58.案内ご苦労様でした
トリックに見張りの男を追跡させる。
「……本当にいないぞ……どんだけ欲求不満なんだよ!?」
「姐さんまで……まさかそういう趣味が?」
「あの人達、女性に興味あったのか!?」
途中、何回か立ち止まって周囲を確認していた。尾行を警戒しているのかと思ったら、独り言の内容からその場所にいるはずの仲間や幹部達を探していたようだ。誰もいなくて頭を抱えている……哀れな。
本来はその幹部達を倒して情報を集めていき、最後に人質を救出する流れなのではないだろうか?トリックの偵察のおかげで簡単にクリアできそうだ。
何とか走り続けた男だったが、ある建物の前で止まると膝をついた。何だ、どうした?
「こ、ここにもいない……最後まで誰にも会わないなんて……」
「「…………」」
遂に心が折れたか。その姿は、ボーナスステージで車を破壊された男のようだ。俺も妹も無言になってしまったぞ。
ここが隠れアジトで間違いないだろうが、念の為、トリックに確認してもらおう。
見張りの男は戦意喪失していたので放置して突入する。中には護衛の男と人質の女性しかいないのは確認済み。
本当はこっそり潜入したかったのだが、護衛の男はトリックの存在に気づく程感知能力に長けていたので、正面から乗り込むことにした。
「……まさか堂々と一人で乗り込んでくるとは……その様子だとこちらのトラブルは把握済みか?」
「ええ、おかげで楽をさせてもらいました。このまま人質も解放してくれたら最高なんですが」
広間にいた護衛の男と妹が気楽に会話している。口調は穏やかだが、どちらも既に臨戦態勢だ。いつ戦いが始まってもおかしくない。
服装は傷だらけのTシャツにジーパンだが、顔や体には傷がない。喧嘩に明け暮れていて戦い慣れしている雰囲気だ。また苦戦しそうだな、こりゃ……。
「それは無理だ。『人質に近づく奴は全員倒す』というのが契約なんでな。法も倫理も守れなかったが、自分の意志で受けた契約だけは破らない……まさかこんなに手を出そうとする奴らがいるとは思わなかったが……」
「いや、誰も思いませんよそんなこと!?ボスも驚いていましたけど」
「へぇ、そこまで調べてんのか。さっき気配を感じたが、優秀な仲間がいるんだな、羨ましいぜ」
「最近仲間になったばかりですけど」
……話しながらもお互い気を緩めていない。会話はまだ続くようだ。




