16.3人で食事
「うう、まさか全ての攻撃が無効化されていたとは……最後の切り札で自滅するなんて……食べなきゃやってられませんよ!カルビください!」
「そこは飲まなきゃじゃないのか?…まあ今回が例外だらけで普段はあんたに勝てる奴なんてそうそういないから気にするな。しかしエルフが焼肉って………はい、焼けたぞ」
「まさかこのスキルに助けられるとは思いませんでしたね……最後の流星雨は絶対に闘気だけでは防げませんでしたし……なんにせよ勝ちは勝ち!太らないし思いっきり食べますよ~!兄さん、ロースお願いします!」
「いつもの調子を取り戻せて良かったよ、動けませんとか言い出した時は慌てたぞ……カツ丼の次は焼肉とは……こんなに肉食だったっけ?………ほら、できたぞ」
ジュー!ジュー!ジュワァァァ!!
戦闘終了後、大量の経験値と金、素材やアイテムや装備やらが手に入ったようだが、妹は確認する気力もない程疲弊していた。
「もう歩けません、兄さんおんぶ~」などと幼児退行まで始まった時は本当に焦った。町で登録していれば転移で戻る事ができたのだが、妹はまだしていないので戻れない。これはログアウトするしか、と考えていたら何故か消えずにいたファーレインが「町まで送りますよ、サービスです」なんて言うから任せたら転移で戻ってこれた。
町に戻って周囲に気配を感じた途端、妹は復活した。他人の前では絶対に猫かぶるからなぁ……親しい人だけの時は違うみたいだけど……。
ファーレインとそのまま別れるのもどうかと思いダメ元で食事に誘ったら了承されて、2人して「焼肉!焼肉!」などと強い要望も頂いたのでこうして一緒に食事をしている……片方は残念会、もう片方は祝勝会か……。
これ料金は俺が出すんだよなきっと……この店高いぞ……。
「うーん、どの肉もそれぞれ特徴があって美味しいですね!野菜しか食べられないエルフでなくて良かったです!次はタンで!」
「そっちが一般的なエルフだと思うんだが………よし、完成」
「戦利品を確認しましたけど……貴重品かそうでないのか、売った方がいいのか残した方がいいのかよくわかりませんね。後で兄さんも見て確認してくれますか?私はハラミを!」
「ああ、お前装備不要のとんでもプレイヤーだからなぁ……基本的に売る必要はないぞ、所持金は十分だし………ほれ、味わって食ってくれ」
俺は二人に返事しながら何故かひたすら肉を焼いている……焼く演出スキップできる店にすれば良かった………仮想の煙なのに目が沁みる………。
一通り食べ終えて2人共満足してくれたようだ……あれ、俺食べたっけ?……
「ごちそうさまでした!素晴らしい肉をありがとうございます!」
「それなら良かったが……ファーレインさんにとって食事ってどういう行為なんだ?」
「さんはなくていいですよ、そうですね……生きる為に食べるとか体に良いから食べるとかじゃなくて、食べたいから食べるという行為ですかね。いい音楽を聞いたり面白い動画を見たりと似たような感じかなと」
「なるほど……娯楽という事ですね」
ふーむ、知らなかった。NPCと飲食店に来た事なかったからなぁ……。
「今更だけど、何で消えずに存在し続けているんだ?挑戦者の特徴というわけじゃあないんだろう?」
「もちろんです。理由は私がマイ様に好意を……おまけでケイ様も……持ったからですね」
「こ、好意ですか!?そのような感情がある事は知っていますし否定はしませんが…………あれ、今兄さんもって……大変です、バグが発生していますよ!」
「なんで俺に好意持つ事が異常になるんだよ、失礼な!それにお前の考えているような意味じゃない!親密度、もしくは信頼度の事だよ。こんな短時間で得られた事は驚きだけど……」
NPCに長く接したり贈り物をしたり依頼をクリアしたりすると、見る事はできないが信頼度が上昇する。上昇すると戦闘に参加してくれたりいいものを貰えたり人を紹介してもらえたり、とにかく色々と良い事がある。
これがなかなか難しい。ある程度仲良くなる事はできるのだが、その先が……俺の対人スキルは低いからなぁ……。
「一緒にケイ様を追い詰めた時間はとても楽しいものでした……あれが大きな要因でしたね……」
「あんな事で信頼したと!?どういう性格してんだこいつ!?」
「もう、冗談じゃないですか………こういう反応が原因だってわからないんでしょうか………」
冗談言いすぎだろこのエルフ、後半は何言ってるか聞こえなかったし………何だか対人、じゃなくて対NPC恐怖症になりそうだ……。
「やはりあの戦いが大きいですね。負けてしまった事は悔しいですが、素晴らしいファイトでした。味方も敵も欺く演技、力の全てを使い切る覚悟、形振り構わぬ勝利への執念……お見事です」
「あ、ありがとうございます……そんなに評価してもらえるなんて……ただ無我夢中だっただけですよ」
「確かに凄かったな、まさかさば折りを仕掛けるとは……」
「「!?」」
ピタッと二人の動きが止まった。顔が赤くなっているから自覚はしているようだが、注意はしておかなければ。
「他に有効な手がなかったからしょうがないけど、あまり使うなよ?最後は二人揃ってとても直視できない姿と聞いてはいけない声を晒して―――」
「「天誅!!」」
「ぐはぁ!?」
両者からの同時攻撃!?ここは店の中で攻撃不可だぞ!?
「攻撃ではありません、不埒な輩を成敗しただけです!」
「その通り!速く記憶から消去して下さいね、変兄さん」
「誰が変兄さんだ!考えたのも実行したのもお前じゃないか!?猪の時みたく声が聞こえたわけでもないんだろう!?」
「あっ、じ、実は兄さんの心の声に従っただけで……」
「人のせいにするな!?聞こえたとしてお前が俺の声に従うわけがないだろう!」
俺は目を瞑り耳を塞いでいた。見ざる聞かざるを実践していたのに!
「そ、それはそうですけど……打撃も防御されるし足技は当てられそうにないし気弾は効かないしでどうしようもなくて……そしたらふと熊のボスが仕掛けてきた技なら可能性があるんじゃないかと……け、決して締め付けているうちにその立派な部分に腹が立ってきて怒りの力が加わった、なんて事はありませんからね!」
妹は動揺しているようだ……言わなくてもいい事まで口にしてしまったぞ……
ほら、被害者が驚愕の表情を浮かべている。
「ま、まさか……最後執拗に顔を擦り付けてきたのは嫉妬だったと!?危うく何かに目覚めそうに…じゃなくて!マイ様、密着していたから解りますよ!……あなたは嫉妬される方であって嫉妬する権利なんてありません!」
「そんな!?永遠の美しさを約束された存在に言われたくはありません!」
「君ら怒っているの、褒めているの?」
周りに人がいなくて良かった……いや、いないからこんなテンションなのか?
その後、ファーレインは連絡用アイテムなる物を渡して消えていった。親密になるともらえるアイテムという事は知っていたが、実物を見るのは初めてだ。余程仲良くなったという事か。
試しに使ったら本当に会話ができた。これで呼び出せるらしいが、戦闘はまだ一部を除いて参加できないらしい。但し町中で遊ぶのは自由との事で妹は大変喜んでいた。うむ、俺も嬉しい。一緒に戦える時が楽しみだ!
「そろそろ俺達も解散するか?疲れただろう?」
「そうですね、心地いい疲れではありますが…………兄さん、今日は誘ってくれてありがとうございました、感謝します」
「ん、何だいきなり?礼を言われるような事はしてないぞ……謝罪して欲しい事は結構あるけど……」
「もう、茶化さないでください、照れ臭いのが苦手なのは知っていますけど」
「わ、悪かったよ……親しき仲にも礼儀あり、か……」
謝罪して欲しいのも嘘じゃないけど……。
「色々ありましたが、全部ひっくるめてとても楽しかったです!これからも続けたくなるぐらい!!」
ああ、その返事と笑顔で十分だ……これ以上の報酬など存在しない……絶対口には出さないけどな!
「そうか、良かったな」
「もう、兄さんは……照れると言葉が少なくなるんですから」
「そこで知らぬ振りをできるのがいい女だと思うぞ……お前には無理か……」
「私はいい妹ですので!」
「どこがだよ!?」
可愛いのは認めるけど!
その後、次のログイン時間の確認をしてから解散した。初回から凄い展開だった!次のプレイでは一体何をしてくれるのか、これからも目が離せないな!!




