14.止まない雨
「お待たせしました。修正が完了したようです」
練習開始から五分と経っていない、思ったよりも速かったな。
「そうですか……とても有意義な鍛錬ができました、ありがとうございます!」
「いえ、お詫びですので……まさかノーダメージで終了するとは……」
あれからしばらく戦ったが、どうやらお互いに全くダメージは入らなかったようだ……闘気の増加によるステータス補正が凄すぎる……。
(しかし、武器を装備されたら流石に……)
そしてこちらの攻撃も結局通用しなかった……引き分け、なんてないよな……。
「では早速始めましょう……何もできないかもしれませんが、手は抜かないで下さいね」
「!」
「マイ様…………ご安心を。全力を持って―――」
空気が変わった!しかしあいつも気づいて………!
「自らに課した誓約を守り通した英雄に挑ませてもらいます!!」
「場所は…やっぱり森、いやこれは樹海か!?」
戦闘エリアが強制的に切り替わる!エルフだから森だとは思っていたが、この地形と雰囲気は樹海と呼ぶのが相応しいだろう。
しかし自らに課した誓約?………もしかして縛りプレイの事か!?なんて大げさな表現なんだ!?装備なしアイテムなしなんて縛りプレイでしかやらないだろうけど!
「ハアァァッ!!」
「正面から突っ込んだ!?」
妹がいきなり仕掛けた!速い!
「フッ!」
「惜しい!後ろに飛ばれ……えええ!?」
ファーレインが後ろに飛んだと思ったら木の中に入った!?いや障害物を通り抜けるスキルか!厄介だな、これじゃ追いかけても捕まれられない……!
「エンドレスマジックレイン」
ザアアアァァァ!!
「雨が……魔法攻撃か!?」
「!」
姿は見えないが声が聞こえたと思ったら強い雨が降り出した!
明らかに敵の魔法攻撃!効果は……ダメージに能力低下、継続して受けると耐性破壊、遠距離攻撃妨害!?酷い……闘気でどれだけ耐えられる……!?妹は防御の姿勢のまま動かない……守りを固めているようだ。
「矢の雨・続」
ゴオオオオォォォ!!
「魔法攻撃中に別の技を………これは物理攻撃?しかしこの数と範囲は……!」
「!?」
空に向かって矢が放たれたと思ったら雨のように増えて降ってきた!しかも効果範囲が広い!木や地面はすり抜けているが当然妹には直撃している!
これは……敵を倒すほどダメージ増加、毒含む状態異常多数、遠距離攻撃妨害……これも酷いな!
物理と魔法の同時攻撃!どちらも厄介だ!全体攻撃だから高い攻撃力ではないだろうが……回避もできそうにないから耐え抜くしかなさそうだ……速く終わってくれ……!
数分経過……
「おい嘘だろ……いつまで発動しているんだこれ!?」
終わる気配どころか勢いが弱まる兆候もない!?これ程の全体攻撃で!?あれから魔法や技を発動した形跡はないし……。
発動者を攻撃するか倒すかしないと止められない?……せめて前者で頼むよ……。
「まだ………もっと………」
妹はあれから全く動いていない。何か呟いているようだが……魔法の雨に濡れて途切れる事のない矢を浴び続けている………まさか動けない?気迫は感じるから諦めているわけではないようだが……。
だが動いても速さはほぼ互角。木が障害物になるこちらと違って向こうは自由に透過できる。追いついて接近戦に持ち込むのは厳しいだろう……
遠距離攻撃は練習の時に使った気弾があるが、効いていなかった。あの時よりも強力な物を放ったとしてもこの雨と矢でまともに届くとは思えない………打つ手なしか?
相手のファーレインは一定の距離を保ちつつこちらの様子を観察している。木を通り抜けたり枝に乗ったり……あのスキルは任意の発動か……気弾が直撃してもダメージはおそらくないだろうに……慎重な奴め……。
しかし守りに徹しているからなのか、妹にダメージはほとんどないようにも見える……それほどの攻撃じゃない?いやそんな筈は………。
「雷神剣解放、これで!」
ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!
「さらに攻撃を!?雷の魔剣か!」
ファーレインが剣を抜いて掲げると複数の雷が降り注いだ。今度は雷の雨か!止まない雨とはよくいったものだ。
これは……麻痺効果のみだがその分威力が高いんだろうなぁ……。
しかし、何で今まで使わなかったんだ?最初の技は速攻で使ったのに……剣を抜いたまま動いていない様子から察するにおそらく動けないのか……。
攻撃は妹の周りに集中している!ほとんど直撃しているぞ!これはもう動かないと……!
しかしこちらの焦りをよそに、それでも動かない……何かを狙っている?それとも……
「これでも動かないとは……動かないのではなく動けないだけ?……」
何かしらの動きを見せると読んでいたのだろう、その予測が外れたファーレインの思考に僅かな疑問と焦燥が生まれた…その瞬間!
「いっけぇぇぇ―――!!」
「な!?」
「気弾!でもこの大きさは!?」
何の動きも見せなかった妹が遂に動いた!気合の声と共に気弾を放つ!さっきよりも一回り大きい!今までは力を溜めていたのか!?……しかしこれは………
「ダメだ、威力が削がれている!届かない!!」
予想通り矢と雨に阻まれて勢いが弱くなった。そのまま気弾はファーレインに当たる事無く落ちていく……その光景はまるで最後の力が尽きて敗北する者を示しているようで……思わず視線を逸らしてしまう。
ファーレインも同じ心境の様で、何ともいえない表情で落ちて行く気弾を見つめていた…………。
だから気が付かなかった―――
ドゴオォォォ!!
「グッ!?」
妹が凄まじい速度で跳躍していた事に!!
ボキッ!バキバキッ!ドオオオオオン!!
「た、体当たり!?」
妹はファーレインに激突して、そのまま揃って飛んで行く!途中の枝を折って砕いて、それでも止まらず地面に派手な音を立てて落ちた!
ファーレインもノーダメージではないだろうが、これは妹も無事ではないのでは………慌てて二人の落ちた場所に移動する。
しかし、近づいて見た光景に心配を忘れて思わず怒鳴ってしまった………。
「な、何やってんだお前は!?」




