68.スキル鉱石
「これで良いか?」
「これは?」
俺、金属の知識とか無いから分からない。
「ダイアミスリル。ミスリルの中では一番硬く柔らかい鉱石だ」
「⋯⋯お、おう」
「分かってないな」
そう言う素材もダンジョンで採れる。
ショップにも売ってるが、それは宝石のような装飾品に使える物だけとなっている。
「今は貴方がこのモンスターを召喚してます。やってください」
「いや、使い方が分からん」
「え」
俺はスキルを見たらなんとなく分かるんだが⋯⋯この人には分からないのか?
もしかして、ガチャで出たカードの仕様だったりするのかな?
しゃーない。
お手本を見せよう。
「まずはこのミスリルに⋯⋯」
「ダイアミスリルだ!」
見に来た他の鍛冶師や錬金術師達に叫ばれた。
とても重要らしいので、間違えた言い方はダメらしい。
「日陰が怒られてる〜」
「笑うんじゃない」
まずは錬金術師にスキルを与えて貰う。
「待ってくれ。ダイアミスリルは本当に貴重なんだ。流石に⋯⋯」
「そうですか。⋯⋯そうですね。実験は順序良く、鉄などで試してみましょう」
金属にスキルを与える。
これは鍛冶師達から見たら金属を無駄にする行為であるため、良く思わては無い。
視聴者が反応する反応する。
「スキルの与えられた鉄と銅をゴーレムに食べさせます」
「スキルを与えた鉱石はそれで完成系になる。合成は出来んぞ」
「まぁ、見ててください」
俺はゴーレムに指示を出す。
召喚したのは俺じゃないけど、命令は有効なようだ。
俺は今、召喚限界を迎えているので新たな召喚は出来ない。
メアの影に護衛を潜ませている。念の為にね。
「〈金属合成〉!」
このスキルにより、ゴーレムのた以内にある鉱石は完全に混ざり合う。
〈金属生成〉により新たに生まれ変わる金属がゴーレムの腹から出て来る。
どんな金属だろうと、混ざりあい新たな金属してこの世に産み落とされるのだ。
俺が使う機会のないモンスターの一体である。
祝福のスキルで合成した金属の性能は一部上昇する。
「か、鑑定しろ!」
ゴーレムも鑑定して、それをホログラム映像として見せる力はある。
だけど、ここではしない。
本人達で見てもらった方が、信憑性があるからだ。
一応鑑定し、それを映像画面にだけは載せておく。
視聴者の為だ。
「すごい、完全にスキルも混ざってる」
本来混じり合わないスキルまで混ざってる。流石に予想外だな。
〈火水耐性〉か。
俺、耐性スキル一個もないな。
基本攻撃受けたら瀕死になっちゃうから、避けたり受け流しを意識している。
沢山受けないと耐性スキルは獲得できない。
「これを、使って武器を作ってみるぞ」
「それじゃ、ついでにこちらも」
鍛冶スキルを持つモンスターも二体召喚させて手伝わせる。
モンスターと人間の共同作業はダンジョン探索やイベント、戦い以外にもある。
そんな初の光景が今、俺のライブで流れている。
俺も知らぬ間にネットではこの企画が拡散されて広まっていた。
初見の人も興味を持つ内容だった為に、同接の数はみるみるうちに増えていく。
だけど、俺はそれが気にならないくらいに職人達を見ていた。
新たな可能性の糸口を見つけ出せた職人達の顔が、俺の顔を逸らすことを止めている。
そして完成した武器。
それは金属が本来持っていたスキルを完全に引き継いでいた。
ただ、新たなにスキルを与える事は出来なかった。
しかし、武器へと形を変える過程で変化は起きていた。
それは、合成された金属が『スキル鉱石』になっていたのだ。
完成した後に見せる色合いがスキルに寄っている。
金属とスキルが完全に調和に融合したかのような、そんな見た目だった。
スキルの性能も上がっているらしい。
武器説明で一番気になるのは、説明欄に『能力武器』がある事だった。
本来、武器にスキルがあってもこんな表記は存在しない。
鍛冶師達は誰もが喜びの叫びを上げた。
新たな可能性、新たな武器、その作成が出来た事に。
「歴史的瞬間ですね」
「ああ! これりゃあ凄い!」
耐性スキルをつけたのに、作成時間を短くするために武器にしたのは、誰もがツッコミを入れなかった。
差し出されるダイアミスリル。
「やろう!」
「そうですね」
俺達は続けてダイアミスリルの合成に取り掛かる。
今回合成する鉱石はダイアミスリル、フェアリーアダマンタイトの二種類。
ダイアミスリルには〈属性:火〉〈自然修復〉の二種類。
フェアリーアダマンタイトには〈属性:氷〉〈魔力伝達〉の二種類。
そんな四つのスキルが混ざるのだろうか?
期待感と不安感を旨に、合成は始まった。
「長いな」
「かなり時間がかかるんですかね?」
すると、メアのペンダントが光だした。
「なに?!」
俺はメアの方を見る。
虚ろな目だ。
やばい。
そんな気がした。
「おいメア!」
「エンチャント」
その言葉と共にメアの瞳は光を取り戻した。
「どったの?」
「おま、びっくりさせないでくれ」
本気で心配した自分にもびっくりだわ。
そして完成した金属。
妖精金剛ミスリルである。
「漢字にして合わせただけのネーミング」
「そう言うな。鑑定しろ!」
〈属性:炎氷〉〈自己再生〉〈魔力親和〉〈飛翔〉があった。
「む。〈自己再生〉か」
顔をしかめる。
何か問題があるのか?
「何か問題でも?」
「ああ。修復は削った部分が回復するだけだから加工に問題は無い。しかし、再生は形も回復するから武器に出来ん」
まじかー。
つか、〈飛翔〉はどっから来たし。
メアが原因だろうな〜。
この金属、ずっと熱気と冷気を纏っている。
これ、武器に出来んの?
そう思って皆を見ると、研究者の目をしていた。
そろそろやめ時か。
「それでは、この辺で終わりたいと思います。今日はありがとうございました!」
「ござました!」
メアが真似をする。
「お礼に三級のモンカドをお渡しします。一枚ですけどね」
もちろん、一級は返して貰う。
「か、買わせてはくれんか!」
「ん〜それはまたの機会に」
ここが日本最大だとは言え、最高の鍛冶師が居るとは限らない。
まぁこれで、他の方面での宣伝にも繋がっただろ。
同接六万人。
凄い数だ。
アーカイブにも残しておこう。
「皆さんお疲れ様でした!」
「乙です!」
ライブを終えた。
自分のクランに来て欲しいと、配信のオファーが多かった。
これは当分、鳴り止まないだろうな。
◆掲示板◇
102
日陰の久しぶりのライブ見たか! なにあれなにあれ!
103
>>102おまw興奮すんなw
104
製作系スキルを持ったモンスターって実在したんだな
105
八級で見かけた事あったけど、要らんくてすぐに売ったわw
106
あれは別格だな〜
107
スキル鉱石か〜
108
と言うかあの子誰なの?
109
メアちゃん、可愛かったな〜
110
変態だ! ロリコンの変態が居る!
111
変態では無い、紳士だ(キリッ)
112
ついに日陰がママに⋯⋯妊娠してた?
113
色々と辻褄が合わんやろ
114
子供ってよりも年の離れた妹って感じよな
115
にしてはしっかり者な気がする。きちんと言いつけ守ってたし、日陰よりも話を理解してた
116
専門の話は難しいので、わかりまへん
117
まじで解説聞いている度に、目を点にしてたよな
118
あれはFXで全額溶かした人の顔だったな
119
>>118例えよw
120
最後の鉱石凄かったな〜火や氷がぼわーって
121
ん〜分からん
122
どんな武器になるのか楽しみやわ
123
あ、お礼のモンスターカードって三級なのね
124
てっきり一級を渡すモノかと⋯⋯自重? ただのケチ?
125
おいw製作クランに戦闘モンスターをあげるなw
126
この企画結構楽しかった! あのクランってあんな感じに活動してるんだな
127
人力工場
128
それはもう工場じゃないんよ
お読み下さりありがとうございます!
大変申し訳ないのですが、今日はこの更新だけで終わりにしたいと考えております。
また明日、来て下さる事を祈っております




