表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/86

26.調子に乗り過ぎた

 「クソがっ!」


 芹沢に俺は蹴られた。


 「荒れてんねー」


 芹沢に嘲笑気味の声音で阿久津が話しかけた。

 我妻も怒りを剥き出しにしながらも、自らは静観者のつもりらしい。


 「なんでいきなり死なないといけないんだよ! クソがっ!」


 昨日のイベントで即死を果たして、イベントを十分に楽しめなかったようだ。

 その怒りを俺に対して暴力と言う形で発散している。

 迷惑な話だ。


 俺はこの時、愛梨との会話を思い出していた。


 未来に進む為にも、一歩踏み出さないと。

 でも、今はその時では無い。

 何故か、反抗して、異世界データのアプリが入っているとバレてみろ、確実にPVPを挑まれる。

 そしたら日陰の存在がバレてしまう。


 声を変えられる装備を買わない限り、俺は誰かとPVPをする事が出来ない。

 だから、今日は我慢だ。


 そして放課後、家に帰る途中でそこそこのランクはあるダンジョンを目指す。


 「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 高速で走りながら愛梨が近寄って来た。


 「なに?」


 「なに? じゃないよ! なんで道場に向かってないの! 一緒に学ぶんじゃなかったの!」


 「いや〜色々と準備しないとじゃん? だからさ、ダンジョンに行こうかと思って」


 「わ、私も行くよ!」


 「別に良いよ。もう、メイの存在は晒したんだし。助っ人も必要ない。パーティを組むとレベルが上がらないしね。配信者としての日陰も頑張るって決めたし、愛梨の助けはもう大丈夫だよ」


 「私が大丈夫じゃないよ!」


 「なんでだよ」


 すると、モジモジしだしたので、放置してダンジョンに向かう。

 登録者三十万人の配信者として相応しい存在になるのだ。


 「Tランク、Uの一個上か。レベル的には良くないけど、なんとかなるだろ」


 武器も強くなってるしね。


 俺はダンジョンに入った。


 「出て来るエネミーを把握したいけど、まずはメイを呼び出すか」


 「ちょっと、なんで置いてくのよ!」


 「来たのか」


 「来るよ!」


 メイを呼び出して、四級からの戦闘メイド達を呼び出した。

 白龍と戦っていた時よりも当然数は多い。


 「三百連の成果だな!」


 「ほんとはそれ以上に引いてるけどね」


 「いいのいいの」


 こんだけのメイドを出して思ったのだが、流石に多すぎる。

 四級は召喚解除する事に決めた。


 ランクが上がる事にダンジョンの内部は広くなるけど、流石に多すぎる。


 「メイの護衛に一級メイドを四人残して、一級メイドの一人は俺に同行、他は散開してエネミーを狩って。他の探索者の横取りはダメだからね」


 「マスター命令実行」


 俺は少し離れて、メイド一人が写るようにして、撮影権利を行使する。


 「よし、今日は純粋にダンジョンを探索して宝箱を見つけたいと思います!」


 お金ならモンスターカードを売った方が速い。

 武器防具もTランクならショップで買った方が良い物が手に入る。

 その分金もかかるが。

 だけど宝箱を探すのは、撮影のネタだ。


 愛梨が助っ人モードになったので、もう何も言うまい。

 同行してくれるメイドは大きな手裏剣(しゅりけん)を念動力で扱うタイプだ。

 広範囲を殲滅出来るのでかなり便利だが、今回は子守りとして使わせて貰う。


 「そんじゃ、探すか!」


 今更だが、Uでもかなり広いんだよな。

 全力で狩っていたのにボス部屋を見つけられなかった。

 広いとエネミーの数も多くなるし、仕方が無い。


 さて、ボスの場所なんて分からないし興味もない。

 今回の目的は宝箱である。


 「宝箱を見つけるコツとかある?」


 「⋯⋯」


 分からないと言う風に首を横に振る。

 ⋯⋯おっと、いきなりの企画倒れか?

 調べれる事もやぶさかでは無いが、ここは素人探索で探す事にしよう。


 『マスター』


 「ん? どうしたの?」


 『差し出がましいとは思いますが、探索能力の優れたメイドを呼び出すのが楽かと思います』


 「そうだけど。せっかくだから初心者っぽくやりたいしね。自力で探すさ」


 「初心者、ねぇ」


 愛梨の疑わしい目を気にせず進む。

 初心者は初心者だ。

 実際に俺は初心者だ。


 左側の壁をずっと伝って行けばいずれ見つかるだろう。

 それに、壁側を歩いていたらトラップに引っかかる心配もない。


 「おっと、エネミーの登場か」


 抜刀術の構えを取る。

 敵はミノタウロス。

 武器は片手斧か。


 メイドが動こうとしたが制して、俺が前に出る。

 俺自身が戦わないとなんの意味もない。


 「いくか」


 俺はミノタウロスに向かってスタートを切る。

 レベル差かなんなのか、相手は俺の動きを完全に見えている。


 「霧外流、蜃気楼」


 気配を殺し、相手の認識をバグらせる。

 相手の横に移動して刃を向け、振り下ろす。


 「⋯⋯ッ!」


 「ミノタウロスの皮はかなり硬いよ!」


 「先に言って欲しかった」


 俺の位置を素早く把握したいミノタウロスの反撃。

 刀で防ぐが、あまり衝撃が消せずに吹き飛び、壁に衝突する。


 「うぅ、さすがに自分が動くには速かったか?」


 と言うか、メイに代理召喚させたメイド達が動いているはずなのに、レベルが上がった感がまるでない。

 少し気になるな。


 でも、今は集中しないと。


 再び構えを取ると、カチリと足元から音が聞こえた。


 この音は既に知っている。

 落とし穴だ。


 「残念だが、一度引っかかった罠はランクが上がっても引っかからない!」


 刹那、俺の背後の壁が高速で修繕されて近寄って来た。

 その速度は一般道路の法定速度を軽く超えている。


 「かばっ」


 予想外の不意打ちに俺はミノタウロスの足元に転がる。

 これぞ初心者ムーブ。

 って、言っている場合じゃない。まずい。


 ミノタウロスの眼光が俺を向く。

 体が動かない。

 さっきの衝撃が全身を巡って、麻痺のデバフを与えて来たようだ。


 あれ? 予想以上のピンチ?

 推奨レベルとかなり低い俺だからか?


 『グオオオオオ!』


 「助け⋯⋯」


 メイドが大きな手裏剣を動かしてミノタウロスを切断する。

 あーダメだこれ。

 俺早すぎた。ここに来るの。

 もう一個下のUランクダンジョンでレベル上げだな。


 つーか、メイド達はどうしてんのよ?

 ログを確認する。


 「うそん」


 「どうしたの?」


 「代理召喚したメイドがエネミーを倒したらポイントは手に入る。でも、ドロップアイテムと経験値が手に入らない」


 「まぁ、仕方なく無い?」


 なんでポイントは手に入るのに経験値とかが手に入らないんだよ!

 これでは俺のレベルが上がらない。


 「このメイドだけ代理召喚を解除して、俺が再び召喚⋯⋯それだと今度はメイのところに戻らないといけないのか」


 うーん。

 レベル上げはUランクダンジョンが一番かもしれない。

 あそこもまだ一回戦が長引くけど、倒せない程じゃない。


 「しゃーない。普通に宝箱を探すだけにしておくか」


 モンスタートラップにだけは特に気をつけよう。

 大量のエネミーが出現するモンスタートラップ、いつもならポイントの宝庫だけど、今回は命大事にだ。


 そこからも何回かトラップに当たりながら、宝箱を発見した。

 地味に初めての発見である。

 どんな中身でも嬉しい気がする。


 「ミミックか気になるから、開けてみてくれ」


 『わかりました』


 「手裏剣便利ね」


 宝箱を開けたが、中からモンスターが出る気配はなかった。

 なので、俺達は近づく。


 「あ、そこの一つ色が違うところ、トラップ作動する⋯⋯」


 「え?」


 次に開くのは俺の足元である。

 手裏剣が俺の下に来て、足場となり生還した。


 「なんでこんなにもトラップに引っかかるの?」


 「配信者魂、良いね」


 「わざとじゃないだけに少し悲しいんだけど」


 とりあえず中身の確認だ。

 どれどれ。


 こ、これは。

 まじかよ!

 こんな事ってあるのか?

 嘘だと言ってくれよ。


 「なんで、中身が空っぽなんだよ」


 「うわー、最高のオチだね」


 「ふざけんじゃねええええ!」


 レベルも上がらない、俺ではモンスターも倒せない、推奨レベルは気にしよう!


 家に帰ったら、ノーマルガチャを引いた。

 ポイントだけは沢山手に入ったしね。

 イベントガチャと違って、こっちは千ポイントで十連なので良心的だ。


 イベントガチャは階級が上なの沢山出るけど。


 「とりあえずこれでお金は稼げそうかな。にしても、代理召喚だとポイントしか手に入らないのか。結局手数は四か」


 「それでも全部が一級って考えると、凄いからね?」


 35億で売れたから、そこから考えると⋯⋯140億か。

 確かにすごいな。


 「いずれ国家予算行きそう」


 「それを売ったらモンカドの価値暴落だね」


 「自分の首を締めるようなマネはしないさ。なんで神は俺にこんなスキルを与えたんだろな?」

お読み下さりありがとうございます!

明日の7時代に投稿致します!

最後に良ければ評価『★』やブックマークをしてくださると、励みに繋がります、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ