79.レイドイベント
異世界データの運営からイベント告知が入った。
夏休み期間なので、何かしらでかいのかと思ったがレイドイベントらしい。
大まかなルールとしては、いくつかのグループに別れて、レイドが行われるらしい。
そのグループメンバーは地域事に分けられるらしく、近い人同士が仲間になりやすい。
なので、友達と同じレイド会場に行ける可能性は十分にあると言う事だ。
「愛梨はどうする?」
「日向くんは参加するんでしょ? だったら私も参加するよ」
当然のように言うね。
そんな訳で俺達は二人で参加だ。
メンバー発表は明日らしい。
「前回までのレイドイベントでも漁ってみるか」
前までも同じような形式でレイドイベントは行われており、専用の練習スペースが使えるようになるらしい。
過去のレイドモンスターを出現させて戦う練習も可能らしい。
メンバーの役割がちゃんと分けられる様にグループ分けは行われるらしく、アタッカーしか居ない事態にはならないらしい。
俺は初めての参加だ。
「ん〜大人数戦はしかたないけど、色々と面倒だな。良い人ばかりが良いんだけど⋯⋯」
「モンスターカード、求められるだろうね。一瞬で戦力増強だもん。⋯⋯でもさ、勝つって考えたらそれでも良いんじゃない? きちんと契約すれば良いし」
「いや。いくら強いモンスターに団結して戦うシンプルなモノとは言え、神が主催するイベントだ。ヌルゲーにするようなマネは出来ない」
神は自分たちが楽しみたいからこのようなイベントを開催するのだ。
日陰が全力を出してそれをぶち壊してしまったら、神は落胆するだろう。
そうなったら、面白くする為に原因の排除に入る。バグを取り除く様に。
そしたら日陰が日陰ではなくなり、アバターの見た目は変えられないので、一生それが枷となる。
だから、なるべくそんな事はしたくない。
過去レイドの動画を見る限り、範囲攻撃はデフォで備わっている。
メイは使えない。
俺も四体までに絞られる。
「広ければ海王で体力は大量に確保出来るな。魔術士とも接続すれば、大量の魔力が使える。神楽と同じグループが良いな」
「むっ、神楽さんばっかり意識するよね、日向くんって」
「まぁあ。なんやかんやで息とかあうし、一緒にダンジョン探索していると楽しいしな」
「ふーん、私と探索していた時は面白くなかったんだ。へー、ふーん」
「別にそんな事言ってないだろ」
さて、明日はどうなる事やら。
翌日、グループ分けが既にされており、データ世界で会う事が可能になっている。
レイド用練習スペースへと入る。
「こんな感じなのか?」
真っ白な広い空間に来るらしい。
小道具とかなら意識すれば取り出せるらしいが、もちろん金がかかる。
このレイド専用スペースを開拓する事も可能だが、レイドが終わったらその開拓も意味が無くなる。
「結構人が居るな」
「最大メンバー二百人らしいよ」
「おおっ!」
「だな」
メアが驚いた。
と言うか、ナチュラルに愛梨と会話してしまった。
つーか、ここで男の様な発言は出来ないじゃないか。
危ない。
気をつけよう。
とりあえず、自然な形で当たり前の如く、愛梨とメアは同じグループだった。
本音を言えば、メアにレイドは参加して欲しくないが、いつの間にかエントリーしていた。
天井を見ると、最大人数と現在人数の数字が出ており、全員集まっている様子だった。
さて、何をするか。
レイドに肝心なのは連携力だ。
それを上げるのに一番効果的なのは、リーダー、隊長を用意する事だ。
戦いの指揮や配置、チームのまとめ役などかなり重要な役目だと言える。
その反面、責任も大きくなる。
リーダーの指示に従った結果、良くない結果になったらそれはリーダーの責任だ。
今回の一回きりのレイドでは誰もが失敗したくはない。
誰もが全力を出したいと思っているので、リーダー経験者が名乗りを上げるべきだろう。
リーダーが無ければ、最初の練習も出来ない。
まとまりが無いから。
愛梨のような個々の実力が非常に高いからと言えど、リーダーに適している訳では無い。
寧ろ、個人火力の高い愛梨をリーダーと言う司令塔にしてしまうと、大幅に火力は下がるだろう。
「すまない。ここは俺にこのグループの指揮を任せて貰えないだろうか?」
そう言って名乗り出したのは、純白の鎧を纏った、聖騎士のような男だった。
「俺はクラン『落雷の聖剣』マスターを務めているライトだ。過去レイドにも参加した事はあるし、リーダー補佐を務めた経験もある。どうだろうか? もちろん、嫌な人だっているだろう。だから教えて欲しい」
周りを見渡す。
しかし、誰も反対しなかった。
「ありがとう。絶対に勝ちに行こう。まずはメンバーと役割を確認したリストを作成したい。クラン或いはパーティごとに集まり、詳細をリスト化して代表者が俺に提出して貰いたい」
そう言ったので、俺は愛梨達と固まる。
メアの詳細は分からないので、伏せておこう。
人数が足りないと言われたら時には適当に言っておく。
「さて、今後の事も考えるとバカ正直に詳細を教える事は出来ないな」
「そもそもひな⋯⋯日陰さんはそこまでスキル無いんだし、問題ないのでは?」
「確かに」
誰が聞いているかも分からないので、日陰呼びは正しい。
教えて困るスキルも二つしか存在し無いし、白夜の存在を隠せば良いだろう。
カードに関しては⋯⋯多数所持とでもしておこうか。
にしてもここって、自分のプロフィールもデータとして作成出来るんだな。
こう言うまとめる時に役に立つから、このシステムは採用されているのかもしれない。
「あ、日陰さんリイアさん! 良かった、一緒だ! おはよう」
「神楽!」
「やっほ」
「メアちゃんもおはよう」
「おはようなのだ!」
神楽も一緒だった。
その会話の声が大きかったのか、他の人達がこちらを向いてコソコソ話を始めた。
厄介だが、無視だ無視。
「それじゃ、私が出してくるね」
「頼んだ」
「すみません。頼みます」
愛梨が俺達のリストをこのグループリーダー、ライトに提出した。
ライトと同じクランメンバーだと思われる人達(装備に同じエンブレムあり)が集まり、リストを整理している。
「にしても神楽と同じグループなのはラッキーだ。海王の役目が一つ増えた」
「えっと、本当に僕と繋げて良いんですか?」
「この中で一番魔法攻撃力高いのは神楽だろ? だったら効果的だ。一存で決めるなと文句を言われても、こっちのカードだしね。まぁ、確かに相談は必要かもだけど」
神楽の精霊魔法の火力は高いとネット考察でもあったし、実際俺も目にしているのでそう思う。
DPS調査カカシって言うアイテムもあるし、比べようと思ったらいくらでも出来る。
「レイドの基本って、班編成して動くんだよね?」
「そうですね。一人のリーダーで個々を動かすのは難しいんですよ。だから班分けして、班ごとに指示を出すんですよ」
「その班分けも大変だな」
他人と班を組ませても上手く連携は出来ないだろうし、人見知りする人だと余計に無理だ。
「その辺は仲良しグループで分けると思いますよ? その、自惚れじゃなかったら僕達四人が一つの班になると思います」
メアも入れてるのか?
俺と愛梨は同じ近接アタッカーとしてチームは組みやすい。
レイドと考えると、一人だけ魔法士だと難しい可能性があるな。
「いや。神楽の場合イフリートを乗り物代わりにしたら機動力も高いか」
「そんな事しませんよ! それに、下手したらイフリートの邪魔になります」
「なるほど。その考えはなかった」
と、会話をしているとライトが声を出した。
終わったようだ。
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