21.釣りの思い出
目的の場所まで来た妹は周りのモンスターを瞬殺、すぐに釣りを始めた。
――――10分後
「フィ――シュ!やりましたよ~!」
「凄いテンションだな……今度から太公望と呼んでやろう」
「残念ながら私にはそう呼ばれる資格はありません。それは人生を釣りに捧げている人にこそふさわしい称号です」
「……釣りが好きなら十分では?」
な、何なんだそのこだわりは……釣りバカならわかるけど。
「あっという間に依頼達成……ここは釣り堀ですか?」
「釣れないよりはいいだろう。結構楽しんでいるじゃないか」
「まあ、現実ではもう10年以上やっていませんからね、久しぶりなのでつい……」
ニジマス4匹にヤマメとイワナが2匹ずつ。依頼はニジマス2匹とヤマメ2匹なのでクリアだ。
妹のニコニコ――いやこれはニヤニヤと言うべきだな――顔が珍しい。
「難易度低い場所だし道具も高品質ならこんなもんだよ、もう行くか?」
「……いえ、もう少し。主がいるかもしれません」
「そんな大物はいないと思うぞ…まあ、時間はあるから粘ってみるか」
しかし、釣りか……現実で最後に行ったのはいつだったか……。
そういえば昔――――
「……こうしていると、昔家族で釣りに行った時のことを思い出しますね」
「……俺も思い出した。お前がカラスに釣りの餌盗られた時だろう?」
「違いますよ!?兄さんが釣った魚をカラスに食われた時の話ですよ!」
「グワァァ!?忘れていたトラウマが~!?何てこと思い出させるんだお前は!」
「こっちのセリフですよ!ああ、あの時のカラスの聞いたことがない馬鹿にした鳴き声!!はっきり思い出しちゃったじゃないですか!」
「やめてくれ!しばらく夢にまで見るほど悔しかったんだぞ!!」
「う~、今夜絶対に夢に出そう!」
2人揃って悶絶する。何をやっているんだ俺達は……。
「お前の時は海だったな……怒りでカラスを追いかけようとするお前を止めるのが大変だった……」
「兄さんの時は山でしたね……口から魂が抜けていく人なんて初めて見ました……」
「……」
「……」
「止めよう……なんか不毛だ」
「同感です……」
2人揃って項垂れる。本当に何をやっているんだ……。
――――20分後
「あれから釣れなくなりましたね……もういないのでしょうか?」
「………いや、最後に大物が来たみたいだぞ!」
「あっ!?こ、この引き具合は!?凄い力です!」
「頑張れ、逃がすなよ~!これは何が釣れるんだ!?」
引きの強さに期待が高まる!本当に主でもいるのか!?
「くっ、手強い……こうなったら!秘技、一本釣り投げ!」
「力任せに引っ張っただけでは!?」
大きな魚が空中に舞い上がる!力入れ過ぎだろ、飛び過ぎて……!?
バクン!
「えっ!?」
「はぁ!?」
バッサバッサバッサ!
いつの間にか上空に居た巨大な鳥モンスターが丸のみした!何ということだ!!
「ああっ、私の獲物が!?よくも!!」
「仮想世界でもこんな悲劇が起こるなんて……」
妹は怒り心頭だ!トラウマを刺激される光景だが、冷静にならなくては。
あれはグリフォン、しかもブラックタイプか。こんな所で遭遇するとは……。
「まあ落ち着け。気持ちはよくわかるが闇雲に戦っても勝てんぞ」
「………ふぅ、そうですね。明らかにここのモンスターの平均レベルを大きく超えていそうなんですけど……」
「飛行系アクティブモンスターだな。他にはワイバーンやコカトリスなど、平原で出現する場合が多いんだが、こういう山エリアでも稀にある。アイテムを使っておびき寄せるということもできるんだが、今回はどうなんだろう……運の数値が高いから出てきたのか?」
「こ、これが幸運!?不運の間違いですよ……ううっ」
逃がした魚は大きいとはこのことか……
「……こうなったら、過去の怒りもまとめてぶつけてやりますよ!そして私の獲物を強奪したこと、後悔させてやりましょう!」
「そ、そうか……闇魔法を回避しつつ、遠距離攻撃で削ってやれ。攻撃は効きにくいだろうから長期戦になるぞ」
「了解です!うおおおおお!!」
す、すごい気迫だ……半分八つ当たりだけど……。




