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9.制服と戦闘設定

 どんな場所で戦いたい?と妹に尋ねたら初心者なので簡単な所がいいです、という事で近くの森にやってきた。ここは癖のあるモンスターもいないしトラップもない。道も広くて戦いやすいので初心者が慣れるのに丁度いい場所だろう。そう思っていたのだが………。


 「ハッ!」


 白兎のモンスターはパンッという音と共に消えた。これで早くも撃破十匹目か。

 まだ二匹残っていたが一目散に逃げ出した。まさに脱兎……。


 「あ、逃げてしまいましたね。追いかけますか?」

 「お前なら追いつけそうだけど止めなさい。またすぐ食べられるから」

 「倒してはいますけど一度も食べていませんよ!?私は飢えた狼ですか!?」

 「逃げた兎を追いかけようなんてするからだ!レアモンスターじゃないんだし」

 

 モンスターの逃走。レベルやステータスに差が有り過ぎるとよく起こる事ではあるのだが…初心者クラスのモンスターじゃ相手にならないか?

 ここまでノーダメージ、一撃必殺で進んでいる。装備でステータスを上げていないのに…。


 「逃がしたくないのならまとめて倒すか加減して戦うかだな」

 「加減もできなくはないですが…まとめて倒すには………やぁ!」

 「!」


 妹が回転しながら蹴りで前方を薙ぎ払う。美脚だなぁ……じゃなくて!


 「その制服姿で足技はまずいんじゃないのか?」

 「他の人がいたら自重しますけど兄さんだけなら問題ないですよ。警告やエラーも起きませんし」

 「まあもっと際どい衣装もたくさんあるからなぁ…」

 「踊り子とか女戦士とか凄いですよね…私が着ても似合いませんが」

 「似合うとは思うけど、周りからの視線が大変だぞ?」

 「過大評価、と言いたいですけど……」


 身に覚えがあるのだろう、小さい頃から色々あったもんなぁ…人によっては贅沢な悩みなんて言われそうだけど、本人には凄いストレスらしい…話を変えよう。

 

 「しかしお前の制服姿なんてほとんど見なかったなあ、もったいない事をした」

 「もったいないって、ふふっ……兄さんは高校では寮生活でその後も一人暮らしだから休日しか帰ってきませんでしたからね、自業自得ですよ」

 「そこまで言う!?」


 あの頃は妹とはいえ年頃の異性とどういう話や接し方すればいいかわからなかったからなぁ……今でも妹以外は自信ないけど……。


 今の妹の見た目は女子高校生だ。通っている高校と似た制服だと万が一があるので違う服装の物を選ばせた。

 これは俺が所持していた装備【学校制服シリーズ】の一つである。男性用と女性用があり別のゲームとのコラボイベントで手に入れた物だ。コレクターとして所持していただけなのでこういう形で役に立つとは思ってもいなかった。

 それにしても何てスタイルしてんだ……栄養の配分を自分で操作したわけじゃないだろうな?


 「しかし何故それにしたんだ?動きやすい奴とかお前好みの服とかあったんじゃないか?」

 「もうすぐ高校卒業じゃないですか、そうしたら制服着れなくなるので。年齢的にも心情的にも。それでなんとなく」

 「まあ、確かに……」


 卒業したら学校制服を着る気にはなれない、というのは共感できる。体操着は着られるんだけどなぁ…。

 

 


 「森も本物みたいですね。空気が爽やかです」

 「今の時間帯はちょうど早朝の森だからな。夜や夕方でなくて良かった」


 逆に夜の森だと本当に見えなくて難易度が上がる。夜行性モンスターもいるので昼間とは別の場所と考えた方がいい。


 おっと、ここで初ゴブリンが出てきた。という事はアレが出るはず…。


「兄さん、メッセージが出てきましたよ。特殊行動設定の注意、とか」

「ああ、説明するよ」


 俺は有りにしている。妹もたぶん大丈夫だとは思うが…。


 「アバターの性別によって特定のモンスターは動きが変わるんだ。例えば優先的に狙ってきたり攻撃方法が変わったりする。それから体力が少なくなったり状態以上で動けなくなったりするとお持ち帰りしようとしてくる。それらを有りにするかなしにするかの選択だね」

 「持ち帰る!?それどうなるんですか!?」

 

 妹がゾッとしている。無理もないけど想像しているようなことは起きないから!当たり前だけど。


 「いや、パーティから一定以上離れると復活不能状態になって町に帰るだけだから。離れすぎる前に仲間がモンスターを倒すか攻撃するかすれば助ける事ができるし、デスペナルティも通常通り」

 「私はソロですけどその場合は持ち帰り状態になったら終わりですか?」

 「そうだね、自力で脱出した話は聞いた事がない。された事もないし」

 

 男性キャラはサキュバスにお持ち帰りされるらしいが、試してみたいと思えないしなぁ…。


 「それ、絶対に無しにした方がいいですよね?有りにすると何かいい事でもあるんですか?」

 「動きが単純になって対応しやすくなるぞ。特に多数の行動パターンを持つ敵はかなり楽になるし。他には倒した時の爽快感が最高って人もいる。罪悪感とか全く感じなくてひたすらに清々しいらしいよ。ただ劣情がリアル過ぎて苦手という人や集団で来られると本当に怖いという人も少なくなかったのでこういう選択ができるようにしたらしい」

 

 パーティの意見が分かれた時は当然無し設定優先です。


 「た、倒した時の爽快感ですか。ムムム…」

 「試しに一度やってみたらどうだ?ダメならなしにすればいいんだし」

 「そうですね。では早速………こ、これは…」

 

 目の前のゴブリンがヨダレを垂らして興奮し始めた。うーん、身内が狙われているせいか凄く嫌悪感がする。苦手だという人の気持ちがよくわかるなぁ…。あ、飛び掛かって来たぞ!?


 「キャアッ!」

 「蹴り!?しかも真っ二つ!?」


 見事な蹴り上げでゴブリンが切られてしまった!なんで!?蹴りは打撃じゃないの!?

 ゴブリンは悔しい!!という表情を浮かべて断末魔をあげながら消えた。本当に執念を感じるようだ。運営、どんだけ力入れてんだよ……。


 「な、なんという快感…現実では露骨に嫌らしい目でこちらを凝視してきても何も手出しできないのに……フフフ…」

 「マ、マイさん……目が笑っていませんよー…」

 

 よほど溜まっていたのだろうか……有りか無しか聞くまでもなさそうだが……。

 

 「どちらにする?無理する必要は全くないぞ」

 「ハッ!私ったらつい…ほ、本当に醜悪な様子でしたね…ですが倒した時のざまあみろ!というやってやった感が素晴らしいので有りで行きます!!」

 「そ、そうですか……あ、そういえば…」


 先程の見事な蹴りを思い出す。今までの攻撃は打撃判定だったのにあれだけ違ったのは何故だろう?


 「ゴブリンが切られていたけど、何かやったのか?」

 「え、そうでしたか!?夢中で気づきませんでした…力をより一点に集中させたような…もしかして……忘れないうちにものにしなければ!」

 「勤勉だなぁ…お前らしいけどどうするんだ?」

 「もちろん、こうするんです、よっ!」


 襲い掛かってきたゴブリンの群れを蹴りで倒し始めた!服装変更した方がよくないかこれ!?


 この後、出てくるモンスターを全て足で倒しながら進んだ。あられもない姿の一歩手前だったが真剣に何かを会得しようとしている妹の横顔は真剣で…何も言えなかった……人前では本当に自重してくれよ!?

 練習のおかげで足で切るコツは掴んだらしい……え、兄さんの心配しておろおろしている姿が面白かっただと!?この野郎!写真撮影でもしておけば良かった!!



 

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