0005 交流開始
隣国の騎士達を討ち取った者について農民達は推測を語り合っている。彼等にとっては味方であるかすら分からない。
「もしかして領主様が遣わした騎士様か」
「剣でも弓でもない武器を使っているから領主様臣下の魔術師かもしれない」
「領主様に魔術師の臣下がいらっしゃるとは聞いた事がない」
「あの杖のようなものにも服にも領主様の紋章が描かれていない」
魔術師という単語が聞こえる。おそらくここは
何度も出てくる単語"領主様"。この農民達は支配されることに慣れ過ぎている。全ての思考が領主を前提になっている。それは人として間違っている。
それは正さなくてはならない。しかし、いきなり「異世界から来ました」は思考が凝り固まっている農民を余計に混乱させかねないので、そこはぼかして少しずつ交流しよう。
「俺は遠いところから旅をしているところです。道に迷ってここにたどり着きました。この村で泊めてくれませんか」
農民達はホッとしたような表情をした。もし先ほど見せた圧倒的な力の持ち主がいつもの隣国とは違うとこからの軍勢であれば、単に略奪者が変わるだけだからだ。
「旅の方でしたか。先ほどは助けて頂きありがとうございます。大したものはありませんが、どうぞゆっくりしていってくだされ」
ひとまずはこの農民たちからこの世界のことを聞こう。