46.うどんと疑問
ツルツルツルッ。
「――そんな理由であの時立ち上がれたの?納得行かないわ……しかしこの歯ごたえ、おいしいわね」
ツルツルツルッ
「一度アレを体験してもらえば私の気持ちを理解していただけると思いますが、そんな残酷なことはできません……う~ん、この出汁がまたおいしい。昔食べた味とそっくりです」
ズズズズッ!
「残酷って……もしかしたらお前が人より敏感なだけかもしれないじゃないかぁぁぁ!?お、俺のゆでたまごがぁぁぁ!お前って奴は~!!」
「セクハラ発言に対する処置です、全く……あ、これは燻製卵でしたか。おいしいですね。私も頼めば良かった」
「本当に仲がいいわね、あなた達」
だからどこがだ!?仕方ない、安いからもう一度頼もう。えーと、燻製卵二つ、と。
一つ与えてやればこちらが奪われることはないだろう。何、餌付けのつもりですか、だと?お前がこんなことでおとなしくなるなんて思っとらんわ!
結局あの後、消えずにいた天狗面―――名前はアスミさんというらしい―――と一緒に食事をしている。ファーレインの時と一緒だな。色々興味深い話も聞けたのでいいのだが……。
試練はいいのか?と質問したら体は複数存在するので問題ないという。確かに、同時に複数のプレイヤーが試練を受けていたら一人じゃ対応できないからな。
麺系が好き、とのことなので屋台のうどん屋にきた。蕎麦屋と迷ったよ。
「ふう、ごちそうさまでした。悪いわね、奢ってもらって」
「構わないよ。この前の焼肉や寿司に比べれば安いもんだし」
「では私はおかわりを。ネギ多めで大盛り!」
「お前は少し遠慮してほしかったよ……」
激戦だったからまた空腹感がすごいらしい。これ何杯目だっけ?腹壊すことはないけど、つい心配してしまう。
「食事の御礼になるかわからないけど、はいこれ」
「ん?これは……隠しクエストの発生地点か。どんな内容かまでは書いてないけど……俺が貰っていいのか?」
「構わないわ、それはただの地図だから。妹さんならきっと受ける内容だと思うわ」
そうなのか?いったいどんなクエストなのだろう……。と考えていたらアスミさんがこちらをじっと見ていた。
『ひとつ聞いてもいい?』
「!」
これは、個別通信か。妹には聞かれたくない内容なのか?
ではこちらも個別で――。
『何だ?』
『あなたはいつ自分自身のプレイを再開するの?』
『!』
思いがけない質問だ。プレイヤーからならともかくNPCからされるとは……。
『とりあえず、レベルが追いつくまでは妹のプレイを見ているよ。それにあいつ一人の方が色々と愉快なことが起きそうだし』
『……そう、残念ね。彼女がいい意味のトラブルメーカーなのは同意するけど』
『残念?そこまで奇抜なプレイをした覚えはないが……』
そこまで注目されるようなことは―――まさか―――。
『私のようなAIは何人かいるわよ。あなたがその力をどう使うのか、非常に興味をもっているから……おまけで教えると、現時点で使えるのはあなただけよ、これ内緒にしてね』
人差し指を口の前に持ってきてウインクした。そんな表情もできるのか、こんな状況でなければドキドキしていたかもな。
そして妹は……新たに注文した釜揚げうどんに夢中だった。なんかほっこりしてしまったぞ。




