53.捜査開始
「……そろそろ定時連絡の時間か」
見張りの男にトリックが近づいてから数十秒後、男がつぶやいた。懐からアイテムを取り出して操作している。あれは――。
「兄さん、もしかしてあのアイテムは」
「ああ、連絡用のアイテムだな。ほら、お前もファーレインやアスミから受け取っただろう?あれと同じタイプだ」
「やっぱり。誰に連絡しているのでしょう?」
「会話の内容を聞けばわかるかも。このまま待機だ」
相手に繋がったようだ。男が報告している。
「はい、それらしい者も出入りしていませんし、大きな動きもなく通常通りです…………了解、このまま見張りを続行します……いえ、連絡を忘れるなどありえません。その場合は緊急事態ということで……はい、失礼します」
――会話が終了した。今の内容から推察すると……。
「見張りは倒さない方が良さそうですね」
「そうだな。定時連絡が途切れるとまずそうだ。後、普通に屋敷に近づくのも避けたいな」
こういう時は……あっ、妹なら問題ないか。
「お前の隠密技なら誰にも見られずに潜入できるんじゃないか?ってもういない……」
いつの間にか姿が消えている。行動が速いな……よし、見張りは気づいていない。
俺はここで待っているか。
――十分後
『人質救出クエストを開始します』
「お、無事にクエストを受けられたか。しかし人質とは……」
難しい依頼だ。少し行動を間違えたら即終了もあるだろう。慎重に行動しなければ……。
「兄さん、戻りました」
「おかえり。依頼は町長から?」
「はい、彼の娘さんが誘拐されたそうです。誰かに話したりすると――」
「人質が危険になる、と。お決まりのパターンだな」
正面から普通に行ったら危なかったかも。トリックに偵察させて良かった。
「時間制限があるかもしれないから、慎重かつ素早く動くぞ」
「そんな言い方しなくても、人質が心配だから速く助けようと言えばいいじゃないですか」
「い、いや、俺はそんな熱血野郎ではないぞ!?」
―――自分でも気づかなかった思考を指摘されて動揺してしまった。こいつ時々こういうことあるよな。
絶対に認めたりはしないけど!




