32.暗殺者との戦い
「【強化版インビジブル】!」
「消えた!―――今度は気配が読めない!?」
男の姿が見えなくなる、また隠密系のスキルを使ったな。妹の様子からするとさっきより強力なスキルを使ったようだ。
おそらく有効時間は短い。だから―――。
「【必殺・心臓潰し】!!」
すぐに仕掛けてくる!まずい、特定の部位に当てれば必殺になる一撃だ!避けろ!!
「キャアァァァ!?」
「何、止められただと!?運が高くなければ防ぐのは難しいのに!?運の数値イテテテテ!う、腕がぁぁぁ!?折られる、いや潰される!体力がすげぇ減ってるんだけど!?」
ギリギリで妹が相手の攻撃を掴んだ。なんて反応速度だ……しかし騒ぎ過ぎではないか?即死攻撃で死にそうだったことを理解しているというのか?
「い、いきなり胸を鷲掴みしようなんて!?現実ではできないことをするとはそういうことですか!許せません!こんな腕、兄さんのようにしてあげます!!ハアァァ!」
ああ、そういうことをされると勘違いしたわけか、って最後の俺のようにするってどういう意味!?
「な、何だって!?そんなわけあるか!技の名前聞いただろう!?確かに視線が外せなかったし下心も少しは……いやかなりあったけど!心臓だよ心臓!俺のスキルの中でプレイヤーに有効で一番必殺の確率が高いんだよこれ!だから警告もないだろうが!ああ!?右腕の感覚がなくなった!」
男が必死に弁明している、そこまで正直に言わなくても……何かを企むような余裕もないようだ。
右腕は破壊判定になったな、これでしばらくは使えないはず。回復することもできるかもしれないが、妹はその隙を逃さないだろう。
「これで利き腕は封じました。このまま倒させていただきます!」
「くっ、完全にやられたか……ハッ!?アンタの兄貴、亡くなったわけじゃないよな?」
「まさか。私に逆らえなくなっている、ということですよ。あ、暴力ではなく私の魅力によってですけど」
「…………そ、そうか……とんでもないのに関わっちまったな……」
嘘だから!!そんな戯言、信じないで!!
お前いい加減にしろよ!?話で相手のペースを崩そうとしているのはわかるけど、内容が酷過ぎるだろう!!何だか男の方を応援したくなってきたぞ……。
「片手では不利か―――だが、勝利を確信するのはまだ早いぞ」
「!―――ハッタリではなさそうですね」
再び両者対峙する。どちらが仕掛ける?――――――男が動いた!これは!?正面から突っ込んできた!?しかも遅い、これじゃ反撃を……まさか!?
不味い、攻撃するな!
「遅い!これでトドメ!!」
「甘い!これで終わりだ!!【カウンター・バックスタブ】!!」
「!しまった、これは!」
わざと反撃される速度で正面から近づき、相手が攻撃を放つ寸前に返し技を発動する。タイミングを間違えれば大変なことになるが、今回は完璧だった。見事!
男の姿が消える。妹の攻撃は空振りに終わり、背後に現れたと同時に振るわれた男のナイフが首に当たる!これは…………。
「……やはり必殺は無理か、運の数値相当高いみたいだしな……クリティカルと急所判定で行けるかと思ったんだが」
「これは推測ですが、利き腕を使えなかったからでは?わずかに違和感を感じましたよ。とはいえ、正直相打ちを狙っていましたけど」
「なるほど……確かに普段は右手で攻撃しているからな、在り得るかもしれん……だからといって防御ではなく攻撃を選択するのはどうなんだ?蹴りなのに切られているし」
相手の攻撃を受けながら妹は攻撃していた……好戦的なあいつらしいけど。
しかし首などの急所に攻撃入れられたら怯みそうなものなんだが……勇ましい奴……。
「ハァ、負けちまったか……だが楽しかったぜ。また会おう、胸戦士!」
「狂戦士……気のせいでしょうか?なんだか発音がおかしかったような……」
……発音の感じからして狂ではなく胸か……消える寸前に挑発とは、愉快な暗殺者だったな。
それと妹よ、名誉棄損で話があるんだが?―――あ、逃げやがった!




