30.初めての無法地帯
ファーレインから依頼を受けた俺達は、早速目的の場所に移動することにした。
彼女は別の店に行くそうだ、まだ食べるらしい……。
『ここからは無法地帯になります。一部過激な行動や行為が―――』
「お、出てきたな」
警告メッセージが出てきた。これに同意しないとここから先には入れない。年齢制限もあるがそちらはクリアしている。同意します、と。
「ここがスラムですか、兄さん」
「ああ、無法地帯でプレイヤーキラーも可能だから気をつけろ。たぶんいないと思うけど」
ここは最初の町だから、ほとんどのプレイヤーは最新の町や大陸にいる。初心者狩りしようにも初心者は近づかないしな、誰も来ないのに待っていても退屈だろう。
「しかし、予知能力者の依頼とは珍しい。実はあいつが能力者じゃないんだろうな」
「それはないでしょう。もし未来予知なんてされたら絶対に勝てませんでしたよ」
「確かに……」
予知の依頼とは、予知能力者からの依頼で大きな災いや非道な出来事を未然に防ぐことが目的になる。おそらくはエルフでもかなり偉い人物だろう。色々と制約もあるようで、なかなか受ける機会はないんだが……ファーレイン、恐るべし……。
依頼内容は【誘拐団の壊滅】―――非道の阻止か。
「今回は捕縛して情報を入手することが目的なんですよね……加減できるか心配です」
「倒さずに瀕死の状態にしなければならないからなぁ……うまくできるといいんだが」
最低一人だけでも確保すればなんとかなる。全員まとめて消滅させなれば大丈夫だ。
「ここがアジトのようです。さて、どうしましょうか」
特徴のない建物の前で妹が止まった、言われなければ全くわからんな。
正面から乗り込んでも勝てるとは思うが……。
「周囲に人はいないようですので―――火事だ!火事ですよ~!出てきてください~!」
「おい!?そんな古典的な方法で出てくるわけが」
ドタドタドタ!
あれ、複数の足音と気配が……。
「火事だと!?」
「どこだ!?速く火を消せ!」
「この拠点に何かあったらボスに殺されるぞ!」
血相変えたチンピラみたいな男達が数人出てきた。火事が怖いというより、ボスの怒りが怖いようだな。
しかし本当に出て来るとは……これで全員か?
「どこも燃えていないぞ?」
「どういうことだ?おい、そこの――」
「先手必勝!」
ヒュンッ!ドゴオォ!!
「…………え?」
悪漢共が呆けている。すぐに対応してこられたら面倒だったが、これなら問題なさそうだ。
しかし壁にめり込んでいるぞ。これ、生きているのか?あ、動いている。
「あなた達がエルフの誘拐を計画していることはわかっています!リーダーはどこですか?」
「な、何故そのことを!?おまえは――」
「問答無用!」
「ぐはぁ!?」
消えてはいないので、一応手加減しているようだ。男達は何もできずに一撃で倒されている。
しかし、お前が質問したのに問答無用はあんまりじゃないか?
気絶した男達の一人を目覚めさせて、質問したらあっさりと居所を喋った。
「クエストの進行を確認、次の場所が表示されました。あれ、気絶していた人達みんな消えてしまいましたよ!?」
「NPCではなくてその場限りのモンスター設定だからな、頭の上に出ていたぞ。行動や受け答えがすごいレベルだけど」
「そ、そうなんですか。いくら悪人とはいえNPCを消してしまうのにはどうも抵抗が……」
「俺もだよ」
最近の技術力には本当に驚かされる。AIの進歩は凄まじいな。
「闘気のコントロールも問題ありませんでした。最初の一人は危なかったですけど」
「壁にめり込んでいたからなぁ……あれで敵の戦意喪失してたから結果的には良かったけど」
闘気の扱いがどんどん巧くなっているな。次は何ができるようになるのやら。
「すぐに口を割ってくれて助かりました。話さない時は兄さんのようにするしかありませんでしたね」
「俺のようにするってどういう意味!?玩具にするということか!?」
「フフフ……」
「意味深に笑うのはやめてくれ!」
ま、まさか、俺の扱いはNPCよりも低いのか!?




