40.水辺の駆け引き
まさか飯綱落としとは……!
空中で背後から敵の胴体を拘束、そのまま逆さに落下する有名な忍者の技だ!大ダメージは確実だぞ!うわ、しかも回転して―――。
「ぐぅぅぅぅ!」
「!?」
―――回転しない!?妹が必死に抵抗して技の邪魔をしたようだ。いいぞ!
ドボォォォォン!!
「あっ、滝つぼに落ちた!これなら少しは威力が軽減されるかも……」
どちらが先に出てくる?この状況ならやはり……。
ザパァン!
「ふぅ、まさか回転を止めて落下場所までずらされるとは……すごいわね」
水浸しの女天狗面が水中から飛び出してきた。濡れた忍び装束が艶めかしい。普通なら眼福な光景だが、今はそれどころではない。
妹がでてこない……やられてはいないようだが……。
「臨・兵・闘・者――――」
うわっ!?これは九字!やっぱり使えるのか!魔法の詠唱みたいなものだ、強力な術が発動されてしまうぞ!
妹が飛び出してくる気配はない。上がってこないのか、来られないのか…………?
「――前!【一面氷上】!ハァァァァ!!」
水が凍っていく、うわ、滝まで!?水の中までは凍っていないはずだが、低温による環境ダメージは免れないだろう。速く出てこい!
「さて、どこから出てくるか……」
待ち構えている!?このまま倒すのではなく耐えられなくなって出てきた所を狙う作戦か!だ、駄目だ、出て来るな!
ドガァァァン!
来た!?
「……」
(き、気弾か……天狗面は気づいていたみたいだけど)
一瞬妹かと思ったら気弾だった。しかし敵は全く反応しなかったな、気配を感知しているのか?
ドガァァァン!ドガァァァン!
ドガァァァン、バリィィィン、ガッシャァァァン!!
ほとんど続けて三回、いずれも気弾だった。
最後に放たれたのは凍った滝を破壊した。飛び散る氷の破片と音がすごい!
(しかし、全く動揺していないな。ずっと注意を水中に向けている)
集中力が乱された様子はない。妹もそれを理解しているから出てこないのだろう。
しかし、いくら闘気の力でも水中にいつまでも潜っていられるとは思えない。このままでは……。
「――臨・兵」
(またか!――いや、違う?……まさか誘い!?)
再び忍術を使うつもりかと思ったが、これはただ声を出しているだけだ!先程とは雰囲気が全く違うからすぐにわかった。
声だけ出して警戒はそのままだ。もしこれを隙と見て飛び出してしまったら―――。
「ハァ!!」
「グゥ!?な、何故!?」
ボォン!ガァァン!ドポンッ……。
「え!?お前どこから!?」
な、何だ!?妹が突然天狗面のすぐ後ろに現れたぞ!
どうやら渾身の一撃を叩き込んだようだ。相手は壁に激突、そのまま水に落ちた。
完全な不意打ち判定、バックアタックだ!あれほど気配察知が得意そうな相手によくやる……。
「ハァ、ハァ、ハァ……な、なんとか闘気全開で耐え抜きました。さ、寒い~」
「よく耐えたなぁ……しかしいつのまに?」
顔色も悪いし震えてもいるが、まだ戦えるようだ。しかし、いつ水中から出てきていたんだ?全くわからなかったぞ。




