31.初めての対人戦
「!そこ!」
ヒュンッ!!
「!?」
「どうした急に!?え?人!?」
妹がいきなり近くの屋根の上を気弾で撃った。何もないのに当たった反応が出たぞ!隠密系のスキルか!
屋根の上から何かが落ちてきた……人、いやプレイヤーか?服装は盗賊みたいな軽装で顔は装備のせいで見えにくい。バランスを崩しながらもうまく着地している。体格からして男か。
「俺の隠密が見抜かれるのは久しぶりだ……やはり初心者じゃないな」
「あなたは……プレイヤーですか?いえ、ここにいるということは―――」
妹が戦闘態勢になると、盗賊風の男が慌てる。
「待った待った!あんただって依頼で来ているんだろう?同じだよ」
「あ、そうでしたか!疑ってすみませんでした」
妹が頭を下げる。男は「やめてくれ」と言いながら―――。
「【スローナイフ】!何!?避けグハァ!?」
「……倒せませんでしたか」
―――男が放った投げナイフを妹が躱しつつ反撃したが、浅かったようだ。あ、後ろに下がると同時に回復薬を使っているぞ。どちらも動きが速いな。
「ハアハア……隙だと思ったら、誘いかよ!いい性格してんな、あんた」
「兄と接していたら自然とこんなふうになってしまいました、私は悪くありません」
「……うわぁ、とんでもない兄貴だな、そいつ」
(冤罪だ!妹が俺の影響を受けるなんてありえない!)
盗賊風の男が引いているぞ!俺の第一印象が大変なことに!初対面の相手になんで俺を貶めるようなことを!?
叫んで否定したいがそんな空気じゃない。どちらも相手の隙を窺っている一触即発の状態だ。
「プレイヤーキラーが目的なら引いた方がいいですよ。そうすれば見逃しましょう」
「いや、依頼で来ているのは本当だ。だからあんたと戦わなきゃならない」
先程の発言は作り話ではないのか。大事な部分は話さずに相手が勝手に誤解するのを狙うタイプか。まあ、はっきり否定しなかった時点で妹は疑っていたようだが。
しかし、こいつの受けた依頼は……。
「……まさか、誘拐団のボスに雇われている?」
「そういうことだ。普段は品行方正に過ごしている分、現実ではできないようなことをする。それが仮想世界の醍醐味だろう?」
「それも一つの楽しみ方ではありますね、私も現実ではできないことをしていますし……悪逆非道なプレイスタイルではありませんけど」
「まあ、そうだろうな―――名乗る必要はないだろう?」
「ええ―――最初から仕留めるつもりでしたので!」
同時に動き出す。妹にとっては初めての対人戦だ!勝てよ!




