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川下り

台風接近川下り

作者: 山本大介

 川下りのお話。


 秋を少しずつ感じはじめる今日この頃。

 訪れた3連休は、柳川も多くのイベントが予定されていた。

 川下りも光の舟と呼ばれるイベントに参加、夜のお堀割を舟が進み、途中、プロジェクションマッピングが夜の世界を光で彩るというなんともシャレオツなもの。

 前日、金曜から開催された企画だったが、稀にみる台風14号の直撃コースを受けて、早々に中止が決まった。

 おまけにうちの舟会社も翌日の運休が決まった。


 午前中、花嫁舟の準備をしていたら、今日、夜舟担当私の師匠から中止の報を聞いた。

「やっぱりですか」

「ああ、風もやけど、雨も降るやろ」

「はあ」

 今もぽつぽつと雨が降っている。

 花嫁舟に敷いた赤絨毯が、空から落ちる雨を受け止める。

「(花嫁舟)できるといいですね」

「まあ、多少、濡れるのは仕方ない・・・大丈夫やろ」

「そうですね」

 私は、暑い雲間の中、少しだけ明かりがさすほうを見た。

 ほどなくして、雨は小雨に、神社で式を終えて新郎新婦が、こちらの桟橋に来られる頃には、雨はなんとかあがっており、花嫁舟は無事出発となる。

 やはり台風前とあり、少しだけ風が強い。

 折からぽつりぽつりと小雨が降りだし、レインコートの着用を呼びかける。

 小さな雨は、披露宴会場がある御花邸に近づく頃にはあがっていた。


 今日は台風対策も同時に行うので、ほとんどの係留している舟を乗船場(出発地点)にあげることになっていて、私と師匠と同僚の3人で、ここから前日の舟も繋ぎ、計7隻にて、中継地点まで舟あげをする。

 道中の係留地点で、もう3隻を繋ぎ計10隻で中継地点へ。

 

 迎えに来た青ハイエースに乗り込み、乗船場へ。

 軽く、食事をとった後、ハイエースのドライバーに、他の船頭を迎えに行き、次の番手を待つ。

 昼過ぎ、私の番手である。

 お客様に、台風前であること、舟が風で流され橋の壁や水路にあたることが考えられるので、木枠(舟べり)に手を置かないよう、いつもより念入りにお伝えする。

 少しずつ風も強くなっていたが、台風の大雨に備えて、水門を開けたのだろう、水位がかなり落ちており、これにより低い分、安定して操船はしやすかった。


 再び乗船場に戻ると、営業は終了しており、台風仕様じまいへと作業はうつる。

 吹き飛びそうな備品を部屋に入れ、まわりを片付ける。

 舟に乗っている木の椅子を陸にあげ、ロープで固定する。

 舟を移動しロープでしっかり固定する。

 動かないように杭を舟横の川底に突き刺し、万全を尽くす。

 船頭各々が対策作業に没頭し、普段より一時間遅い仕事あがりとなった。


 翌、18日は運休休業で自宅待機となる。

 朝はそこまで風もなく、嵐の前の静けさといったところか。

 家でしていなかった残りの台風対策を奥さんと一緒にしたり、買い出しに行く。

 その後は、自宅でごろごろ。

 文を書いたり、昼寝したり、動画を観たりして過ごす。

 昼過ぎくらいから、少しずつ雨も降りだし、風も強まる。

 台風接近は明日の未明。

 かなりの強い雨風と被害をもたらしている14号に、テレビやスマホの情報も観ながら、台風一過を待つ不安な夜となった。

 

 19日は強い風が、外に吹いており、時折、窓越しにゴーっと風があたる音がする。

 雨はそこまで降って無く、一安心といったところ。

 だけど、台風は通過したが、まだまだ暴風圏内、吹き返しの風に注意が必要だ。

 朝食を済ませると、会社からメールが入る。

 今日の営業も中止、自宅待機で、翌20日は川下りする為の水位が確保できていない(大雨が予想されたため、大量の掘割の水を海へと流しており、運航できる状態ではない)為、復旧作業を後に営業を行うという内容だった。

 つくづく自然状況に影響される仕事だなと認識させられる。

 日中は10mくらいの強い風が常に吹いており、かなり涼しく感じた。


 20日、いつもより早目に出勤後する。 

 乗船場の舟は、しっかり係留されてあり、思ったより被害は少ないようで一安心だった。

 雨により、舟の中には雨水が結構溜まっており、水中ポンプやバケツ(アカくり)を使って、舟内の水をかきだす。

 椅子は乗船場の方へ陸揚げしているので、舟板を敷き、椅子を運ぶ。

 舟を所定の位置まで戻し、木の杭を抜き、運航できる状態にする。

 川下りのルートに風倒木など危険な箇所がないか確認をする。

 

 10時10分いつもより30分遅く営業が開始された。

 台風一過、風はまだ強い。

 お客様はどうだろう?と思っていたが、始発から来られた。

 先陣の私は、お客様に、「本日は台風一過で、まだ風が残っています。お舟が風に流されて水路や橋の壁にあたることがございますので、木の枠には触らないようにお願いします」

と、普段より念を押して伝えた。

 どんこ舟(川下り舟)は、風の影響を受けやすく、かつ軽いと流されやすい。

 ましては、一番手なので、ルートを確認したとはいえ、慎重になる。

 道中、やっぱり風倒木はあったが、運航上の妨げにはならなかった。

 北風と突風が激しく、壁にあたることがあったが、極力減速して、ゆっくりと当てる、必ずお声がけすることを徹底し、無事目的地へ着いた。

 昼過ぎに私は2度目の川下り、一日中そこそこの風が続いた。

 

 仕事あがりには、久しぶりに全身がこわっていた。

 無事に営業が再開できたことに感謝しつつ。

 台風シーズンは、まだ続く、気を抜かずにですな。



 台風が通過するまで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無事に再開してほっ…ですねm(_ _)m 台風、怖いですよね~… 年々、台風の威力がパワーアップしてるので、台風が発生する度ビビり散らかしてます(;´Д`)汗
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