24.頂上の景色
「ここが頂上ですね。さあ、ボスはどこですか!?」
「気持ちはわかるけど、ここ安全地帯だぞ。他のプレイヤーも――いや、違った。観光者の人だ。珍しいな」
あれからはトラブルもなく、まっすぐ頂上まで進むことができた。モンスターも逃げ出していたし、障害物もなかったので破壊行為もなし。素材をいくつか回収して依頼もクリア、まさに順調そのものだった。
景色も素晴らしい、作り物とは思えないな。今は晴れ、季節設定は……木の色からして初夏かな?緑が美しい。安全地帯でもないとなかなか景色を楽しむ余裕はないからな。
「観光者とは、ゲームプレイが目的ではなく自然の景色や町の観光などを楽しむ人達のことですね。レベルやステータスは用意されず、モンスターやプレイヤーと戦いにはならない設定で、戦闘の観戦も可能だとか」
「そう、初めに設定したら途中からプレイヤーに変えられない。プレイヤーから観光者になるのも同様。普通はプレイヤーとは別の仮想平行世界にいるから出会うことはないんだけど、ここみたく一部の場所ではこうして一緒になったりする」
数はまだ多くないらしいが、仮想世界の再現精度は日進月歩の勢いだ。今後も増えていくだろう。
「あ、頭の上にマークが出てますよ。確か【不干渉希望】でなるべく話しかけないでください、という意味でしたね」
「そうそう。しっかり勉強してきているんだなぁ、兄さんは嬉しいよ」
「最低限のマナーですよ、兄さんもそうだったでしょう?」
「ん?ああ…………」
むむ、いつもだったらおかしな返答が来る場面なんだが……あ!人がいるからか。
人前では素を見せないからな。俺も気をつけるか。
「それにしても、本当に素晴らしい景色ですね。少し休憩して見ていきたいです」
「じゃあ、そこのベンチに座るか。無人販売でなんか買ってくるよ」
「……仮想世界で無人販売って、なんだか違和感を感じますね……」
「言われてみれば……NPCがいてもよさそうだけど」
何か意味があるのだろうか?今は普通に買い物させてもらおう。
妹はおにぎりでいいな、俺は……これにするか。
「ほら、これでいいだろう?」
「梅干し、ツナマヨ、辛子明太子。何も言わなくても私の食べたい物を用意してくれる兄さんに賛辞と感謝を!そして使い魔の称号を与えましょう!」
「誰が使い魔だ!?お前の欲しい素材なんてわからねえよ!」
あれ、人前なのにいいのか?―――っていつの間にか他の人いなくなっているし!こいつよく周り見てんなぁ……。
「兄さんはカップヌードルですか。そんな物まで売っているんですね」
「最近は買える品物が増えてきているからな。権利関係とか法整備が進んでいるみたいだし」
「仮想の図書館で本を借りて、仮想の美術館を見学して、仮想の戦争を体験する。現実より長い時間を利用して映画や小説を見る。学校の教育に塾の勉強、スポーツの練習、職業訓練に各種実験などなど……私なんて闘気プレイしてますし……もぐもぐ……酸っぱい~!この酸味が最高ですね!」
「お前のプレイスタイルはともかく……色々できるようになってきたな。問題も出てきているけど……ズズ~…熱っ!?しまった、温度調整間違えた!」
いくら便利になっても使い方を間違えたら台無しだ、気をつけないとな。
ボスはこの先だ。また簡単な説明だけしておくか。




