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異世界TS社会主義革命戦記  作者: 赤緒衛
第01章・建国編
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0008 パンと銃と水車小屋・2 利用強制権

 ずっと重たい銃を持ち続けて腕が疲れたので、農民の親娘が住む家に預けた。

 そして彼らに着いて行った先の川岸には、農村には不釣合いな程に堅牢な区画があった。もしこの区画に費やした労力を村全体に分配して農民が武装すれば、今日程度の騎士の略奪は無かったはずの規模だ。

 そしてその中には農家よりやや豪勢な家屋と水車小屋があった。水車小屋は川の水の流れで自動的に石臼が動いて麦を製粉する構造だ。製作やメンテナンスには大金が必要になるから、支配階級や金持ちのみが所有することができる。

 そこには農民とは似つかない程に肥え太って上等な服を来た男とその一族が住んでいる。顔つきも誰とも似ていないので、農民とは血縁関係は無いだろう。彼に向かって農民親娘はうやうやしく麦袋を捧げた。


 「水車小屋主様、今週分の麦を製粉して下さい」


 「よかろう」


 水車小屋の所有者が無造作に袋を掴むと、水車小屋の中に入っていった。水車小屋主が見えなくなった時に農民が、食料が足りなくなる理由を話した。


 「農村では個人が石臼で製粉する事を禁止されています。領主様に納めずに手元に残す事を許された麦は、全てこの水車小屋で製粉することが義務付けられています。そして水車小屋主様には製粉代金として麦をいくらか払うことも義務付けられていますが、払う量はその時々の水車小屋主様に決められます。例え豊作の年でも、秋の収穫直前は飢えるのです」


 その言葉でこの制度の仕組みを理解した。

 社会主義思想をつくったカール・マルクス曰く"労働者の賃金は生活費で決まる。労働者の生活は全て支配者次第で調整される"

 この水車小屋主が領主から与えられた役割は、農民が余分な財産を持つこと防ぐことだ。毎日が生きるか死ぬはギリギリの生活では、反乱を起こす力すら無くなる。


 「領主様は収穫物のたった三割しか持って行かない慈悲深い方ですが、憎っくき水車小屋主は残りほとんどと奪うのです」


 農民は悲痛の思いで水車小屋主を元凶と言うが、それは違う。

 これは間接統治というものだ。領主が直接的に農民の悪感情を受けずに支配する。もし水車小屋主が農民に殺されても、新しく別の者に任命すればいい。


 この支配構造は簡単には崩れない。

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