔵室の場所だけ教えてよ。わかちゃんアタシが料理してる間こいつと一緒にローズマリー見といて」


「お手伝いしますよ。一緒に頑張りましょう」


ローズマリーを抱きしめ実に不安そうなアルフォンスさんを見て私は背中を叩いて励ました。





____________


________




それから私達はアルフォンスさんに地下の冷蔵室を教えて貰ったんだけど、何とキッチンの奥にもう1つ扉があってそこから階段をかなり降りていった所にあった。


こんな訳の分からない場所でタケちゃん1人に行かせるわけにもいかず、人質代わりに私が大泣きするローズマリーを抱いてアルフォンスさんと一緒に4人で食材を確かめがてら取りに行った。


そして現在、タケちゃんが料理を作り始めてから30分くらい経過したんだけど……。



「……か、堪忍な」


「まぁ、いいですけど……アルフォンスさん……」


「ほんとに役立たねぇな!!わかちゃん!!役に立たないおっさんをそんな上等な名前で呼ぶ必要なんかないよ!!省略しちまえ!!おっさんお前は今日からアルだよ!!」


「あ、アル!?愛称で___」


「お前が役に立つようになったら元の名前で呼んでやるわ!!早く料理手伝えよ!」



………怒り狂ってる時のタケちゃんの迫力に逆らえる人はあまりいない。


どこぞの湯屋の婆さんのように目を釣りあげて怒るタケちゃんは怖いったらありゃしない。


私も最初はアルフォンスさんって呼んでいたけれど、気を使うのももう馬鹿らしくてタケちゃんと同じアルさんと省略させて貰った。


アルさんは慌てて向こうへ手伝いにいったけど本当に色々と酷かった。


まずアルさんにローズマリーを抱っこして貰ったはいいけどいくら抱き方を教えてもどうにも不自然で、その不安定さにお腹に力が入ったのかローズマリーはさっき食べた離乳食を少し吐き戻してしまった。


ローズマリーの服にもアルさんの肩にも結構かかっちゃって、ローズマリーの着替えは何処かと聞けば口を噤んで分からないの一点張り。


仕方がないから続き間の保育室みたいな場所で一旦ベビーベッドに寝かせてローズマリーの服を脱がして、ついでにオムツも替えようとしたんたけとアルさんはオムツの場所も分からない。


少し苛立ちながらもここで料理人の女性が育児もしていたなら何かあるはずでしょう、と色んな棚をひっくり返してようやく布オムツを見つけた。


もしかしたらローズマリーのサイズくらいの服もあるかもしれないと思って、アルさんに探す間にオムツを変えといてと伝えれば血相を変えて首を横に振られた。



「あかん、あかん!俺にはでけへんって!」



その間ローズマリーはオムツが気持ち悪いのかずっと泣き続けていた。


しかも何故かフォミマの入店音まで同時にずっと鳴り続けていて、アルさんの叫び声とローズマリーの泣き声も加わってうるさくて気が狂いそうだった。



「と、尊い御方やから!触れへんって!」



やりたくないからそう言ってるのかと疑っていたけど、どうやらオムツを変えれない理由はそれらしい。


まぁ確かに赤ちゃんと言えどもローズマリーは王族なんだから尊い御方の尊い箇所を見るのはダメな気がした。


結局ローズマリー関係はアルさんに頼んだところで何も出来ないみたいで、聞き耳立てていたイライラMAXのタケちゃんが怒り狂って呼び出したのが今なのよね。



「待たせてごめんねー、気持ち悪かったよねー」



疲れ果ててべそべそと泣いてるローズマリーのオムツは何とか私が変えてみたけれどやっぱり布オムツなんて使ったことがないから難しい。


漏れなきゃいいんでしょとオムツは何とか無事に変えてみたけどなんか、こう……フォルムが……。


ローズマリーの腰からお尻にかけてぐるぐるに巻いたけせいか、蜂みたいな出っ張ったもこもこのフォルムになってしまった。


結局着替えも見当たらなくて、とりあえずオムツ姿でちょこんと座ってるけど……タケちゃんの言う通りしっかり首も座っていてどっしりと重い身体は風格すら感じる。



「王族の赤ちゃんだからって、良いもんばっか食べさせて貰ってたの?」



出すものを出してスッキリしたのかローズマリーはようやく泣き止んで何となく呆けている。


後でオムツを洗わないとねと、とりあえず置いてあったバケツの中に汚れ物をいれておく。


それから動くと危ないのでサークルにローズマリーを移動させてさっき見つけた裁縫道具の箱を開けた。



「この布を縫って繋げておんぶ紐作っちゃおう」



オムツの布は山ほどあるし、今から私も料理を手伝うなら両手が空いていた方がいい。


それにこんなに糸があるなら布さえあれば服も作れるかも……と私は気持ちを躍らせながら急いで縫い始めた。




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