2.気をつかう発言
「いったい、何があったんだ?」
妹は不正などしない、というかできる技術もないので運営AIの誤解である事は間違いないはずだが、決していい気分ではない。
昔、店に入って目当ての物がなかったので帰ろうとしたら、店員になぜか万引きを疑われて呼び止められた時の事を思い出してしまった。すぐに間違いであると証明されたから良かったが。
「実は、って兄さん、アバター名がケイって安直すぎませんか?」
「そういうおまえはマイになっているんだが」
名前のセンスは似たもの兄妹である。
「とりあえず、どこかに座りませんか。少し長くなりますし」
「そうだな」
近くのベンチが空いていたのでそこに腰を下ろす。
「初ログインした時は、動作確認をしますよね?」
「ああ、ガイド役のNPCが色々と指示を出してきて、その通りに動いて不快感や不具合がないかをチェックするやつだろう?」
特に問題もなく終了したのをおぼえている。
「そこで、とんでもない事をやらかしてしまいまして…」
「ま、まさか、いやらしいポーズでもとったのか!?」
「とりませんよ!っていうかそれのどこがチートになるんですか!?」
身内贔屓ではないが、この容姿とスタイルでそんな事をしたらそう思われても不思議ではないような。
「今まで誰にも、兄さんにも秘密にしていたのですが…」
「いや、流石になんでも話してくれているとは思っていないが…」
そもそも、高校は寮生活、大学は一人暮らしだったのでたまに実家に帰って会話するくらいの関係だしな。異性の兄妹なんてそんなものではないだろうか。
「実は私、気が使えるんです」
気をつかえるんだ、という冗談は飲み込んだ。