23.逃がした魚は
――――勝ったのは妹だった。その手には何故か魚が……
「まさか、それ……お前が釣って食べられた魚か!?」
「そのようですね……まさか生きていたとは……鵜のように丸のみされていた、ということでしょうか?」
「鵜じゃなくてグリフォンなんですけど……アイテムを盗まれてもすぐに倒せば戻ってくる場合があるけど、今回はスキル使われたわけではないし……運が高いおかげなのか?」
モンスターをおびき寄せるのにアイテムを使うが、食われたら戻ってはこないしなぁ……。
「相変わらず検証するのが好きですね、兄さんは……ほら、それよりも私の勇姿を写真で保存しておいてください」
「勇姿ってお前……捕った獲物を掲げて叫んでいる芸人さんにしか見えないんだけど」
「まさに勇姿じゃないですか!」
そ、そうなのか?……妹の感性は時々よくわからんな。
装備の制服はまたボロボロになっている、しばらくはこのままか。
攻撃を受けると一部の衣装は見た目が変わる。ある程度時間が過ぎるか修復してもらえば元に戻る。設定でそのままにすることもできるが……もちろん過度な露出はないように調整されています。
外見だけはおしとやかなのに、破れかかった服を着て魚を誇らしく掲げている姿は野生児そのものだ。
ギャップが凄すぎて不思議な魅力すら感じる。ここは笑う場面ではないのか?
「おい、本当にこんな姿記録に残していいのか?後で文句言うなよ?」
「言いませんよ。他の人達に見せたら別ですけど」
「もし見せたら?」
「え、兄さんに説明必要ですか?では―――」
「すみませんでした!!」
あ、危なかった……何て愚かな質問をしてしまったんだ俺は!?
「全く……そういえば取り戻した魚ですけど、子持ちはぐれ鮭という名称でした」
「何!?凄いレアな魚だぞ!はぐれのうえに子持ちとは!」
売ってもいいが、ここは調理してもらって食べてみたい。いや、もしかしてあそこに持っていけば養殖可能か?
逃がした魚は大きいというが、本当に大物だった!取り返せて良かったな。
「後は、スキルを覚えたみたいです。今回は取得した理由も表示されていますね」
「ああ、一部のスキルは取得した時に条件も表示されるんだ。基準はよくわからないけど」
「理由は………また使い所が限られてくるスキルですね」
「どれどれ…………」
【強奪系スキルなんぞ使ってんじゃねえ!】
・ソロで相手が強奪系スキルを使用した場合(成否関係なし)敵が数秒間時間停止、攻撃力大幅上昇。なお時間停止中は防御力、耐性共に無効化。
【取得条件】
・珍品、貴重品、幻の存在に該当するものを敵に奪われた後、短時間かつ無事に取り戻す。
もしくは奪った相手に暴走系スキルを使用して攻撃を一定以上与える。
「……今回の場合、アイテムで敵をおびき寄せたということにならないのでしょうか?」
「たぶん魚につられて現れたんじゃないからだろうな。たまたま目の前に飛んで来たから食べただけだろう」
「食べる、ということも奪われたことになるのですね」
そのようだ、定義は広く設定されているのかな?
「しかし、ああいう形で飲み込まれたのはラッキーだったな。でないとまず盗まれないような品物だからな」
「確か、レアな物ほど盗まれにくくなるんでしたっけ?今回釣った子持ちはぐれ鮭はそんなにレアなんですか?」
「その通り。表示はされないけど持ち物にはランクが設定されていて、それが高い程盗まれにくくなるんだ。条件に該当するランクの物は本来簡単には盗まれないから幸運だったよ」
塞翁が馬ということか。何が幸いになるかはわからないものだな。
「それから、はぐれ鮭は珍品クラスかな。それに子持ちだから確実に条件は満たしているはず」
「もうひとつの条件は……怒り系スキルなんてありませんからね。頭に血は登ってましたけど」
「攻撃も吸収されていたしな」
下手に回避せずに攻撃したのも正解だったか。数秒でも過ぎれば短時間の条件はクリアできなかったかもしれない。
「じゃあ、そろそろ行くか。後はアクシデントなく頂上に着きたいな」
「そうですね。まずは正規のルートに戻るんですか?」
「いや、このまま頂上を目指そう。地形は戦いにくいけど問題ないだろう?」
「ええ、私が道を作りますから!」
「……大丈夫かなぁ……」
破壊されても元に戻るはずだけど……再生不可なんてならないだろうな……。




