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80.チーム決めと要求

 「それじゃ、チームごとに分けようと思うんだが、何か意見はあるかな?」


 ライトが全員に聞こえるように言うが、当然誰も意見なんて出さない。

 ライトのやり方が常識的だからだろう。


 俺も調べていたが、やはり細々としたルール的な感じなのは神楽に頼って正解だ。

 愛梨のレイド経験は攻略だけなので、このようなレイドイベントは経験がない。


 だから、何かを聞く事は出来ないでいたのだ。


 「それじゃ、各々に用意したチームリストを送るから、それを確認してくれ」


 ライトが半透明の板を操作して数秒後、俺の目の前に同様の半透明のパネルが現れる。

 そこにはチームメンバーと役割、大まかな立ち回りが書いてあった。


 「あの短時間で⋯⋯経験者は伊達じゃないな」


 俺のメンバーは愛梨と神楽だけだった。

 主に近接アタッカーAとして、メイン火力の役割らしい。

 指示の時にはアタッカーA班となるらしい。


 「日陰はモンスターを召喚して向かわせる⋯⋯だけしか書いてないね」


 ちなみにメアの事は言ってない。

 しかし、特に疑問を持たれる事はなかった。

 注目はされてるけどね。


 俺の指示に書かれた内容は分かりやすく、俺自身の戦力ではなくモンスターの戦力に期待しているのだ。

 愛梨のサポートとも書いてあるので、俺の役割はそっちだ。

 愛梨は高火力のメインアタッカーであり、神楽も同様だ。


 俺達と同じ班に加えたのは、純粋な仲良しって判断だろう。

 神楽は俺達以外にこの場で親しい知り合いは居ないらしく、他の人と組んでも意味が無いと判断したらしい。

 さらに言えば、神楽は魔法士の中でも特異であり、強力なので組めない可能性もある。


 ライトは優しい人なのか、それとも憶測による結果なのか、俺に他の人にモンスターカードを譲れとは言ってなかった。

 ふむ、大体の内容は理解した。


 とにかく攻めろ⋯⋯ざっくり言えばそう言うチームだ。

 細かく指示を出すのは、戦場でライトが行うのだろう。

 そのための場所でもここはあるからな。


 さて、それが終わったら配置と指揮や連携の練習に入ると思うのだが、挙手する人が現れる。


 そりゃあ、出るよね。

 多分、俺が俺以外の人だった場合、同じような事を思ったし行動すると思う。

 勝率が格段に上がるんだ。やらない訳がない。


 「ちょっと良いか?」


 「なにかな?」


 「いや、俺が用があるのは日陰なんだが、モンスターカード一級を全員に配ってくれないか? その方が勝率が上がると思うんだよ」


 ほれ。


 しゃーない。

 用意していた文章でも読み上げて、丁重にお断りしようでは無いか。


 「えっと⋯⋯」


 「それは違うよ」


 ライトさん?


 なんで君が止めるのかと、すごく疑問にはなるのだが、まぁ静観する事にしよう。


 「確かに、その方が勝率は上がるだろうけど、いきなり他人から借りたモンスターカードを上手く操る事は出来ない」


 「そんな訳⋯⋯」


 「実際問題、日陰さんの夏休み企画で理由は分からないけど、モンスターカードを渡して召喚させていただろ? その時にすぐに使えていたかな?」


 ら、ライトさん。

 さすがと言わざる負えない程に優秀な人だった。


 なぜなら、これですぐには理解出来ずに使えないって証明されたんだから。

 俺の事を知っている人が、あのライブを見ていない可能性は限りなく低いと思われる。

 バズってるしね。


 そこで他人がモンスターカードを使っても、すぐには性能が理解出来ずに使えないと証明された。

 その場合どうするか?


 動画でやった事だ。

 俺が使い方を教える、或いは動画のように俺が命令を下す。


 その場合、今回と同様の形となる。

 俺が大量のモンスターに指揮を出さないといけなくなり、そこでも班分けをしないといけないのだ。


 しかも、モンスターがグループを理解するかも分からない。

 ま、理解するんだけど、そんな常識は世の中に無いので黙っておく。


 だから、俺がいちいちこのモンスターのスキルはなになにって伝える必要がある。

 それを使用者は覚えないといけない。


 簡単に言えば、時間が無駄にかかるのだ。

 そんな非効率な方法を取るなら、ユーザー同士の連携を高めた方が有意義である。


 「だったら、一人一枚程度なら良いだろ」


 そんな数があると言う前提を止めていただきたい。

 あるけどね。


 「それでも教える事には変わりない」


 もしもライトの中でメイが入っているなら、優秀と言ったのを撤回しないといけない。

 なぜなら、メイの紙装甲は既に考察されて確定事項のようなモノになっているからだ。

 だと言うのにメイに頼ろうとするなら、情報などに劣る部分になる。


 「でもよ、モンスターなら殆ど同じだろ」


 同じ⋯⋯何か引っ掛かりを覚える。


 そういや、モンスターは召喚を望んでいる可能性があるんだよな。

 そして、各々にストーリーが存在する訳だ。


 同じ⋯⋯じゃないだろ。

 そうだよ。

 俺のガチャで出るモンスターは個々で違うんだ。同じじゃない。


 たとえ役割が同じでも中身は全くの別物なのだ。

 だけど、それを俺の口から言える事じゃない、言う事でもない。


 そんなのは普通はありえない事であり、それによって生まれる疑問は今は邪魔になるだけだ。


 「た、確かに。似たようなモノだったら大方同じだし、楽になるんじゃないか? 同じ役割のモンスターカードがあれば、同じように動けるし、二倍の戦力だ」


 「二倍どころじゃない。一級なら三倍はくだらないぞ!」


 同調する人が現れた。


 「確かにそうかもしれない。⋯⋯だが、それで真に理解出来る訳では無い。もしかしたら、パッシブスキルによる条件などが存在するかもしれない、特定の条件下じゃないと強くないかもしれない。ペアモンスターのように二人居ないと強くないかもしれない」


 こ、このリーダーかなりの慎重者だ。


 「不確定要素は敗北に繋がる可能性が極めて高いんだ。そんな敗北への道は一切作らない」


 ライトは僅かでも勝率を上げる考えではなく、既に勝てる前提で動き、負ける要素を潰す考えのようだ。

 俺がモンスターカードを配れば確かに勝率が上がる。

 しかし、それによって生まれる練習時間のロスと連携の低下など。

 それを天秤にかけた結果なのだろう。


 「モンスターカードは全て、個人に委ねられる。今回の場合は日陰さんの意思で、自分の持つモンスターカードを使う。己が使い慣れたモンスターの方が強いに決まっているだろ。今までの探索を思い出せ、今までの戦い方を思い出せ、信じろ、自分の力を」


 ライトの白熱の演説に誰もが心を打たれた様に黙り込んだ。


 「すごい」


 メアが純粋に感心する。

 俺も同じ意見だ。


 勝ちはの執着は多分、ライトが一番高いだろう。

 だからこそ、不確定要素、敗北要素を受け入れようとはしない。


 多分、普通の人から見たらそれだけに見えるんだろう。

 だけど、当事者の俺から見たら少しだけ考えが変わる。


 今のような騒動が起きて俺の機嫌を損ねてしまうかもしれない。

 その場合、モンスターカードを借りられるどころか、俺の協力までなくなってしまうかもしれない。

 そうなったら、俺と一緒に来た愛梨の力も無くなるかもしれない。


 親しい人が居なくなって、心細い神楽も辞めるかもしれない。

 高火力アタッカー二人の不在こそ、敗北に直結するような大きな道になってしまう。

 それを恐れたのだろう。


 そんな事を俺が考える事も考えているのなら、凄い奴だよ。


 「うん。意見はまとまったようだな。それでは、これより練習を始める。練習の途中で随時配置を変えていこう。(今の俺、かなりかっこいいよな!)」


 そうライトが宣言すると、大きな鬼のホログラムが現れる。

 これが練習用の過去のレイドモンスターなのだろうと、すぐに予想出来た。

 メアが感心して、「大きいー」と言っている。

お読み下さりありがとうございます!

80話来ました!

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