0026 構想と実行
山の中でドワーフ達と情報共有していて、ドワーフが鍛冶村から追放された理由の話題になった。
「何故ワシらは追放されたんじゃろか。他のところで雇われたくても断られてしまった。領主は理由を言わなかった。聞きに行こうとしたら討伐軍を向けられ仲間を多く殺された。残ったのはここに居る者だけじゃ。
確かにワシらは人間数人分の飯を食らい酒を飲むが、それ以上の成果を出していたのに」
「私も分かりません。皆様は誰もが優れた鍛冶師であり、誰に農具の修理や製造を頼んでも優れた物が出来上がってました」
ドワーフ達も農民達も有能"なのに"追放されたと考えている。
「有能"だから"追放された」
俺の言葉に全員が俺の方を見た。俺は続けて説明する。
「支配階級は労働者階級をとにかく安くこき使いたい。そういう時は一人で何でも出来る熟練技術者を雇い続けるには高い報酬が必要になる。報酬を安くしようものなら他勢力に引き抜かれる。
だから、少ししか出来なくて他所では今以上の報酬を得られない大勢の素人を使うことにする」
誰もが農具も武器も防具も一人で鋳造出来るドワーフ達が、俺の説明の途中で質問をした。
「そんなので鋳造は可能なのか」
「出来上がった物の品質は保たれるのか」
それに答えるよう説明を続ける。
「鋳造には鋳造工程全体を知っている支配階級が監督する。こいつが全工程を細分化して、分けられたそれぞれの部分を素人達に教える。一人あたり覚える必要があるのは少しだけなので、教育はすぐに終わる。
この形態の場合は労働者は何年働いても新たな知識技術は習得できない。労働者の代わりは簡単に用意できるので、もし労働者が待遇改善を要求しても即座に追放できる。労働者は他所でやっていける知識や技術を習得していないので、過酷な労働環境でも生きるために辞めることは出来ない。
今の鍛冶村で働かせられている労働者階級は一人では何も鋳造することは出来ない。これは一例だが、板金鎧を鋳造するにしても、支配階級の監督下に複数人が働かせられて部品一つが鋳造される。支配階級にとっては労働者階級は工房の設備の一つでしかない。」
これは俺が元居た世界で工場制手工業と呼ばれている製造業の形態だ。"何を作るか"という構想を考える事は支配階級に独占され、労働者は何も考えずに命令された事を実行するしかない。
「ドワーフ達が働いていた頃にやけに鍛冶技術を知りたがっていた奴は居ないか」
そいつがドワーフ追放の構想と実行を行ったやつだ。打倒すれば鍛冶村を領主の支配から解放できる。
「領主の弟が知りたがってた」
「初めからワシらを使い捨てる計画だったとは許せん。ワシらも革命に加わるぞ」
ドワーフが答える。
「領主の弟は今も鍛冶村を直接統治しています」
農民は先程の情報収集で得たと答える。
必要な情報はそろった。ドワーフも革命に賛同した。
農村に戻って鍛冶村解放作戦をドワーフとも一緒に立てよう。




