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1話 全ての始まり

 今日、僕は住む世界が変わった。




 椿は、いつも通り部活動をこなして高校から帰宅していた。


 生粋のオタクだったごく普通の男子高校生、和智椿(わち⠀つばき)は、ラノベを読みながらのらりくらりと帰路についていた。十七歳である。




「最近やりたいこととかないなぁ。学校生活に不満はないんだけど面白みにかけるというか。なんかいい事ないかなぁ」




 誰に言うでもなく、椿は独り言を呟いた。誰かに話しかけるというよりは、自分に言い聞かせていたと表現する方が近いのかもしれない。




「なんか眩しい――!?」




 椿は本を読むために下げていた視線の先の地面に、白い紋様のようなものが浮かび上がっているのが写った。すると、椿の視界を光が包み込んだ!




 その時の椿に恐怖心が無かったと言えば嘘になるだろう。




 白く塗りつぶされた世界に足を踏み入れたことで、椿は何も分からなくなってしまった。




 だが同時に、椿は優しく包まれているような気分になった。なぜそう感じたのかは、椿自身も分かってない。




  そして、謎の懐かしさにより動転していた気を落ち着かせた椿は思う。




(どうせなら異世界転移しろ! 頼む!)




 現在の状況を見て、椿自身の身になにか普通じゃないことが起きているのは明らかだった。




 これからなにか起こるなら、異世界転移がいいなぁ。それが、椿の考えである。




 そして、謎の浮遊感に襲われるまま椿は意識を失った。そして、目を覚ました時には、




「ここにいた」




 声の主、椿は晴れやかな表情でそう呟いた。




「不審な点が多すぎる。急な光、今の自分の状況――」




 言ってることこそは不安な感情が含まれている椿だが、実際はそんなことは無かった。




「こ……これって異世界転移だよね! やったぁぁぁぁあ――!」




 生粋のオタクである椿は、異世界転生モノが特に大好きであり、自分もこうだったらと、妄想にふけっていたのである。そんな妄想が実際に起こったら、不安な感情など些細なもので、椿は目の前の異世界転生にワクワクしていた。




「でも死んでもいないのになんで急に転移したんだろ? まぁわかんないし考えたらキリないな! おっ! あっちの方に街がある! いいねぇ王道って感じだねぇ!」 




 興奮を抑えきれない気持ちの椿が、転生した場所の草原から街へと走りだした。




「おおぉ! でっけぇ! 地球で言うと中世ヨーロッパって感じかなぁ! あっ! あれってまさか……エルフか!? おいおい最高かよ」




 街に着いた椿は、街の雰囲気を堪能していた。中世ヨーロッパ風の建造物が所狭しと並んでいる。歩いている人々は、日本で言うならエルフやドワーフなどの、様々な見た目をしていた。




「異世界転生なら……まぁ定番は冒険者ギルドだよな。お金とか言語とか大丈夫かな? ――まぁ、ノリでなんとかなるだろ!」




 オタクながら非常に脳天気なその性格は、行動力は高いものの計画性が皆無であり、一長一短が激しすぎる性格であった。




「すっげぇ! でっかい! ここが冒険者ギルドかぁ!」




 道端の商人に場所を教えてもらい、椿は冒険者ギルドに来た。言語については…何故か話せるようだった。




「おいそこのガキ。ここはテメェみていなひよっこが来るところじゃないぜ」




 四十代ほどの、いかにも荒くれ者の冒険者という風貌の男に絡まれる。




「俺は今日から冒険者になりに来たのさ。あんたのようになる為にな!」




 男子高校生である椿は、お決まりが大好きであり、強面の威圧感のある質問に、ノリノリで答えていた。




 そんな回答に強面冒険者は、目を鋭くしてこう答えた。




「お前はこの俺様に説明役をしろって言うのか?…冒険者登録はあっちだぜ。金はあるかい? ないなら未来の英雄の為に貸してやろうじゃねぇか」




 ――いい人だったらしい。


 椿は強面冒険者からお金をもらい、教えてもらった通りに冒険者登録のブースへ赴き、椿はギルド職員へ言い放った。




「冒険者登録をしたい。頼めるか?」




 椿の口調が完全に変わってしまっているのは興奮からか、キャラ変からか。




「はい! かしこまりました! こちらの水晶に手を触れてください! 二十秒ほど触れ続けるとステータスプレートが作成されます!」




 と、ギルド職員は話を続ける。




「ステータスプレートに表示されるのは、名前、年齢、性別、レベル、その他ステータス、スキル、初期に覚えているなどです。




疑問は多いかと思いますが、細かい説明は後々で大丈夫なので省略します。それでは早速、水晶に手を触れてみてください!」




(ここで、俺の秘められた力とかとてつもない能力に目覚めてギルド中から歓声が上がるヤツだぁ!)




 椿はウキウキしながら水晶に手を置いた。




「ワチ ツバキさんですね。ステータスの方は……えぇっ!? 魔力が平均の十倍はありますよ!? これは物凄い才能ですね!」




 椿がギルドの人達からの視線を受ける。もちろんドヤ顔で振り返る。




「あれ? レベルが記載されていない? 誰でもレベル一から始まるはずなのに? スキルの方は……ひとつも覚えていない!? こんなことは初めてです。ま……まぁ、冒険者以外にも色々稼ぐ方法はありますので――」




 ギルド職員が椿へ絶望の言葉を伝える。




 どんなに魔力が高くても、魔法が使えなかったら無意味である。




「……これって俺の異世界転移無双、詰んだ…?」




 ドヤ顔を羞恥に染めながら、椿は呟く。




「あれっ? ステータスプレートの、【記憶】ってなんだ?」




 椿は謎の文字を発見し、ギルド職員にたずねる。




「私もそのようなスキルは見たことがありません。まぁ、何事も初めてはありますし、何かあったら報告お願いしますね! それでは頑張ってください!」




 椿は半強制的に話を終わらせたギルド職員に礼を言い、情報収集を再開する。




「ギルドの職員の対応が想像してたより雑だったな…【記憶】についてなにか知ってる人は居ないかな。あと、ここ周辺の歴史とか地図とか、国はどのくらいあるのかとかも知りたいなぁ。この世界の常識も学んでおきたい」




 意外と細かいことまで考えている椿は、周辺の人に色々なことをたずね、この世界の常識やその他細かいことを理解した。




 この世界の名前は、ラウタージュ。




 千二百年前の天頂戦争と呼ばれる全世界を巻き込んだ大戦争により、平和だった一つの国は五つに分断されたと言う。




 力こそパワーの精神で、いちばん強い獣人が王となったクラチャ国。




 過去に魔王が統治していて、今は魔王の幹部が治めている、他の四つの国と敵対している国民全員が魔族のヤーフ国。




 国として成立していること自体奇跡としか言いようがなく、統治者もいない無法地帯と化しているルノヒリ国。




 国全体が宗教団体であり、ソニラ神という神を崇めている、謎が多いソニラル国。




 冒険者の国として栄え、始まりの国として知られるドルミラ国。




 そして、この世界、ラウタージュの人間は、四種類に分けられる。




 魔族、エルフ、獣人、アリバ。




 それぞれに特徴があり、魔族は魔力が無くなると死んでしまうが耐久性が高い。




 エルフは魔法が使えない代わりに感覚が鋭く、肉弾戦が強い。




 獣人は肉弾戦が弱い代わりに強力な魔法を使うことができる。




 アリバはなにか一つ秀でた能力はないが、全てを万能にこなせる。




 アリバとは、地球の人間のラウタージュ版の呼び方である。




「なんかおかしいよな。エルフって普通魔法得意だよなぁ。獣人は魔法使えないよなぁ。日本での常識は捨てないとダメだな」




 日本との若干のズレを感じつつ、椿は呟いた。




(おかしいのはこの後なんだよなぁ)




 今椿がいる冒険者の国、ドルミラ国は、はじまりの国と称される割に、酷い立地だった。




 ドルミラ国は、国を魔王がいたヤーフ国に囲まれているらしい。話を聞いた限りでは、魔王がとにかく優秀だそうだ。




 魔王は五十年前、ドルミラ国から一番遠くにあったヤーフ国の首都を、ドミルラ国の隣へと動かしたらしい。




 理由は明かされていないらしいが、椿は大体の予想がついていた。




(これ絶対若い芽を摘むって事だろ! 初心者をいきなり詰ませやがって! 魔王絶対性格悪いわ! 友達いなかっただろ……!)




 魔王を罵る椿であったが、魔王は十七年前に謎の失踪を遂げたらしく、ラウタージュでは十七年間魔王の姿を見た者は居ないという。




「絶対この世界で目立ってチヤホヤされてやる! ついでにドルミラ国を詰ませた魔王も倒す! あとそうだな……謎の【記憶】スキルを解明しよう!」




 椿はラウタージュについて理解し、この世界での目標を叫ぶのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして。 読ませていただきました。 謎のスキルの存在が気になります。 きっと面白い展開となるのでしょうね。 これからも応援いたします。
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