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75.悪魔的強さ

 「メアアアアアアアアアアア!」


 俺は反射的に駆け出して落下するメアを抱えるようにキャッチする。


 「メア! メア!」


 名前を呼んでも苦しむ様子だけしかない。

 何が起きた? 何があった?


 「ペンダント?」


 メアのペンダントが光だした。


 「出る、来る、あああああああ!」


 その絶叫と共にペンダントから光の塊がボス部屋に出て来る。

 光は形をぐにゃりと形成を始める。


 『ふむ。ここが外か』


 「なんだ、これは」


 出て来たのはハエを無理矢理人型にしたかの様な見た目のモンスターだった。

 アイツがペンダントから出て来たおかげか知らんが、メアは落ち着いた。


 「なんだ、お前は?」


 『それはこっちのセリフだ下等生物』


 む、ムカつく奴だな。


 そういや、動物園の時にペンダントで大悪魔とやらを封印したんだっけ?

 アレが大悪魔だとでも言うのか?


 だとしても、なんでこのタイミングで現れるんだよ。

 意味がわからない。


 ただ、封印されるような奴だから敵なのは間違いないだろう。

 倒す⋯⋯それ以外に道はないだろう。


 こっちに敵意を向けてるんだからな。


 「下等生物とは心外だな。こちとら死んでも蘇る探索者だぞ」


 何一つ嘘は言ってない。

 アバターなので、壊されたとしても全くもって問題は無いのだ。


 『ふーん。まぁいいや。どの道、周囲にいる虫けらは殲滅する予定だったし⋯⋯な!』


 「いきなりの挨拶で!」


 悪魔から広がる広範囲の光がモンスターを瞬殺して行く。

 これでまた新たなモンスターを召喚しないといけなくなった。

 破壊力は高そうだ。


 下手したら、さっきのミノタウロスよりも強い?

 意識が回復してないメアを抱えながら戦うのは無理だ。


 「『一級障壁ゴーレム』『一級魔法メイド』『一級召喚メイド』『一級:グリフォン』」


 ゴーレムとグリフォンはノーマルガチャで出て来たモンスターだ。

 ゴーレムにはメアを守って貰う。


 俺はグリフォンに乗って空飛ぶ悪魔に向かって進む。


 「火炎球!」


 『くだらん』


 「⋯⋯」


 弱い部類の魔法とは言え、一級メイドの魔法をあそこまで容易くいなすか。

 召喚メイドの召喚したモンスターと共に悪魔に迫る。


 『はぁ。その程度のスピードで我と戦うつもりなのか?』


 「霧外流、抜刀術、移流霧!」


 背後に現れた悪魔に向かって刀を振るうが、空を斬った。

 アイツ、とんでもないスピードだぞ。


 俺一人⋯⋯いや、そもそもモンスターを全力で使ったとしても勝てるのか?

 メイを使う⋯⋯召喚したすぐに負けるのが落ちだろう。


 何とかして隙を作り、攻撃するしかない。

 飛び回る相手にどうやって隙を作れば良い?


 『下等生物よ。我を呼び覚ました事は褒めてやろう。礼として死を受け取れ』


 「誰がそんなモン受け取るかよ!」


 エネルギー弾のような物が俺目掛けて飛んでくる。

 これならまだ、斬れるだろ。


 間合いに入った瞬間に切り飛ばす。

 いける! 全然攻撃はいなせる。


 なら後は⋯⋯どうやって倒すかだ。


 『下等生物の分際で今、希望を見たな?』


 「ッ!」


 速い⋯⋯もしかしたらコイツ、さっきから一度も本気を出てないんじゃないか?


 「近寄んな!」


 攻撃しても、メイドの魔法もコイツに全然当たらない。

 ここまでスピードが速いなら、耐久力はそこまでない筈だ。

 まずは一撃を与える必要がある。


 どうすれば良い?


 『考える権利を与えたつもりは無いぞ』


 「だから速い⋯⋯っ!」


 相手の攻撃に合わせてカウンターを放ったつもりだった。

 しかし、悪魔の足は防御も虚しく俺の腹に突き刺さる。

 アバターでは一度も感じた事の無い衝撃を全身で感じる。


 「かはっ」


 そのまま壁に突き刺さる。

 なんだこれ⋯⋯痛い。痛すぎる。


 「ふざけんな、神。これはさすがに、おかしいだろ。なんでこんなに痛みを感じる」


 それで居て、今の一撃を受けても俺は生き残っているんだ?

 あの一撃なら今の俺は死んでいてもおかしくは無い。


 横から崩れ落ちる音が聞こえる。


 「ゴーレム⋯⋯そうか。ダメージを引き受けてくれたのか」


 助かった。

 そう言う余裕はなかった。


 『所有者か。先にお前を殺す』


 「⋯⋯させるかよ!」


 悪魔がメアに攻撃すると思った瞬間に俺は動いていた。

 自分でも驚く程に身体が先に動く。


 伸ばす手刀を刃で防ぐ。


 『ふん』


 「うそ⋯⋯」


 俺の刃は悪魔の身体をすり抜ける。

 だが、メイドの魔法が悪魔を捉えたおかげで、アイツは下がった。


 「お前、物理攻撃が効かないのか?」


 『どうだろうな?』


 この刀は精霊なども攻撃出来る武器だ。霊体を攻撃出来る筈なんだ。

 なのに、なんで悪魔の身体をすり抜けた?


 精霊とかと悪魔は別物なのか?

 どうすれば良いんだよ。俺に攻撃手段が⋯⋯無いぞ。


 『魔法は鬱陶しいな』


 「にげ⋯⋯」


 叫ぶ前に悪魔が他のモンスターを高速で始末してしまった。

 強すぎる。こんなの、Oランクには軽く匹敵するだろうな。

 つまりはまぁ、俺に勝ち目がない。


 『邪魔されるのは面倒だな。下等生物、そこの巫女を差し出せばお前は逃がしてやろう』


 「⋯⋯メアを差し出せば、俺は生かしてくれるのか?」


 『ああ。悪魔は嘘を言わない。契約だってしてやる』


 不可解だ。

 ボスを倒したのに新たなエネミーが現れた。


 そのせいで報酬は消えたし、出口も消えた。

 攻略したはずのダンジョンが新たなダンジョンになりやがった。


 こんなのはラノベの主人公だけで良いんだよ。

 なんで俺が、こんな目にあわないといけないんだ。ふざけるなよ。


 しかも、痛みはセーブされているはずなのに、凄く痛かった。

 現実よりも重く、痛い一撃の蹴り。

 怖い。


 これ以上悪魔と戦いたくない。

 色々と不可解だし、今の俺では逆立ちしても勝てる気がしない。

 逃げて、楽になりたい。


 これから感じる痛みから、今感じている恐怖から。

 所詮はダンジョンで拾った意味の分からない子供だ。


 ここで別れたって、俺の生活には一切の支障は存在しない。

 今ここでメアを見捨てる事が賢い選択だ。

 コイツに倒されたら、復活出来るかも分からないしな。


 「⋯⋯んん〜ひなた〜」


 「くっそ呑気だな」


 『まだか? 待つのは嫌いなんだよ』


 「メアを見捨てたら、愛梨は俺に失望するかな? それとも仕方ないって言うかな?」


 『ん?』


 アイツなら、きっと見捨てない。

 きっとじゃない。絶対にだ。


 「神楽ならどうする?」


 彼女の本質も結局は優しい。きっと助ける様に行動するだろう。

 父さんや母さんはどうする?


 ギルマスは? 西野さんは? ジャックは? クラゲマンは?


 俺の頭に出て来る人達は子供を見捨てるような人には思えない。

 なのに俺は見捨てるのか?


 一緒に飯を食い、一緒に寝た、娘のような妹のような他人を?


 「出来る訳ねぇだろ」


 『ん?』


 「知ってるか悪魔、この子は寝る時に星座を描きながら歌うんだぜ。暗記しちゃうくらいには聞いた」


 『だからなんだ?』


 「メアは甘い物が好きで、辛かったり苦いのが苦手な子供だ」


 『早く答えを言え』


 「なのに、時々ものすごく賢くて、動物を本気で可愛がる、不思議な子なんだ」


 『もう言い。まとめて死ね』


 俺はメアを──。


 「──絶対に見捨てない」


 『そうか』


 俺はメアを抱えてステップを踏み、レーザーを避ける。

 悪魔、お前には分からないだろうな。


 「もうメアは俺の⋯⋯俺達の家族だ。家族を守るのが男して、日向として、剣士として当然の事」


 俺はメイのカードを掲げて解放する。


 『ふむ? 殺すか』


 メイを先に攻撃しようとする。図体のでかいゴーレムを召喚して防ぐ。

 肉壁だろうが、許して貰いたい。


 「メイ、全力でメイド達を召喚しろ、階級なんて関係ない、全部だ。全てを使って悪魔を殺せ! メイ自身の召喚スキルも使ってだ!」


 「マスター命令実行、総戦力投下、全力戦闘開始、全軍支援、全軍行動指揮!」

お読み下さりありがとうございます!

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