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89.戦略的撤退
「おい、逃げるぞ!」
「!?」
「ガァァ!」
妹は俺の言葉に驚いていたが、死神の拳をかわしつつ、こちらにきた。
「兄さん、あれは倒せないんですか!?」
「逃げてから説明するから!ほら来たぞ!」
目を赤く光らせながらこちらに走ってきた。巨漢なのに速い!
「階段で下の階に降りたら、すぐに部屋に入って隠れよう!」
「わかりました!」
下に降りると、近くに部屋があった。入る所を見られなければ――!
「シュコォォー、シュコォォー……」
大きな呼吸音が聞こえる。下の階にきた所で立ち止まり、周囲を窺っているようだ。
魔法や鼻で相手の位置を把握するタイプだったら見つかっていたが、あいつは目と耳で発見するタイプだ。大きな音さえ出さなければ発見されない筈。
はやくどこかへ行ってくれ!
「シュコォォー、……ォォー……」
呼吸音が小さくなっていく。どうやら別の場所に探しに行ったようだ。これでしばらくは安全だろう。
今のうちに説明せねば!




