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67.企画ライブスタート

 「皆さん、いきなりのライブで驚かせてすみません」


 まずは謝罪を。


 「ごほん、今回は夏休み特別企画、モンスター出張をやっていきます!」


 俺はこの企画を説明した。


 様々なクランにお邪魔をして、モンスターを生かしてお手伝いやクランの内部を知ると言うモノ。

 これはクランホームの内部を世間に流す行為であまりしたがる人は居ないだろう。


 しかし、そこにモンスターカードと言う餌が出る訳だ。

 しかも、複数の一級を所持する相手なら無下にも出来ない。

 秘密を教える必要は無い。


 クランでの活動などを教えて貰い、モンスターで手伝ってみたりする企画だ。

 俺だからこそ出来る斬新な企画だと思いたい。


 「早速、今日お邪魔するクランをご紹介!」


 「メアがするのだ!」


 メアがカメラに入って来る。

 そしてコメントが高速で流れる。


 『だれ?』『子供?』『モンスターには見えない』『誘拐か!』『日陰が誘拐を犯したと聞いて来ました』


 などなど、誘拐路線に行きそうだった。

 正直なぜ、モンスターや助っ人よりも誘拐と疑われたかは気になる。

 設定としては助っ人で行くつとりだ。


 親戚の子って設定。


 メアがクランの解説をしている。


 コメントを見る限り、やはり映像越しでもメアは見られている。

 視聴者はデータ世界の外にも居るだろうから、現実世界でも見えている。


 異世界データを通してなら、無条件でメアを認識出来るのか?

 いや、このライブ映像は異世界データだけで配信されている訳では無い。

 映像越しなら見られる⋯⋯その方が正しいか。


 俺と関わりがある者、映像越し、動物、この中に見えている共通点は無い。

 考えても仕方ないのか?


 「と、そろそろお邪魔していきましょう!」


 中に入ると、金属を叩く音が聞こえる。


 「人力工場みたい」


 「すごい例えだな!」


 等間隔に工房が用意されて、人間が使っている。

 この綺麗な形はまさに機械だ。


 クラマス直々に解説してくれるようだ。

 メアも興味津々。

 意識してなかったけど、これはメアの学びの場にもなるんだな。


 「二人から三人のチームで一つの武器を造ってる。教育とはまた違う」


 「その教育をすると、スキルが伸びるんですか?」


 「ああ。上級者の動きを見て、学び経験を積む。そうすると熟練度は素早く上がる。ここで培った技術は現実でも反映する。体を痛めても鍛錬したい人などの職人も来るな」


 「なるほど」


 リアルで出来なくてもここなら出来る、反対にリアルで出来なくてもここで経験は積める。

 技術系のスキルは大抵リアルに反映される。逆も然り。

 俺の剣術だってそうだし。


 「スキルを持った武器を造ったりするのは⋯⋯」


 「それは錬金術系のスキルを持った奴が後からやる。鉱石に対して付与して武器にする、それも実験したが意味がなかった」


 「金属にスキルを与えても、形を変えたらリセットされると」


 「ああ。むしろ、金属の質が落ちたかのように、生成後の武器の性能が落ちる」


 そうなんだ。

 金属にスキルを与えて、それが保たれたまま武器になったら、その武器に新たなスキルが与えられたかもしれない。


 「まぁただ、金属から新たな金属を生み出す、そんな副産物は出たけどな」


 「合成石ですか?」


 「ああ。データ世界とリアル世界では、少しだけやり方が違うけどな。まぁ、鍛冶師だけではスキルの持った武器は造れねぇって事だ」


 「それは⋯⋯燃えますね」


 メアが近づきそうだったので止める。

 邪魔はしちゃいけない。


 『親子だ』


 そんなコメは無視する。


 「分かるか? このクランでは、武器を生成した時に既にスキルを持っている、そんな武器を造りてぇ集まりだ。日本最大とかは、どうでもえぇ。ワシらが本気で目指してるモンはな、人工魔剣、人工聖剣、そして人工神器だ」


 そのクラマスの目は⋯⋯闘志に燃えていた。

 分かる。

 成しえないモノでも可能性があるなら、掴み取りたい。

 ここは神の作ったデータ世界だ。


 プログラムされてないモノは出来ないかもしれない。

 だけど、この世には個人が特別に保有している唯一無二のスキルがあるんだ。

 もしかしたら、伝説級のスキルだって眠っている可能性はある。


 プログラムされている可能性はある。

 むしろ、そう言う僅かな可能性を見出し、努力をして掴み取る。

 その過程や結果をも、神は求めているだろう。


 「アプリのショップで買う武器との違いはなんですか?」


 「そりゃあ自由性だな。オーダーメイドを頼まれたら、その使用者に合った形や性能をした武器を造れる。ショップは決まった形、決まった性能だ。そこが違う点だな。後は、基盤となる武器の性能が違う。百円で買える武器と百円で造れる武器、それだと後者の方が優秀だ」


 「⋯⋯」


 「どうした?」


 「それって⋯⋯ショップで買った方が損って事ですか?」


 「場合によって違う。まぁ、数億とか出すんだったら、製作系の奴らに頼んだ方が、優秀な武器は手に入るな」


 俺は膝から崩れ落ちた。


 「日陰、どったの?」


 「いや、ちょっとね」


 俺は実はすごく勿体ない事をしてたんじゃないか?

 何故だろう。

 すごく神の笑顔が見えて、言葉として『カモ』が聞こえて来る。


 「き、気を取り直して! ち、近くで見ても良いですか?」


 「ああ。⋯⋯あそこがそろそろ終わる頃だろ。来な」


 二人組みの男女ペアで槍を造っていた。

 この形状⋯⋯国内イベントで見た事があるかもしれない⋯⋯あんまり覚えてないけど。


 「現実とは違う作成方法を何回も試している」


 「それで良いんですか?」


 「ああ。新たな可能性を見出さないといけないしな。それに、技術スキルも六で打ち止めになってんだ。何かしらで壁を超えないとならねぇ」


 こう言う時も質問券が欲しくなるよな。

 スキルのレベルの壁を超える⋯⋯確かに、それは強くなるための道である。


 「金を払えば上げられるのでは?」


 「与えられた技術になんの意味がある」


 「ごもっとも」


 自らが鍛え伸ばした力、神に金を払い購入した力、どちらが尊くて素晴らしい力なのかは、火を見るより明らかだ。

 さて、メアがかなり食いついて見ている。


 「危ないから、あまり傍を離れないでね」


 「うん」


 ここまで鍛冶に興味を持つとは⋯⋯この子の失われた記憶になんかの関係があるのか?

 ペンダント⋯⋯あ、ついでに聞いてみるか。


 「この子の着けてるペンダントに心当たりはないですか?」


 「無いな。ショップにも無かったろ」


 「全部覚えてるんですか?」


 「ああ」


 まじそうだな。


 そろそろ本題に移ろうか。

 ちょうどこの場所が空くっぽいし、企画を進行する。


 「それじゃ、どいつにしようかな」


 この人達が壁を超えるのに必要なのは、まだ見ぬ金属だ。

 スキルを与えられずとも持っている金属。

 普段の製法じゃ形を変えられない金属。


 だから俺が呼び出すモンスターは鍛冶技術を持ったモンスターじゃなくて、創造技術を持ったモンスターだ。

 ノーマルガチャには幅広いモンスターが存在する。


 メイドでは当然メイド、夏ガチャでは海や水着、夏をベースにしたモンスター。

 ノーマルガチャは戦闘、生産などの幅広く取り揃えた、あったら便利なガチャ。


 「コイツに決めた。これを召喚してください」


 「あ、ああ」


 俺が与えたモンスターは『一級:フィージョンメタルゴーレム』だ。

 複数の鉱石で体を構築されたこのゴーレムのスキルは⋯⋯〈金属合成〉〈金属生成〉〈形状変化〉〈メタルへの祝福〉〈金属鑑定〉の五つ。


 「⋯⋯かなり、大きいな」


 「ゴーレムですので。形状変化のスキルはゴーレムの見た目を変えられるスキルですので、あまり気にしないでください」


 重要なのは手前の二つ。


 「このクランで一番、レベルの高い錬金術師を呼んで来てください! それと最高の金属を!」

お読み下さりありがとうございます!

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