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とある春の日
「ね〜、紫苑じい〜!この間の話の続きして!紫苑じいが妖精さんに会った話!」
声のする方を見ると、可愛らしい髪飾りをつけた女の子が靴を脱ぐやいなやこちらに向かって走ってくる。
「わかったわかった。走って転んじゃったらいたいいたいだぞ〜」
「は〜い」
注意され走るのを大人しくやめるもののその唇はこころなしかとんがっておりとても可愛らしい。
「あ〜アヒルさんがここにいるぞ〜!」
「違うもん!」
「ははは。どこまで話したんだったかな?」
「んっとね、妖精さんに会ったところまで!」
「ああ、そうだった」
外を見ると、七分咲きほどになり薄桜色の花びらをのぞかせる桜たちが見えた。そう。あの日も桜がようやく白く染まり始めた頃で、こんなのどかな日差しの日だった。あの日は確か、特に何もすることがなくて暇だったので桜でも見に行ってにようかと思ったのだ。そこで、君に出会った。